さて、前回の続きです。面接において、特に志望動機で「なぜ自分がこの会社で働きたいと思ったのか?」、「なぜこの仕事をやりたいのか?」という、自分の主体的な意思を伝えることが求められています。しかし、これがなかなか言えない学生が増えているということを、前回述べさせていただきました。
彼らの就職活動における悩みは深刻で、なかなかうまくいきません。しかし個別に話をしていると、非常に素直で真面目で、どこにでもいる標準的な学生という印象を受けることが多く、いわゆる「いい奴」タイプのことが多いです。あくまでも個人的な印象ですが、どうも「草食系」のタイプに似ているように感じています。
『草食系』とはコラムニスト深澤真紀氏の定義によると『恋愛に「縁がない」わけではないのに「積極的」でない、「肉」欲に淡々としたタイプ』とのこと。私は学生の就職相談しか受けていないので恋愛については確認できませんが「おそらくそんな感じなのだろうな~」と思わせるタイプが多いと感じています。草食系は今の大学生(20歳前半)よりも10歳くらい上から見受けられるのですが、この辺りはあまり就職に苦労したという話は聞きません。これは、以前は採用側がそれほど志望動機を重視していなかったからではないかな?と思います。志望動機を重視し始めているな、と感じられるのは、この1-2年です。それで急激に草食系が就職に苦労するようになってきている、という印象を持っています。また、この草食系タイプが今の大学生に増えてきていることが、今の状況に拍車をかけているのではと感じています。
ではなぜこのタイプが増えているのか?これは二つ理由があり、少子化高齢化の影響と、子離れしない親が増えたことが要因なのではと考えています。
一つ目の少子高齢化の影響について言えば、現代は少子化で一人っ子が増えています。さらに今は両親だけでなく高齢化で祖父母も元気ですので、子供に親やら祖父母やらがよってたかって子供の世話をやくという状況になっているようです。そうすると子供が自分から「あれがほしい」、「これがやりたい」といわなくても周囲の大人がすべておぜん立てしてくれる、あとは大人たちの気持ちを逆なでしないよう素直に話を聴いていれば円滑に人間関係が進んでいく、ということを自然に学んでいます。変な話ですが、母方の祖父母からもらったものが、父方の祖父母からもらったものより、気にいったそぶりを見せたりすると、それで両親の親戚間の雰囲気が悪くなったりすることもあるでしょう。だから、むしろ自分の気持ちを出さないことを自己制御することが、賢い生き方だと体得して育ってきている可能性があるわけです。
二つ目の、子離れしない親が増えていることですが、要は子供が自分の言う通りにしないと気が済まない親が増えているということです。親の子離れとは、いつまでも子供が自分の分身のように素直に言うことを聴く存在ではない、ということに気づき、そのように子供に働きかけることをあきらめる状態のことです。しかし、前述したように、今の子供は大人の気持ちを読むことにたけているので、昔のように反発したり抵抗したりして、無理に親離れや子離れするケースが少なくなっているみたいに感じます。親の言っていることに「違うな」と感じていても反発したりせずに素直に従うことが賢い生き方と受け止めてしまっているので抗おうとしません。これは結果的に、親の子離れを遅らせる要因になって、就職という子供の自律的意思が求められる進路決定にも親が口出しし、結果的には自律的主体的動機付けのないままに進路を決め、就活をしている学生が増えているとことになります。実際に学生と面談していても「親がこうしろ」というからその方向で就活しているという学生は少なくありません。そしてそれでうまくいっている学生は残念ながら多くないように感じています。
自己主張することに慣れていないどころか、自己主張しないことがうまい生き方だと思い込んでいる学生にいきなり「君のやりたいことは何?」と問いかけても応えられるはずがありません。面接でそのような質問を受けて、「あれ??なんかおかしいかも??」と気づき始めているところに子離れできない親が介入し、せっかくの子供のきづきを否定するようなやり取りが、私たちの知らないところで繰り返されているのではないか?そんな印象を、ふと持ってしまうことが多い今日この頃です。まずはこの呪縛をとかないと前に進まないのですが、そこまではなかなか・・・。という状況に、今の大学の就職支援部門は直面しているというのが私の印象です。一つだけいえることは学生の呪縛をとくのは就職活動を始めてからでは遅いように感じますので、大学に入学してからすぐにキャリア教育として実施しなくてはいけないということです。ということで金沢大学ではこれまでの取り組み内容も踏まえ、いろいろ体系的なカリキュラム構築の検討を開始している状況です。
(2011.11.28掲載)
『草食系』とはコラムニスト深澤真紀氏の定義によると『恋愛に「縁がない」わけではないのに「積極的」でない、「肉」欲に淡々としたタイプ』とのこと。私は学生の就職相談しか受けていないので恋愛については確認できませんが「おそらくそんな感じなのだろうな~」と思わせるタイプが多いと感じています。草食系は今の大学生(20歳前半)よりも10歳くらい上から見受けられるのですが、この辺りはあまり就職に苦労したという話は聞きません。これは、以前は採用側がそれほど志望動機を重視していなかったからではないかな?と思います。志望動機を重視し始めているな、と感じられるのは、この1-2年です。それで急激に草食系が就職に苦労するようになってきている、という印象を持っています。また、この草食系タイプが今の大学生に増えてきていることが、今の状況に拍車をかけているのではと感じています。
ではなぜこのタイプが増えているのか?これは二つ理由があり、少子化高齢化の影響と、子離れしない親が増えたことが要因なのではと考えています。
一つ目の少子高齢化の影響について言えば、現代は少子化で一人っ子が増えています。さらに今は両親だけでなく高齢化で祖父母も元気ですので、子供に親やら祖父母やらがよってたかって子供の世話をやくという状況になっているようです。そうすると子供が自分から「あれがほしい」、「これがやりたい」といわなくても周囲の大人がすべておぜん立てしてくれる、あとは大人たちの気持ちを逆なでしないよう素直に話を聴いていれば円滑に人間関係が進んでいく、ということを自然に学んでいます。変な話ですが、母方の祖父母からもらったものが、父方の祖父母からもらったものより、気にいったそぶりを見せたりすると、それで両親の親戚間の雰囲気が悪くなったりすることもあるでしょう。だから、むしろ自分の気持ちを出さないことを自己制御することが、賢い生き方だと体得して育ってきている可能性があるわけです。
二つ目の、子離れしない親が増えていることですが、要は子供が自分の言う通りにしないと気が済まない親が増えているということです。親の子離れとは、いつまでも子供が自分の分身のように素直に言うことを聴く存在ではない、ということに気づき、そのように子供に働きかけることをあきらめる状態のことです。しかし、前述したように、今の子供は大人の気持ちを読むことにたけているので、昔のように反発したり抵抗したりして、無理に親離れや子離れするケースが少なくなっているみたいに感じます。親の言っていることに「違うな」と感じていても反発したりせずに素直に従うことが賢い生き方と受け止めてしまっているので抗おうとしません。これは結果的に、親の子離れを遅らせる要因になって、就職という子供の自律的意思が求められる進路決定にも親が口出しし、結果的には自律的主体的動機付けのないままに進路を決め、就活をしている学生が増えているとことになります。実際に学生と面談していても「親がこうしろ」というからその方向で就活しているという学生は少なくありません。そしてそれでうまくいっている学生は残念ながら多くないように感じています。
自己主張することに慣れていないどころか、自己主張しないことがうまい生き方だと思い込んでいる学生にいきなり「君のやりたいことは何?」と問いかけても応えられるはずがありません。面接でそのような質問を受けて、「あれ??なんかおかしいかも??」と気づき始めているところに子離れできない親が介入し、せっかくの子供のきづきを否定するようなやり取りが、私たちの知らないところで繰り返されているのではないか?そんな印象を、ふと持ってしまうことが多い今日この頃です。まずはこの呪縛をとかないと前に進まないのですが、そこまではなかなか・・・。という状況に、今の大学の就職支援部門は直面しているというのが私の印象です。一つだけいえることは学生の呪縛をとくのは就職活動を始めてからでは遅いように感じますので、大学に入学してからすぐにキャリア教育として実施しなくてはいけないということです。ということで金沢大学ではこれまでの取り組み内容も踏まえ、いろいろ体系的なカリキュラム構築の検討を開始している状況です。
(2011.11.28掲載)
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