ビジネス環境の急速な変化やコロナ禍など、VUCAの時代において企業が生き残りを図るには、過去の戦略を大胆に見直し変革を実現することが必要です。では、企業変革の推進には、何が必要なのでしょうか。HR総研で今年6月に実施した調査を紐解くと、企業変革の成果には、企業理念や人事戦略が深く関わっていることが分かりました。本講演では、HR総研 主席研究員 松岡 仁、HR総研 主任研究員 久木田 亮子より、調査結果を踏まえた考察をお届けします。
講師
松岡 仁
ProFuture株式会社 取締役 / HR総研 主席研究員
1985年大学卒業。文化放送ブレーンで大手から中小まで幅広い企業の採用コンサルティングを行う。 ソフトバンクヒューマンキャピタル、文化放送キャリアパートナーズで転職・就職サイトの企画・運営に 携った後、2009年より現職。各種調査の企画・分析を担当し、「東洋経済オンライン」「WEB労政時報」に 連載中。
久木田 亮子
ProFuture株式会社 HRサポート部 / HR総研 主任研究員
2009年建設系企業に入社。研究開発および設計職に従事。2015年以降、シンクタンクにて地方創生に関する幅広い分野で調査研究を行う。2019年にHR総研(ProFuture株式会社)主任研究員に着任。人事関連分野に関する幅広い調査・分析を行う。企業動向だけでなく、新卒採用においては就活学生を対象とした調査の設計から分析までも担当する。
「事業変革」と「カルチャー変革」は、両輪で進めるべき
松岡 HR総研では、2021年6月、企業の人事責任者・担当者に向けて「企業変革と人事戦略」に関するアンケート調査を行いました。今回は、その調査結果にもとづき、企業変革の実現に向けた人事戦略の在り方についてお話しします。久木田 今回、【企業変革の推進状況】、【企業理念による働きかけ】、【人事戦略の連動による効果】という3つの柱でお話をします。
またこのアンケートでは、企業の変革を「事業変革」と「カルチャー変革」に分けて調査を行いました。「事業変革」とは、直接的にビジネスに関わる企業変革です。「カルチャー変革」とは、組織体制、企業風土・文化などに関わる企業変革と位置づけました。
まずは、【企業変革の推進状況】についてみていきましょう(図1)。事業変革については、「推進している」企業は49%と、ほぼ半数でした。カルチャー変革については、「推進している」は36%で、事業変革より推進している企業は少ないことが分かります。
(図1)
図1
「企業変革を推進し始めてからの期間」については、事業変革・カルチャー変革ともに「3年未満」が7割を占めています。さらに細かく見ると、「2年未満」が半数前後です。おそらく、コロナ禍により企業変革を推進し始めた企業が多く含まれていると考えられます。
「企業変革の成果の状況」は、事業変革は「成果が出ている」が29%、カルチャー変革では25%で、どちらも3割近くの企業で成果が出ているということです。
そして、「企業変革とカルチャー変革のレベルの関係性」(図2)を見てみると、カルチャー変革の成果が出るほど、事業変革の成果レベルも高くなることが分かりました。両変革の推進には相乗効果が期待できるといえます。そのため、どちらか一方のみを推進するよりは、両輪で変革を実行した方が、より高いレベルの成果が得られると期待できるでしょう。
(図2)
「企業変革の成果の状況」は、事業変革は「成果が出ている」が29%、カルチャー変革では25%で、どちらも3割近くの企業で成果が出ているということです。
そして、「企業変革とカルチャー変革のレベルの関係性」(図2)を見てみると、カルチャー変革の成果が出るほど、事業変革の成果レベルも高くなることが分かりました。両変革の推進には相乗効果が期待できるといえます。そのため、どちらか一方のみを推進するよりは、両輪で変革を実行した方が、より高いレベルの成果が得られると期待できるでしょう。
(図2)
図2
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