どうやらこの数年で新卒採用環境は大きく変わるような印象を持っています。今回はそんな中での初期の企業PRイベント(合同会社説明会)について書いてみたいと思います。
より質の高い学生を呼び込むには大規模なプロモーションを行って企業イメージを植え付ける、知られていない仕事内容をしっかりアピールする、ということが重視されていたように感じました。今年は主要大手の参加はそれほど多くなく、準大手クラスの企業とBtoBビジネス中心で、学生にそれほど知名度のない企業の参加が継続しておりましたが、大きなブースで大規模なプロモーションを行っているところはほとんどありませんでした。流通やアミューズメントといった業種の企業が大きなブースで積極的にプロモーションしていたように思います。ただ全スペースの1/3くらいが開いており、会場を埋めきるだけの企業の出展を得られなかったようでした。

金沢大学では、今年は12月4-5日、1月8-9日、2月11-12日に業界企業研究会と銘打って学内説明会を開催しております。本学の学内説明会の申し込みは9月上旬に本学就職支援室のHPから行っていただくのですが、400社を超える企業からの参加申し込みを頂きました。当初300社の参加を想定していたのですが、さすがにせっかく申し込んでいただいた100社前後の企業をお断りするにはしのびず、急遽何とか40社分は会場を増設し、計340社の企業に参加していただくことにしました。申込企業数は、2008年は約200社、2009年は約280社と年々増えており、特に今年は追加募集の引き合いも、締め切り後にも非常に多くいただきました。
学内企業説明会参加のメリットは、ターゲット対象とする大学生に的を絞ったプレゼンテーションを実施できることに尽きると思います。反面、教室や大集会室のような限られたスペースでのプレゼンテーションになるため、その場で学生を集客することが難しく、学生の認知度の低い企業には学生がまったく集まらないというリスクがあります。そのようなリスクをおかしてでも学内説明会への参加希望が増えているということは、従来の不特定多数の大学生を採用ターゲットとする動きから、特定の大学の学生に採用ターゲットを絞り込むという戦略に企業側がシフトしてきているという動きが読み取れます。

景気の回復が長引く中で採用コストの削減も求められており、絞り込んだ人数の学生を採用するのにそれほど多くの人手を割くことも難しいという状況の中では、多少乱暴かもしれないが学校名で採用対象母集団を絞り込んで選考を実施した方が効率的だ、という判断を行う企業が増えてきているという見方が当てはまると考えております(大学主催の学内説明会の場合、出展料は格安か無料という点も見逃せないメリットかもしれません)。

では学生たちはこうした動きをどのように受け止めているのでしょうか? 残念ながらこうした変化にはあまり敏感に反応できていないのが実情です。合同企業説明会への学生の参加は相変わらず大変多く、私が見に行った日も3万人近い学生が参加していたようです。相変わらず知名度の高い会社に多く集まる傾向がありました。実は学内説明会においても昨年は同様の動きが強かったために、今年は事前に説明会を実施し、その中でかなり強く指導しました(12月の説明会で学生はかなり分散化して企業ブースを回ったようですので一定の成果があったように思いますが・・・)。

学生がこのような変化に鈍いのは理由があります。今の学生は就職活動のノウハウや進め方の情報のほとんどを就活サイトなどのマス媒体に頼って収集しており、これらには今回の変化についての情報が全く出てきていないからです。これは今回の変化が就活サイトを運営する会社のビジネスモデルを根幹から揺るがすものであり、この情報を学生に流してしまうと自らの事業を自己否定することに繋がってしまうからだと考えています。

さて、このあたりが大学の就職支援室の出番だと思っており、2012年卒業予定者に対して具体的には下記の3点に注力した支援を実施しております。一つ目はガイダンスなどで繰り返し学生に上記の変わりつつある状況に関する情報を発信すること、二つ目は学生の就職活動に対する就職支援室の活用認知度を上げること、三つ目は多面的な情報収集を意識させることです。この詳細については次回で詳しく述べさせていただきます。
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