講師
石﨑 由希子 氏
国立大学法人横浜国立大学大学院国際社会科学研究院 准教授
専門は労働法。東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻(法科大学院)修了。同大学院法学政治学研究科助教、司法修習を経るなどして、現職。神奈川地方最低賃金審議会委員、神奈川県労働委員会公益委員などを務める。「疾病による労務提供不能と労働契約関係の帰趨‐休職・復職過程における法的規律の比較法的考察(1)乃至(5・完) 」で沖永賞、日本労働法学会奨励賞、商事法務研究会賞を受賞。共著書として「現場からみる障害者の雇用・就労:法と実務をつなぐ」(弘文堂)がある。
諏訪 康雄 氏
法政大学 名誉教授/認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク理事長
1970年に一橋大学法学部卒業後、ボローニャ大学(イタリア政府給費生)、東京大学大学院博士課程(単位取得退学)、ニュー・サウス・ウェールズ大学客員研究員(豪州)、ボローニャ大学客員教授、トレント大学客員教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、厚生労働省・労働政策審議会会長等を経て、2013年から2017年まで中央労働委員会会長。現在、法政大学名誉教授、認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク理事長。主な著書に『雇用政策とキャリア権』(弘文堂・単著)、『雇用と法』(放送大学教育振興会・単著)、『労使コミュニケーションと法』(日本労働研究機構・単著)、『労使紛争の処理』(日本労使関係研究協会・単著)、『外資系企業の人事管理』(日本労働研究機構・共著)、『キャリア・チェンジ!』(生産性出版・編著)など。
「病気休職制度」の重要性とその設計・運用の留意点
国立大学法人横浜国立大学大学院国際社会科学研究院 准教授 石﨑 由希子 氏
治療と仕事の両立は政策課題かつ経営課題
まずは、病気の治療と仕事の両立が課題となっている背景から説明します。第一の要素は、労働者の高齢化です。これに伴い、病気を抱えながら働く人が増えています。第二の要素として、医療技術の進歩によってがんなどの病気が「不治の病」でなく「長く付き合う病」に変容してきたこともあげられます。さらに現在、新型コロナウイルスの感染が広がるなか、誰もがいつ病気になるか分からないことが、広く社会に認識されるようになっています。そうした意味でも、治療と仕事の両立について考えざるを得ない状況になっています。2017年に安倍政権が示した「働き方改革実行計画」の中では、治療と仕事の両立が一つの重要な政策として取り上げられています。労働人口の1/3が治療しながら仕事をしていること、また病気のため離職せざるを得ない人が一定程度いるという現状認識をもとに、企業のトップ自らがこの問題を経営課題として位置づけ、積極的に推進していくことの重要性が指摘されています。
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