大学で初めて出会って、アメリカンフットボールほどに魅了されたスポーツはない。今でも九州の片田舎から関西学生リーグの最終節を観戦に行くほど肩入れしている。日本では極めてマイナーなスポーツであるが、サッカーやラグビーより断然面白い。アメフトが盛んな関西では、RTVというインターネットスポーツテレビ局が関西学生リーグ戦を生中継までしている。学生スポーツでは、唯一、関西>関東であるのがアメフトなのである。
学生アメフトから学ぶ
私の贔屓は、母校でもある関西学院大学ファイターズ。日本へアメフトが輸入されてから現在まで、学生アメフト界を牽引してきたチームだ。強さへの憧れもあるが、惚れこんでいるのはその組織体の運営のすばらしさだ。学生スポーツといえば、指導者のカリスマ性に依拠することが多い。しかし、ファイターズはあくまで学生の主体的な取組みとアメフトを通じた人間教育を基本に据えている。つまり、4年間の学生アメフトの勝負だけに挑んでいる訳ではないのだ。大学のOBで元朝日新聞編集委員の石井晃さんが、ファイターズに関して様々な視点からコラムを書いておられる。その2013年12月25日付のコラムに、現在も監督である鳥内秀晃氏の組織運営に関する考え方とご自身の捉え方を綴っておられた。
手元に「経営情報12月号」という冊子がある。星和ビジネスリンクという会社の発行で、僕はマネジャーの野瀬君から「何かの参考に」ともらった。そこに鳥内監督の「スペシャル・インタビュー」が掲載されている。
その中に、監督のこんな発言が収録されている。
「試合は予測できない展開の連続。それにいかに対応するかの危機管理能力が何よりも求められます。日頃からそれぞれのポジションの選手がさまざまなシミュレーションをして予定外のことが起きた時、どう対応するか、あるいは逆にどう相手の裏をかいて混乱させるか。それができるようになるには、結局練習を積み重ねるしかありません」
「受け身の練習、受け身の生き方では何も成長しません。今の自分に何が必要か、どうすればチームに貢献できるかを考えられる選手を育成したいと考えています」
「上から押し付けられたことをこなすだけでは、試合でもそれ以上の力を発揮できないし、社会に出てからも主体的な生き方はできない」「アメリカンフットボールというツールを通じた人間教育、社会にでる土台作りこそが究極の目標です」
さらには「下級生でも自分の思っていることをはっきり意見できる風土づくり」の大切さを説き、「4年生には、プレーヤーとしての役割に加え、下級生に対するコーチや兄貴としての役割を求める。いま何が大切なのかを説明し、説得できる技術も必要」という言葉もある。
ふだんはここまで丁寧に説明されることは少ないが、取材した人の聞き出し方がうまかったのだろう。監督のチーム作りの哲学が過不足なく表現されている。「強さの秘密」を考えるにあたって、こうした発言は何かと参考になった。
とりわけ注目したいのは(1)試合では危機管理能力が何よりも求められる(2)受け身の練習、受け身の生き方では何も成長しない。考えられる選手を育成したい(3)4年生には、下級生に対するコーチや兄貴分としての役割を求め、下級生でも自分の思っていることをはっきり意見できる風土づくりに気を配る、という点である。
その中に、監督のこんな発言が収録されている。
「試合は予測できない展開の連続。それにいかに対応するかの危機管理能力が何よりも求められます。日頃からそれぞれのポジションの選手がさまざまなシミュレーションをして予定外のことが起きた時、どう対応するか、あるいは逆にどう相手の裏をかいて混乱させるか。それができるようになるには、結局練習を積み重ねるしかありません」
「受け身の練習、受け身の生き方では何も成長しません。今の自分に何が必要か、どうすればチームに貢献できるかを考えられる選手を育成したいと考えています」
「上から押し付けられたことをこなすだけでは、試合でもそれ以上の力を発揮できないし、社会に出てからも主体的な生き方はできない」「アメリカンフットボールというツールを通じた人間教育、社会にでる土台作りこそが究極の目標です」
さらには「下級生でも自分の思っていることをはっきり意見できる風土づくり」の大切さを説き、「4年生には、プレーヤーとしての役割に加え、下級生に対するコーチや兄貴としての役割を求める。いま何が大切なのかを説明し、説得できる技術も必要」という言葉もある。
ふだんはここまで丁寧に説明されることは少ないが、取材した人の聞き出し方がうまかったのだろう。監督のチーム作りの哲学が過不足なく表現されている。「強さの秘密」を考えるにあたって、こうした発言は何かと参考になった。
とりわけ注目したいのは(1)試合では危機管理能力が何よりも求められる(2)受け身の練習、受け身の生き方では何も成長しない。考えられる選手を育成したい(3)4年生には、下級生に対するコーチや兄貴分としての役割を求め、下級生でも自分の思っていることをはっきり意見できる風土づくりに気を配る、という点である。
この石井さんのコラムを拝読して、ファイターズの取組みは実社会の企業組織を超えていると感じた。大学スポーツから組織論を教えられるとはお恥ずかしい限りであるが、これが十二分に企業でも通用するから驚きだ。
一般企業に応用すれば
ファイターズのプリンシプルを企業の経営者と社員の行動準則に当てはめれば次のようなものになるだろう。私の勝手な理解だが、組織人には是非役立ててもらいたい。■経営者の行動準則
・企業の経営理念を社員に語り続けること
・社員とのコミュニケーションをとり、目標と実践を主体的に考えさせること
・経営理念に基づいた社員の主体的取組を促すこと
・上司・部下に関係なく議論できる社内風土づくりを行うこと
・社員の日常業務から常に危機管理意識を植え付けること
・率先垂範の部下から信頼される管理職育成に努めること
■社員の行動準則
・経営者の考え、企業の立ち位置を十分に理解すること
・企業や自身の業務に危機管理意識やコスト意識をもって臨むこと
・業務の熟練度を高め、自身の潜在能力を引き出す努力を惜しまないこと
・与えられた業務に限らず、自分たちの行うべきことを理解し、主体的に、かつ自ら考えながら取り組むこと
・常に自身の業務のステークホルダー(取引先・上司・部下・同僚)に配慮しながら、労りをもって取組むとともに、議論することを恐れないこと
さて、今季も我がファイターズは関西学生リーグで全勝優勝を果たした。昨季までであれば、ほぼ自動的に大学日本一決定戦である「甲子園ボウル」に出場できたのであるが、今季はその方法が変更されて、関西学生リーグ2位の強豪、立命館大学パンサーズに再び勝利しなければ出場できない。学生主体の優れた戦略により、「甲子園ボウル」そして社会人との日本一決定戦「ライスボウル」での勝利を確信している。そして、卒業する4年生は社会人として大きく羽ばたいてもらいたい。
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