■トラブル例その1~選考前から囲い込み
震災の影響で第一志望群(学生がよく使いますが、微妙な言い回しですね)の企業の選考開始が6月に遅れた学生がいたのですが、その会社の選考を受けるに当たり、彼が5月末に採用担当者から下記のような電話を受けました。「じゃあ、当社を受ける前に他の会社は全部辞退しておいてください」
(※1)この会社は推薦で受けるのではなくあくまで自由応募での受験です。
(※2)これは私も思わず学生に聞いてしまったのですが、「内定出すから」ではなく「応募前」の話です
■トラブル例その2~辞退に逆切れ、恫喝
自由応募で受けていたシステム会社で無事内定をもらった理工系学生。実はこの会社は第二志望で、その後しばらくして第一志望の会社からも内定をもらいました。システム会社に内定辞退の電話を入れたところ、担当者が逆切れ!「君の大学から君の後輩が二度と当社に入社できなくなってもいいのか! 辞退するなら大学の就職担当に圧力かけてやる!」
学生からどうしたらよいかという相談があったのですが、辞退の意思は伝えてあるので放っておくように指示しました。
社名、担当者名もすべて記録してありますので、もし何かその会社から連絡があれば大学として正式に抗議しようと思っていましたが、その後話は何もありませんでした。
■トラブル例その3~無理やり内定囲い込み
最終面接に呼ばれた際に電話機のある会議室に通され、内定を出すかわりに今からこの電話で他の内定先を全部辞退するように強要されました。これは学生がその場での電話を拒否し、後日そこを辞退しました。
他にもいろいろありますが、とにかく今年はこの手のトラブルが特に多かったように思います。
内定を出す時期が間延びしてしまったために内定承諾者の人数が読めず、上司から目標採用数確保のプレッシャーをかけられた若手の採用担当者が、つい学生に無茶苦茶な対応をしてしまったというのがほとんどだろうと思っています(会社ぐるみでやっているとは思いたくありませんから)。
今の自由応募の進め方では重複内定は避けられない部分があるので、この手のトラブルを防ぐのは難しいとは思います。しかし、この手の対応を受けた学生は、ほぼ全員その会社へ入る意欲がなくなってしまいますので、結果的には逆効果になっているのも事実です。採用時にそういう無茶な対応をする組織は、入社後もそのような仕事を強いる可能性が高いと思われますから、この手のやり取りに拒否感を持つ学生が辞退するのは当然です。
特に、トラブル例その2やその3のようなケースでは、学生によってはその際に受ける心理的圧迫がトラウマやPTSDになってしまう懸念もありますので、「ハラスメント」に該当するのではと思っています(私は「リクルートハラスメント」と呼んでいます)。
このようなことを書くと「そんなやわなことでどうする」とお考えの人事の方もいらっしゃるとは思います。
しかし、学生にもさまざまな個性があること、それとビジネス社会との接点が少ない学生生活を送っている学生が多いため、この手の圧力に対する経験値が少なくなっていることを考えると、一定のディフェンス対策を講じる必要があるのではとも思います。採用側だけの問題としてとらえるのではなく、学生を出す側も当事者として一定のルール作りができないものかと考えております。
このあたりについてご意見、ご提案があればぜひ私あてにご連絡いただければと思います。
最後に、実はこの手のトラブルが増えているのは民間だけではありません。官公庁でもこの手の強引な内定拘束が増えてきております。公務員志望者も一人でたくさんいろいろな種類の職種や行政体を受験するのが当たり前になっており、辞退率の高い官公庁で強引な内定拘束を行っているところがいくつかあるようです。
この手の情報は学生間で先輩から後輩に引き継がれていくのもので、官公庁の場合はかなり正確に情報が学生に伝わっています。そうするとその官庁を応募する学生が減るために、最終選考に残った学生を確保しようとさらに強引な拘束を繰り返すという悪循環が起きているようですね。
では今回はこのあたりで・・・。
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