コロナ禍においてビジネス環境や働き方などの変化が加速するなか、持続可能な組織のカギを握るのが、リーダーたちの存在だ。いま、グローバル企業、そして日本企業のリーダーたちは、どのような状況にあるのか。本講演では、世界50ヵ国以上、2,000人以上の人事担当者と15,000人以上のリーダーに調査をした『グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2021』の結果からみえた5つのメガトレンドについて、株式会社マネジメントサービスセンター 執行役員 加藤 寧利氏が解説を行う。
講師
加藤 寧利 氏
株式会社マネジメントサービスセンター 執行役員
筑波大学第一学群人文学類卒業後、国内独立系コンサルティングファーム、大手求人広告会社勤務を経て、2008年より株式会社マネジメントサービス ンターのコンサルタントとして活動。2021年に執行役員に就任。専門領域は、ハイポテンシャル人材の選抜や育成、ミドルマネジャーのリーダーシップ開発。製薬、医療機器、電機、金融等の幅広い業界において、コンピテンシーモデルの設計、リーダーシップ開発に向けたアセスメントセンターやトレーニング、行動変容のためのコーチングを提供する。
リーダーシップ調査から明らかになった、グローバルと日本の課題の違い
『グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト(以下GLF)』は、1999年にスタートし、今回9回目となるグローバル最大規模のリーダーシップ調査です。この調査は弊社のパートナー企業である米国の人材開発コンサルティング会社のDDI社が実施しており、日本においては弊社が主体となって進めています。今回は、2020年2月から7月にかけて調査を行い、世界15,000人強のリーダー、そして2,000人以上の人事担当者、1,700以上の組織にご協力をいただきました。そして、日本からは1,000人以上のリーダー、約90人の人事担当者の方にご回答をいただいております。では、調査で得られた主な結果をみていきましょう。まず、「世界各国のCEOの最重要課題」です。最上位に「次世代リーダーの獲得と定着」(55%)、そして3位に「優秀な人材の獲得と離職防止」(52%)がランクインしました。変化のなかで、マーケットへの対応以上に、人材に関する課題を強く認識しているCEOが多いことが伺えます。
次に、「CHROが今後10年間で最も変化すると考えること」を尋ねた結果、グローバルでは「従業員が新たなスキルを開発する必要性」(84%)、「職場のダイバーシティ」(72%)が上位となりました。一方、日本では「アウトソーシングの割合」(88%)、「パートタイムの人数」(87%)が非常に高い回答の割合となったのです。グローバルでは、スキルの開発やダイバーシティを通じて、イノベーションを進める“攻め”の考えであるのに対して、日本は業務の効率性が第一であり、“攻め”の姿勢は不足しているとみられます。
続いて、「リーダーの質に関する認識の格差」についてみていきましょう。これは、自社リーダーの質に対する評価を、「リーダー自身」と「人事担当者」に聞いたものです。これをグローバル全体でみると、2011年から2020年の10年間で、「リーダー自身」のリーダーシップへの評価は、38%から48%と大きく上昇しました。
一方、「人事担当者」の認識としては、2011年は25%、2020年は28%と、ほぼ横ばいでした。このギャップに対する解釈は難しいのですが、ひとつはコロナ禍において、リーダーは急速な変化に対応してきたという自負があり、それが数字に表れていると考えられます。一方で人事は、リーダーは頑張っているが楽観視できない状況だと感じているからこそ、こうした結果につながったのだと思います。
これも日本の結果を見てみると、「リーダー自身」、「人事担当者」ともに非常に低く、2020年の結果ではリーダー自身は6%、人事担当者は3%でした。これは、謙虚であるという特性が出ているのかもしれませんが、自分たちの能力を客観的に捉えられていないと考えられます。リーダーが自信を持てなければ、新たなことへのチャレンジも進みません。私は、これが日本のリーダーシップ開発の大きな課題だと思っています。
そして「人材の供給体制」ですが、これは世界的に低下していることが見て取れます。2011年は「供給体制がある」と回答した人事担当者は、グローバルで18%、日本は9%でした。それに対して2020年はグローバルで11%、日本では0%と深刻な状況です。こちらも、今後の大きな課題となるでしょう。
- 1