社会人基礎力はご存知の方が多いかと思いますが、経済産業省が民間企業の人事部門の方も集めて、「社会で働く上で必要な基礎的な力」として意義付けたものです。詳しい説明は省きますが、コンピテンシーの考え方をベースに社会で働く上での力を3つのカテゴリー、12の能力要素に分類しています。
金沢大学では、この12の力を学生が測定するツールを開発し、学生向けのポータルサイトで公開しております。学生は、自由に何度でもこの測定ツールを用いて自分の社会人基礎力を測定できる環境が用意されています(いろいろな兼ね合いがあり、「就業基礎力」というネーミングにしておりますが、中身は社会人基礎力です)。
元々は学生の進路相談や就職相談に乗る際に、学生の志望する業界には向いていないと思われる学生に対して、「そのミスマッチをどのように説明すべきか?」という想いから、そのあたりを説明するツールがないかといろいろと調べ始めたのがきっかけです。ツールとしてマッチングを可視化できる仕組みについては、私が金沢に戻る前に勤務していた情報通信機器メーカー(本社:東京都港区、2002年~2007年に在籍)での経験が役立ちました。同社は、コンピテンシーを導入しており、全社員のコンピテンシーデータからそれぞれの職務のスペシャリティを分析し、それをベースとした人材育成(ローテーションや教育機会の提供)手法を導入していたのです。コンピテンシーについては、この会社に勤務する前(それまでは石川県のIT系メーカーに勤務)から興味があり、いろいろ調べていたのですが、実際に体系的に導入され、活用されているのを目の当たりにして、非常に理解が深まったと思っております。
2007年に故郷の金沢に戻り、人材コンサル会社を起業(現在も運営中)、2009年より金沢大学で就職支援の仕事も兼務することになりました。上記の事情からコンピテンシーマッチング的なツールを学生向けに使えないかという思いでいろいろと調べるうちに、経済産業省のサイトで「社会人基礎力」を見つけました。見た瞬間に、「これはコンピテンシーマッチング」の考え方をベースにしているなと直感できました。早速、経済産業省に電話して、これを用いたマッチングツールの開発を行いたい旨を伝えたところ、そのような活用方法は想定していなかったようですが、ぜひご自由にご活用くださいと快諾いただき、測定ツールの開発を行い、学生向けにポータルサイトで公開を開始いたしました。
(お試し版は本学のHPで公開しておりますので、ご興味をお持ちになられましたら是非ご利用ください。http://ghp.adm.kanazawa-u.ac.jp/archives/28.html)
それと併せて、本学に求人票を送っていただいている企業様向けに「求める人材像」について同様のロジックで回答いただけるツールを公開し、求人票とあわせてこちらにもご回答いただく環境を用意いたしました。
さて、そういう経緯で3年ほど前から社会人基礎力をベースにしたコンピテンシーマッチングツールを企業向けと学生向けに公開し、データを集計分析しております。このコラムでその集計データをそのまま公表することは難しいのですが、非常に面白い結果が出ていますのでご紹介したいと思います。
それは、企業の求めるコンピテンシーと学生の保有するコンピテンシーが明らかに異なっているということです。企業側は、「自ら動く」【主体性】、「リスクを恐れずにチャレンジする」【実行力】、「課題解決にクリエイティブに思考する」【創造性】という能力を求めているのに対し、この部分についての学生の自己分析は低く、「人の話を聴く」【傾聴力】、「柔軟に対応する」【柔軟性】、「ルールに従って行動する」【規律性】という項目が高い学生が多いようです。学生が高いと認識する項目は、社会で働く上でもちろん必要ではあるのですが、企業側が特に重視する項目ではなくなっているということが明らかになっています。学生の二極化(内定を複数取りまくる学生とそうでない学生)傾向が言われて久しいのですが、内定を取りまくる学生は企業の重視している項目が高く、かつそれを具体的なエピソードで語ることができている学生が多いようです。
ちなみに、この企業の求める能力要素については、企業規模、業種・業界、職種によってもそれぞれ重視する項目が異なるという結果が出ています。そういう意味では、当初想定した結果をデータで学生に説明できるようになったので非常に喜ばしいことなのですが、それよりも学生の自覚する強みと企業の求める強みのミスマッチのインパクトの方が強烈でしたね(笑)。なお、このギャップについては先天的なものというよりは、今の若者の育ってきた環境要因によるものが大きいのではというとらえ方をしております。具体的に述べさせていただくと、企業側の重視する【主体性】、【実行力】、【創造性】などを使って行動する機会が極めて少ないために、潜在的にそうした能力を有している可能性があるにも関わらず顕在化している学生が少ないのではと考えております。これには根拠があります。3年ほど前に、本学の入社5年目程度のOB・OGの在籍する地元の企業の人事の方に、そのOB・OGのコンピテンシーについてのアンケートを実施したところ、弱いとされていた【主体性】、【実行力】、【創造性】が大きく伸びているという結果が出ています。入社してその能力を求められる環境ではしっかり伸びているわけですから、潜在的な能力は有していると考えているわけです。
大学として、少しでもこのギャップを埋めるための人材育成への取り組みを行う必要があるのではという認識を本学では持っており、共通教育科目群の中に「キャリアデベロプメントプログラム」という科目群を今年から開設しております。
次回以降、このあたりの取り組みについて少しずつご紹介していきたいと考えております。
元々は学生の進路相談や就職相談に乗る際に、学生の志望する業界には向いていないと思われる学生に対して、「そのミスマッチをどのように説明すべきか?」という想いから、そのあたりを説明するツールがないかといろいろと調べ始めたのがきっかけです。ツールとしてマッチングを可視化できる仕組みについては、私が金沢に戻る前に勤務していた情報通信機器メーカー(本社:東京都港区、2002年~2007年に在籍)での経験が役立ちました。同社は、コンピテンシーを導入しており、全社員のコンピテンシーデータからそれぞれの職務のスペシャリティを分析し、それをベースとした人材育成(ローテーションや教育機会の提供)手法を導入していたのです。コンピテンシーについては、この会社に勤務する前(それまでは石川県のIT系メーカーに勤務)から興味があり、いろいろ調べていたのですが、実際に体系的に導入され、活用されているのを目の当たりにして、非常に理解が深まったと思っております。
2007年に故郷の金沢に戻り、人材コンサル会社を起業(現在も運営中)、2009年より金沢大学で就職支援の仕事も兼務することになりました。上記の事情からコンピテンシーマッチング的なツールを学生向けに使えないかという思いでいろいろと調べるうちに、経済産業省のサイトで「社会人基礎力」を見つけました。見た瞬間に、「これはコンピテンシーマッチング」の考え方をベースにしているなと直感できました。早速、経済産業省に電話して、これを用いたマッチングツールの開発を行いたい旨を伝えたところ、そのような活用方法は想定していなかったようですが、ぜひご自由にご活用くださいと快諾いただき、測定ツールの開発を行い、学生向けにポータルサイトで公開を開始いたしました。
(お試し版は本学のHPで公開しておりますので、ご興味をお持ちになられましたら是非ご利用ください。http://ghp.adm.kanazawa-u.ac.jp/archives/28.html)
それと併せて、本学に求人票を送っていただいている企業様向けに「求める人材像」について同様のロジックで回答いただけるツールを公開し、求人票とあわせてこちらにもご回答いただく環境を用意いたしました。
さて、そういう経緯で3年ほど前から社会人基礎力をベースにしたコンピテンシーマッチングツールを企業向けと学生向けに公開し、データを集計分析しております。このコラムでその集計データをそのまま公表することは難しいのですが、非常に面白い結果が出ていますのでご紹介したいと思います。
それは、企業の求めるコンピテンシーと学生の保有するコンピテンシーが明らかに異なっているということです。企業側は、「自ら動く」【主体性】、「リスクを恐れずにチャレンジする」【実行力】、「課題解決にクリエイティブに思考する」【創造性】という能力を求めているのに対し、この部分についての学生の自己分析は低く、「人の話を聴く」【傾聴力】、「柔軟に対応する」【柔軟性】、「ルールに従って行動する」【規律性】という項目が高い学生が多いようです。学生が高いと認識する項目は、社会で働く上でもちろん必要ではあるのですが、企業側が特に重視する項目ではなくなっているということが明らかになっています。学生の二極化(内定を複数取りまくる学生とそうでない学生)傾向が言われて久しいのですが、内定を取りまくる学生は企業の重視している項目が高く、かつそれを具体的なエピソードで語ることができている学生が多いようです。
ちなみに、この企業の求める能力要素については、企業規模、業種・業界、職種によってもそれぞれ重視する項目が異なるという結果が出ています。そういう意味では、当初想定した結果をデータで学生に説明できるようになったので非常に喜ばしいことなのですが、それよりも学生の自覚する強みと企業の求める強みのミスマッチのインパクトの方が強烈でしたね(笑)。なお、このギャップについては先天的なものというよりは、今の若者の育ってきた環境要因によるものが大きいのではというとらえ方をしております。具体的に述べさせていただくと、企業側の重視する【主体性】、【実行力】、【創造性】などを使って行動する機会が極めて少ないために、潜在的にそうした能力を有している可能性があるにも関わらず顕在化している学生が少ないのではと考えております。これには根拠があります。3年ほど前に、本学の入社5年目程度のOB・OGの在籍する地元の企業の人事の方に、そのOB・OGのコンピテンシーについてのアンケートを実施したところ、弱いとされていた【主体性】、【実行力】、【創造性】が大きく伸びているという結果が出ています。入社してその能力を求められる環境ではしっかり伸びているわけですから、潜在的な能力は有していると考えているわけです。
大学として、少しでもこのギャップを埋めるための人材育成への取り組みを行う必要があるのではという認識を本学では持っており、共通教育科目群の中に「キャリアデベロプメントプログラム」という科目群を今年から開設しております。
次回以降、このあたりの取り組みについて少しずつご紹介していきたいと考えております。
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