法律が制定されたり改正されたりしたときに、公布の日と施行期日が異なることがよくある。公布というのは、すでに成立した新しい法令を広く一般人が知ることができる状態におく行為をいう。法律を逐一国民に説明することはできないため、一定の形式で周知する手続である。そして、即日あるいは一定期間を経て、施行に至る。施行は、法令が現実に効力を発し、実施される状態にすることをいう。法律は公布の日より起算して満20日を経て施行されるのが原則であるが、最近の法令ではその法令自体のなかで施行時期を定めることが多く、公布の日から施行される場合も少なくない。
法律の公布と施行の意味
法律の施行期日の定め方には、次の4つの方法がある。(1)公布の日から即日施行する
(2)公布の日から起算して一定期間経過した日から施行する
(3)施行期日の定め方を一定期間の範囲を限って下級の法令に委任する
(4)施行期日を特定の事象の発生にかからせる方法
である。いかなる方法で施行期日を定めるかは、具体的な法律の内容、目的などで決められ、その始期は、法律の附則の冒頭に施行期日に関する規定を置くことで明らかにされている。たとえ、施行期日に関する規定がなくても、法適用通則法に前述のとおり規定されているので問題は生じない。
最近の労働関連法の場合、公布と施行期日に一定の期間が予定されていることが多い。例えば、昨年改正された「育児・介護休業法」および「男女雇用機会均等法」は平成28年3月29日に成立し、3月31日に公布され、附則において施行期日が平成29年1月1日とされた。それは国民への一般的な周知もさることながら、所管省庁の施行の準備や国民の権利・義務関係に大きく影響、それによる混乱の発生を回避するためである。いわば、当該法令の施行をスムーズに運ぶための準備期間と位置づけられているわけである。この期間内に、行政は運用の細部の詰めの作業を行い、関係者はそれに基づき適切に対応していくことになる。