高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの希望者全員の雇用を確保することが義務化、あわせて70歳までの就業確保も努力義務の対象となりました。そして、多くの企業で、シニア社員の戦力化に対する取り組みが進められています。今後のシニア社員の雇用のあり方とは。どのように活用すべきなのか。千葉経済大学経済学部 准教授 藤波 美帆氏によるプレゼンテーションと、学習院大学名誉教授/学習院さくらアカデミー長 今野 浩一郎氏とのトークセッションから、そのヒントを探ります。
講師
藤波 美帆 氏
千葉経済大学経済学部准教授
千葉経済大学経済学部准教授。(独)労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー。 その後(独)高齢・障害者雇用支援機構(現、高齢・障害・求職者雇用支援機構)調査研究員を経て、2014年より千葉経済大学。専門は人的資源管理論。 主な著書・論文に『中小企業における人材育成・能力開発』(共著 労働政策研究・研修機構 2012年)、「高齢社員の戦力化と賃金制度の進化 ―仕事基準の基本給が選択される条件とは」(共著)『日本労働研究雑誌』No.715, 2020年がある。
今野 浩一郎 氏
学習院大学 名誉教授/学習院さくらアカデミー長
1971年3月東京工業大学理工学部工学科卒業、73年東京工業大学大学院理工学研究科(経営工学専攻)修士課程修了。 73年神奈川大学工学部工業経営学科助手、80年東京学芸大学教育学部講師、82年同助教授。 92年学習院大学経済学部経営学科教授。2017年学習院大学 名誉教授、学習院さくらアカデミー長。 主な著書に、『正社員消滅時代の人事改革』(日本経済新聞出版社)、『高齢社員の人事管理』(中央経済社)など多数。
シニア社員を戦力化する人事戦略 ――70歳定年時代に向けて
千葉経済大学経済学部准教授 藤波 美帆氏
シニア社員の人事管理の「これまで」と「これから」
本日はシニア雇用について10年ほど研究してきた成果を基に、シニア社員の人事管理の現状と今後についてお話しさせていただきます。65歳を超えて働き続けることが当たり前の時代に変わりつつあります。60代後半層の就業率は49.6%。全体のおよそ5割を占めるまでになりました。10年前と比べると13.9ポイントの増加を示しており、これには2020年の高年齢者雇用安定法の改正も大きく関係しています。そして、今後さらに増えていくであろう65歳から70歳までの雇用・就業については、60代前半層におけるこれまでの活用法の知見から学ぶべきことが多いと考えています。
最初に、シニア社員の人事管理の現状を確認しておきましょう。現在、日本の企業の多くが「一国二制度型」の人事管理を行っています。「60歳で定年」という制度を用いながら、65歳までの雇用確保を続け、さらに65歳以上の就業についても対応する。これらの企業は「60歳までは正社員」、「60歳からは非正規社員」といった区分をすることで、両者に異なる人事制度を適用しているわけです。そしてこれは「シニア社員と現役正社員では活用戦略が異なる」と考えている企業が多いことを示しています。
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