◆「働く意味」を与え、部下の能力を引き出すリーダーの役割
トークセッションに先立ち、理論編として、グローバルな人事の世界でカリスマ的影響力を持つD.ウルリッチ氏の最新著作『The Why of Work』(邦題『個人と組織を充実させるリーダーシップ』デイブ・ウルリッチ、ウェンディ・ウルリッチ共著、生産性出版刊)を共訳した松本氏が、この本の概要を紹介した。
トークセッションに先立ち、理論編として、グローバルな人事の世界でカリスマ的影響力を持つD.ウルリッチ氏の最新著作『The Why of Work』(邦題『個人と組織を充実させるリーダーシップ』デイブ・ウルリッチ、ウェンディ・ウルリッチ共著、生産性出版刊)を共訳した松本氏が、この本の概要を紹介した。
まず松本氏が述べたのは、この本を翻訳した動機だ。「リーダー育成を考えると、日本だけが世界の潮流と違うことをしている。日本では部下をぐいぐい引っ張っていくリーダー像があり、部下はリーダーの言うことを聞くものだという前提で接しがちだ。しかし今は欧米でもアジアでも、この本に書かれているように、部下が何を考えているかを理解し、その能力をいかに引き出すかというリーダーシップが主流になっている」。
米国でベストセラーとなったこの本で、ウルリッチ氏は、従業員が「働く意味」を見つけることで充実の感覚が生まれ、組織への貢献が高まり、パフォーマンスが上がること、充実の感覚を生み出すのはリーダーの役割であることを述べている。
では、どのように生み出すのか。「ウルリッチ氏は、七つの簡潔な問いに答えることによってそれができると言っている。『私たちはどのような点で知られていますか?(アイデンティティ)』『私はどこへ向かっていくのか?(目的とモチベーション)』などの問いだ。この本では、リーダーが七つの問いにどう答えるか、その視点と考え方が組織学と心理学の両面から整理されている」と松本氏は語った。
米国でベストセラーとなったこの本で、ウルリッチ氏は、従業員が「働く意味」を見つけることで充実の感覚が生まれ、組織への貢献が高まり、パフォーマンスが上がること、充実の感覚を生み出すのはリーダーの役割であることを述べている。
では、どのように生み出すのか。「ウルリッチ氏は、七つの簡潔な問いに答えることによってそれができると言っている。『私たちはどのような点で知られていますか?(アイデンティティ)』『私はどこへ向かっていくのか?(目的とモチベーション)』などの問いだ。この本では、リーダーが七つの問いにどう答えるか、その視点と考え方が組織学と心理学の両面から整理されている」と松本氏は語った。
◆ロシア、中国など新興国におけるグローバルリーダー育成事情
事例編となるトークセッションでは、「日本のライバルとして台頭する新興国で、グローバルリーダーをどのように育成しているのかに焦点を当てたい。日本や欧米の企業のやり方は意識されているのか」と松本氏が問いかけた。これに応じ、あまり日本に情報が入ってこない新興国の事情を紹介したのが、ロシア、中国、ブラジルなど各国のグローバル企業を顧客としてリーダー育成に携わる池田氏。「それほど意識せず、もはや真似もしていない。それより社長や役員が人材育成にコミットし、会社が何を実現したいか、会社がどこに向かっているかが明確になっていて、それを基にやっているイメージが強い」と、新興国のリーダー育成が経営と直結していることを指摘した。これに対し、松本氏は「確かに、日本のあるグローバル企業の外国人トップは経営層の後継人材育成に時間を相当割いていると聞く。一方、多くの日本企業では新入社員が一人前になるまでは現場や人事が面倒を見るが、その先は本人に任せてしまうところがある」と、日本の問題点を提起。池田氏は、グローバルに戦っていくための人材の担保を重視し、後継リーダー候補の人材プールと育成を仕組み化している新興国企業の例を紹介した。
「あるロシアと欧米合弁企業は中国、インド、ペルー、コロンビア、日本など多様な国籍の人材が集まっている。この人たちをどう採用しているか。20代くらいの若手優秀人材を専門会社や体系的アプローチを使い拾い上げている。採用段階からそういう仕組みがあり、人事マターでなく経営者が関わり戦略事項として関わっている」。
日本企業のグローバル人材育成は新興国と比べて何が足りないかが鮮明となったトークセッションだった。
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