2017年卒採用は、選考開始日の2カ月前倒しにより短期化されました。そんな中、企業の採用活動や学生の意識・就職活動にはどのような変化があったのか。また17卒採用を継続している企業は、後半戦をどのように戦えばいいのか。さらに18卒採用に向け、企業はどのような戦略・戦術をとるべきなのでしょうか。HR総研所長の寺澤と、新卒ダイリク総研を運営する株式会社i-plug代表・中野智哉氏が、それぞれが持つ膨大な調査データをもとに徹底的に議論しました。
データで振り返る2017新卒採用の最新情報

【第一部 2017および2018年卒採用動向/寺澤康介】

2017卒採用動向【1】

HR総研による調査をもとに、2017年卒の採用動向を見ていきたいと思います。2017年卒採用の課題(※図1)を見てみると、「応募者の数を集めたい」「ターゲット層の応募者を集めたい」「内定辞退者を減らしたい」「大学との関係を強化したい」「学生企業セミナーの参加大学を増やしたい」などが上位に並びます。

プレエントリー数の増減は、「前年より少ない」が41%でトップ。「前年より多い」企業は20%しかなく、「少ない」企業はその2倍です。続いて、学生に聞いたプレエントリー社数比較では、文系で「41社」以上にプレエントリーした学生は前年より軒並み減少。特に「101社以上」の大量プレエントリーをした学生は、16%から10%へと減少しています。一方、理系でも「41社」以上にプレエントリーした学生が前年よりも軒並み減少し、逆に「20社以下」の学生は5割に迫る勢いで、プレエントリーの絞り込みをしている学生が多いようです。なお、プレエントリーの時期に関しては、3月に9割以上の学生が実施し、4月には7割、5月には5割とどんどん減少。3月以前での刷り込みが重要だということがわかります。
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2017卒採用動向【2】
データで振り返る2017新卒採用の最新情報
セミナー・説明会の参加者数の増減は、「前年より少ない」が40%でトップ。「前年より多い」企業も24%あり、二極化が進んでいるようです。
学生の個別企業セミナー参加時期については、9割近い学生が3月から参加。またエントリーシートの提出社数に関しては、文系では「15社以上」に提出した学生が前年は56%と過半数でしたが、今年は10ポイント減少。「1~3社」「4~6社」といった、少ない社数に絞り込む学生が増加しています。一方理系では、「30社以上」が前年の14%から半減以下の6%になるなど、大量にエントリーシートを提出した学生が減少。文系と同様、「1~3社」「4~6社」といった少ない社数に絞り込む学生が増加しています。またエントリーシートの提出時期は、文理ともに3月が8割前後です。

内定社数に関しては、文系では「早慶クラス」の87%、「その他私立大学」でも70%が取得しており、全体の48%が2社以上からの内定を取得。これは理系も同様で、必ずしも上位大学の学生だけが内定をたくさん取っているわけではありません。次に内定者の就活継続意向については、文系は内定取得者の7割が就活終了予定。理系も内定取得者の8割が就活を終了する意向となっており、いずれも多くの学生が第一志望で内定を取れているという現状がわかります。次にインターンシップ先への応募状況ですが、文理とも3分の2の学生がインターンシップ先の企業に正式応募。一方、インターンシップ先からの内定に関しては、文系の3割、理系の4割以上がインターンシップ先から内定を取得しています。
2017卒採用動向【3】


エントリーシート提出数の増減に関しては、エントリーシートを利用していない企業が約4割です。「前年並み」企業は3割にとどまり、2割以上の企業が「前年より減少」で、「前年より増加」した企業は1割となっています。面接選考の時期については、「5月後半」「6月前半」がともに65%で最多。内定出しの時期は、文系・理系ともに6月前半・後半がピークで、理系のほうが少し早いのが特徴です。

次に、採用計画に対する内定の充足率ですが、大手・中堅企業では充足率が60%以上の企業が半数近くに達しており、また内定辞退率の増減は、大手・中堅の4割近くが「内定辞退の増加」を予想しています。採用選考活動の終了時期の見込みは、「7月」が最多であるものの、7月までに終了できることを予想する企業は33%と3分の1に過ぎず、4割近い企業が10月以降までかかることを予想。今後の採用の施策については、既存のエントリー者だけでの選考で足りるとする企業は少なく、56%の企業が「まだこれから新たなエントリーを受けつける」としています。そして採用活動の感想を伺ったところ、前年と比べて「大変になった」と感じる企業が半数以上に達し、逆に「楽になった」とする企業はわずか4%と、売り手市場の進行が影響しているようです。
2018卒採用動向


続いて2018年卒採用動向を見てみると、インターンシップ実施企業に関しては(※図2)、さらに拡大することが見込まれています。実施予定のインターンシップタイプについては、「1日程度のインターンシップ」が最多。実施時期は、「8~9月」と「1~2月」がピークです。続いて面接開始時期ですが、最多は「4月」の26%で、今年と比較した場合、「早くなる」とする企業が22%に。一方「遅くなる」企業はわずか1%のみとなりました。内定出し開始時期は、最多が「5月」の26%で、こちらも今年と比較した場合、「早くなる」とする企業は2割近くとなっています。
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18年卒採用動向のまとめと、今後の採用戦略立案の方向性

・インターンシップ(特に1日型)がさらに増加傾向に。3月以前の活動をいかに設計するかがポイント。
・面接、内定出しがさらに前倒し傾向。3月以降の活動の中で、いかに迅速に選考し、学生の志望動機を高めて行くかがポイント。
・18採用はさらに早まる(早期活動も、選考も、内定出しも)と予想されるなか、いかに学生と密度の高い関係構築ができるかが課題。
・マス採用手法を根本から再検討すべき。学生個人をしっかり見た採用を。そうでないと、どんどん消耗戦になる。

第二部 トークセッション/中野智哉氏×寺澤康介

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寺澤  17卒・18卒採用動向の話をお聞きいただいて、率直にどう感じられましたか?

中野  弊社が実施している調査も同じような傾向で、新卒採用の実態は大きく変わってきているな、というのが率直な感想です。

寺澤  まずダイレクトリクルーティングがどういう人たちにどのように使われているのか、その実態について解説いただけないでしょうか。

中野  では「新卒ダイレクトリクルーティング利用実態調査」をもとにご説明いたします。
弊社のサービス『OfferBox』は、活用している就職ナビランキングで8位にランクイン。17卒学生の利用は3.8万人で(※図3)、文理ともに10人に1人にご利用いただいており、さらに18卒に関しては7~8万人の利用が見込まれております。
一方、利用企業数は現状1,667社にご利用いただいており、昨年対比2倍の進捗です(※図4)。
また、利用企業の属性に関しては、従業員数別に見ると100名未満が54%、100~499名が29%、業種別に見ると通信・ITが半数近くを占めていますが、ほぼすべての業種でご利用いただいています。次に、学生の登録属性に関しては、16卒ではMARCH・その他国公立以上が64%以上を占め、さらに17卒では関東・関西エリア以外の地方の大学にも拡大。オファーメールの送信件数を比較すると、昨年対比で3.3倍となっています。
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寺澤  オファーメールというのは普通の就職ナビとは逆で、学生が自分のページを持って情報をいろいろと書き込んで、企業側はそれを見て興味を持った学生ひとり一人に対して、メールを送ると。例えば東大、一橋大の学生に一括メールを送ることはできないのですね?

中野  はい。一人ひとりプロフィールを見ないとメールを送ることはできません。

寺澤  量的な制限は企業側だけでなく学生側にもかけているのですか?

中野  基本的に一人ずつしか送れないというのがダイレクトリクルーティングの本質なのですが、もう一つ弊社では制限をかけておりまして、企業は1社につき100人まで、一方の学生側も15社までしか送れません。

寺澤  とはいえ、一部の上位大学に内定が集中しているのではないか。そのあたりの実態についても、データをご紹介いただけないでしょうか。

中野  こちらに「2016卒企業規模別のオファー送信属性比率」に関するグラフ(※図5)がございます。大手、中堅、中小・ベンチャー企業別に、それぞれ「旧帝大・早慶クラス」「その他国公立」「MARCH・関関同立クラス」「日東駒専・産近甲龍クラス」「その他」へのオファー送信割合を出したものですが、パッと見ていただくと、パーセンテージの違いこそあれ、ほとんど分布は一緒です。よく「上位大学にばかり送るのではないですか?」と聞かれるのですが、実際はグラフのようにかなり分散しています。またこの分布は利用している学生の数に比例しており、例えば「MARCH・関関同立クラス」が多いのは、このクラスの学生の利用率が高いからです。また、就職先企業比率を見てみても、「上場企業or未上場1,000名以上」が35%、「100~499名」が33%、「100名未満」が25%と、こちらもバラついています。
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寺澤  普通はエントリーシートを見て初めて、この学生はこういう人なのか、というのがわかるものですが、ダイレクトリクルーティングの場合は、「こんなことをやっている学生なんだ、それなら彼にオファーしてみよう」と事前にわかるので、そうなると大学の分布も自然と分散してくるわけですね。

中野  自社に合った学生や、欲しい人物像のちょっと上の学生を狙っていこうとすると、その学生がどんなことをしてきたのか経歴もきちんと見ることになるので、結果的に分散に繋がると。ですからプロフィールをきちんと書き込んでいる学生の95%は、1社以上にオファーをもらっています。

寺澤  従来の就職ナビなどでは返信率が0.0何%などという数字がありますが、ダイレクトリクルーティングでは平均的にどのくらいの返信率なのでしょうか?

中野  平均は40%です。

寺澤  1社につき、これを使ってだいたい何人くらい採用しているのでしょうか?

中野  今年はマックスで22名採用した企業があります。

寺澤  18年卒採用に向けて、学生と早期に密度の濃いコミュニケーションを取るために、ダイレクトリクルーティングではどのようなことが行われるのでしょうか?

中野  まずダイレクトリクルーティングに関わらず、全体的にいつやるのか、どんな学生に対してやるのか、最終的にどんなコミュニケーションを取るのか。この3点が揃わないとうまくいかないでしょう。企業規模別の採用決定力比較の表(※図6)をご覧ください。みんなが集まるところに行ってしまうと、レッドオーシャンで大変なことになってしまいます。例えば、中小・ベンチャー企業が「旧帝大早慶クラス」に行くと0.31、「MARCH・関関同立クラス」でも0.47と、大きく負けていますが、「その他国公立」や「その他」なら十分戦えていますよね。だからこそきちんとターゲットを決めるべきではないでしょうか。
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寺澤  『OfferBox』では、学生を検索するシステムに人工知能を導入し、企業が会いたいと思う可能性が高い学生を自動検索できるそうですね。

中野  使っていくと人工知能が学んで、類似した学生が上位にくる仕組みとなっています。ターゲットを決めるのは人間しかできませんが、探すのはテクノロジーでも可能ですよね。もちろん、次のコミュニケーションを取るという部分も人間しかできませんので、どこに注力するかというのが、今後2~3年の採用戦略にとって非常に重要だと思っています。
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