No.2とチームの今後を熱く語ると、「自分は期待されている」「上司の右腕と見られている」と自覚するようになってきます。
 しかし、あくまで自覚だけで「責任感」が伴わず、行動が大して変わらないというケースも見られます。
 そこで、最初は意図的に「自分はNo.2の仕事をしている」と感じさせ、責任感を徐々に植えつけていくことが効果的です。
 では、何をするのか?
それは、我々上司の仕事の一部を、思い切ってNo.2に振ることです。その際は、60点主義が基本です。
 60点主義とは、完璧を求めないということ。60点の出来で御の字とするという考え方です。

「No.2がいない」「うちの部下はなかなか成長しない」と嘆いている上司は、たいがい100点主義の人です。100点主義とは、任せたら完璧な出来を求める人。95点でも不満な人です。
 このような上司は、そもそも部下のことを信用していませんので、仕事を振ることができず、
結果的に誰もNo.2にならないのです。
 ともすると、「オレが面倒を見ないと、ダメな奴らだ」という自分に酔っている恐れさえ感じさせます。

 では、60点主義でどのような仕事を任せるのか?
 いきなり、大きな仕事を任せるのは得策ではありません。
なぜなら、プレッシャーに押しつぶされて、「No.2などになりたくない」と思ってしまうかもしれないからです。
 そもそも、No.2は管理職ではない場合が多く、管理職手当ても何もありません。あくまでいちメンバーなのです。

 徐々に仕事を任せ、段々と「責任ある仕事をするのはやりがいがある」と感じてもらうことが肝要です。

 例えば、上司が不在の際のミーティングで司会を任せる、若手の日報に対するコメントをつけさせる、チームの数字を管理させる等。
 任せる際は、「これやっといて」といった軽いノリではダメです。「これは、山田だから頼んでいる」といった動機付けが大切です。

 なお、任せた当初は当然うまくいかないことも往々にして発生します。その段階で、「やっぱりお前に任せたのが間違いだった」といわんばかりの態度をとり、その後一切任せなくなる上司もいます。
 このような態度をとると、自信喪失でNo.2としての今後の行動が期待できません。

 うまくいかなくても、「お前に期待している」という態度を崩さず、フォローしながらその役割を全うさせます。
 ここでの胆力が、真のNo.2をつくれるかどうかの分かれ道です。

 私はよくマネジャー向けの研修を実施します。研修中の休憩時間を見ると、そのマネジャーの下のNo.2がしっかりしているかどうかがすぐに分かります。

 休憩時間のたびに、ひっきりなしに電話をしているマネジャー。このマネジャーの下のNo.2はきっと頼りないのでしょう。
 電話の内容を聴いていると、「○○の書類はもう出したのか?まだ?何やってんだバカヤロー」とものすごく具体的なアドバイスをしている。
 アドバイスする事を否定はしませんが、さすがに、このレベルの業務指示までしなくてはならない状況は、厳しいですね・・・。

 一方で、研修の休憩時間には他の参加者と積極的に情報交換したり、談笑しているマネジャーもいます。
 滅多に携帯電話をいじりません。

 私が、「平日に会社に行かないと、少し不安では?」と投げかけると、「いやいや、うちは下がしっかりしてますから。私が面倒見てもらってるくらいですよ、ハッハッハ」と余裕の表情。

 上司が不在時には、「自分が上司の代わりをする」と思っているメンバーがいるのです。そのような人材こそ、真のNo.2です。

 しかし、最初からそのようなことを期待するのは難しい。
 最初は、「明日私は不在なんだ。悪いんだけど、朝礼の司会やっておいて」等と具体的に指示を出してみます。
 まあ、その程度ならできるでしょう。

 もし、そのような簡単な指示を出して、うまく行なえたら、「昨日は助かったよ。次回も色々頼むね」と布石を打っておきます。

 しばらく、不在にする際にはこのように具体的に簡単な指示を出してやってもらうことを続けます。
 そして、次第に「明後日不在なんだよ。何か代わりにやってもらいたいんだけど、何ができそう?」と考えてもらいます。

 多分、これまで指示を出した内容を話すメンバーが多いでしょう。それに対して、「え、そんなこと当たり前でしょ?もっと色々やってよ」といきなり言わないように注意。いつもやっている内容を話したとしても、「お、ありがとう。それやってもらえると本当に助かるよ」と感謝します。

 自分の口から「○○をやります」といってもらうことが重要です。「自分が、申し出て上司の代わりをやっている」という感覚を持ってもらう第一歩なのです。

 そのようなことを繰り返していると、徐々に「上司がいないときは、自分が代わりをやるんだ」という意識が根付いてきます。
 そうすれば、もうこちらが何も言わなくても、自分で考えて色々と動いてくれるはずです。

 ただ、中には「そこまでやらなくていいんだけど・・」と思うような行動まで取るNo.2も表れます。上司からすると、余計なお世話と言いたくなるような行動です。
 勝手に上層部に提言を行なったり、新人を必要以上に厳しく指導したり・・・。

 しかし、良かれと思ってやっているのです。頭ごなしに否定してはいけません。
 ただし、「それは期待していた行動とは違う」ということは、はっきり伝えた方が良いとですね。

 いずれにしても、留守を預かる人材がいれば、マネジャーとしてダイナミックな行動が実現できます。
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