石川県では、昨年から5月に「インターンシップフェス」というインターンシップの合同説明会を開催しており、最近はここでインターンシップ先を決める学生が増えてきています。
北陸ではリクルートやマイナビが実施するインターンシップ関係のイベントよりもはるかに大きなイベントになっています。2016年の参加団体は130くらいで、1000人くらいの学生が集まっていました。こういった動きを受けてインターンシップ実施時期が早まっているようで、今年は盆休み明けから本格的にスタートするところが多く、実施のピークは、9月上旬になっているところが多いようです。

金沢大学では、課題解決型のインターンシップを2010年から2015年まで正規の科目として私が担当していたのですが、この科目は、クォーター制導入など、カリキュラム大改革の中でいったん科目としては廃止になってしまいました。ですが、2016年は、石川県内で共同実施する地域インターンシップ推進において、業界別汎用プログラムとして4つの業界向けのプログラムの運用を担当することになったほか、官公庁や地域団体向けの2つのプログラムの実験的な運用についても担当することができました。ほかに自社(北陸人材ネット)で一つ、以前から関わらせていただいている企業でも一つ関わっているので、今年はなんだかんだで8つくらいのインターンシップの運営に関わっていることになります。

さて、私が関わっているインターンシップは基本的には「課題解決型」のプログラムが入っているものです。前にもこのコラムで書いたことがあるのですが、「課題解決型」のプログラムとは、インターンシップ期間中に学生たちに課題を与え、その解決策を考えてもらい、発表してもらうという内容です。5~10日くらいの実施期間の中で行うには、日程的には少し厳しいのですが、事前にある程度調べてきてもらうなどの工夫をしてもらい、できるだけ取り入れるようにしています。

私が課題解決型のインターンシッププログラムに関わることになったのは、かれこれ10年くらい前、私がまだ沖電気の人事部で働いていた頃に、デジットというインターンシッププログラム開発を行うベンチャー企業から提案をいただき、実施したことがはじまりでした。
その時のテーマは「生体認証の技術を使った新規事業提案を考えてもらう」という内容でした。今考えるとかなりアバウトなテーマだったのですが、それをいくつかの学生グループごとに提案してもらいました。学生の発表内容にはかなりばらつきがあったのですが、中には仕様書まで書いてきている学生がおり、素直にそれらに感心したことが、そもそものきっかけです。

課題解決型のプログラムは仕込みが必要な部分がありますが、受け入れ現場にあまり負荷をかけずに実施できるという利点のほか、大学の立場から企業に説明するにも業種や職種にあまり関係なく進めることができるため、自分の中ではインターンシップの定番みたいな位置づけになっております。ただ、インターンシップというと従来通りの職場体験型のイメージしか持っていない企業の方もそれなりにいらっしゃいますので、企業の方と話がかみ合わないこともありますが(笑)。
ちょっと補足説明しますと、下表のようなインターンシップの類型の「e」が課題解決型です。職場体験だけではなくその職場に即した課題に対して解決策を学生たちに考えて提案してもらうという内容が入っているので、通常のインターンシップよりも教育的な要素が強いのではと思っております。
第48回 人材育成とインターンシップ~その1
さて、課題解決型のインターンシップを実施する際に一番留意しなければならないこと、それは、関わる大人の立ち位置です。課題に対する解決案は学生たちに考えてもらわないといけないので、学生の自主性にゆだねます。とはいえ、一定水準以上の提案内容を引き出さないと質が上がらないので、ある程度は関与しなければいけない、というトレードオフがあります。

学生の自主性にゆだねすぎると、企画内容が抽象的すぎて実現性の低い内容になってしまいますし、かといって干渉しすぎると今度はやらされ感いっぱいのインターンシップになってしまい、参加した学生の満足度を高めることができません。そのあたりのさじ加減がなかなか難しく、毎年開催している企業でも参加する学生の意欲や取組姿勢によってある程度、ばらけてしまうことがあるのが現状なのですが、コツみたいなものが自分なりに少しずつ見えてきているように感じております。またこのコツというのが、どうも企業における人材育成や組織開発とも関連性があるように感じており、さらに言うと採用力とも相関関係があるように感じております(課題解決型のプログラムをうまく回せる企業は、採用もうまいのでは??と感じ始めております)。

次回以降、そのあたりについて試行錯誤を繰り返しながら自分なりに感じてきたことや、運用面で押さえておかねばならないことなどについてまとめてみたいと思います。
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