自己分析で自分を見直すツールにもなる
では、スキルギャップを見るための方法を見ていきましょう。これには、評価情報分析、360度の診断、昇格のアセスメントなど、会社によってさまざまな方法が使われていると思います。それを踏まえて、すこし汎用的に使える分析ツールも作っています。これによってスキルギャップを把握したうえで、短期的な育成策を打っていく。今の育成策に対する手段ですので、短期・中期的な課題になります。問題のある層、問題のあるセグメントは何かを明らかにし、優先順位をつけて施策化する。同時に、ベースになっている人材育成策も見直していきます。さらに、最適人材配置にも展開できると思います。
まずは、評価情報分析について。これは多くの会社で行われ、すぐに実施できるもので、評価情報を分析するということです。スキルの項目として、問題解決力や問題発見力を挙げ、そこに人数や%を入れていきます。評価の高い・低いを目で確認できるように表にして、問題のある箇所を発見しやすくします。これを全社的にどうなのか、マネジメント層など階層別ではどうなのか、支社や事業部ごとにどうなのか、経年ではどうなのか、というように能力や行動を分解してみることができるようにしていきます。
このポイントは、評価項目自体がだいぶ前に作られているものが多いので、今はあまり重要ではない内容も入っています。そこで、評価項目のうち、今何が重要なのかを特定して、その項目についてみていくことが必要です。
2つ目の方法は360度の診断です。これも、多くの会社で採用されていると思います。この手法を否定的にとらえられる企業も多く、評価スキルのない部下からの評価に意味があるのかという指摘もありします。しかし、そうではありません。360度でつけられる票点にはあまり意味はないかもしれません。極端に低くつける人もいれば、高くつける人もいるからです。しかし、10個の項目があって、つける人がある人の評価をつけるときに、10個の項目を高くしたり低くしたりします。この差には意味があります。折れ線グラフにするとよくわかりますが、このデコボコに意味があり、これが周囲の評価だということです。このデコボコを見ていく、さらには、自分自身の評価と周囲の評価とのギャップをみていくことに意味があるのです。これが、一人ひとりが使う場合の使い方です。
ハイパフォーマーの波形というのがはっきりとあります。周囲の評価によるデコボコと、自分自身の評価によるデコボコがありますが、ハイパフォーマーの評価は、周囲が高く評価している箇所と、形が相似しています。自己認識と他者認識が非常に近いということです。これは、自己認識がしっかりとできているということです。また、「すごくできるんじゃないか」と評価されている人の波形は、自他の波形が相似しているだけでなく、周囲が高いと評価しているところの自己評価が周囲より高く、評価が低いところの自己評価は周囲より低くなっています。デコボコにメリハリがきいていると、スキルギャップという観点では、全体的に見て、周囲の評価の低いところはどうだという見方をしていきます。
360度診断と資質診断、パーソナリティ診断とを掛け合わせて行うとさらに効果的です。例えば、この資質診断では、コミュニケーション特性とかワークスタイル特性だけでなくビジネス行動の特性を44項目に分けて診断していきます。例えば、目標設定とか、チームワークとか、人材設定などの項目別に、それが得意か不得意かなどを診断するテストです。この人は潜在的に何が得意で何が不得意かが、ビジネス行動の項目としてみることができます。この項目と360度診断を同じ項目で調べると、得意・不得意の軸と、行動発揮できているかどうかの軸で表にすると、一人ひとりごとに、項目がプロッティングされます。得意だけれどできていない、不得意だけれどできている、というようなことが分かってきます。
例えば、これを管理職全員でやったときに、全員の共通傾向をこれで見ることができます。そこで、どこに手当てすればいいかが分かってきます。
3つ目のチェックリストは、これもシンプルですが、使い勝手のいいものです。課長・部長といった管理職全員にこのチェックを実施したりしていますが、PDCAを細かい項目に分解して項目化しています。例えば、目標をきちんと立てているか、それを共有しているかなどの項目に分けて、自己評価と上司の評価を書き入れてもらいます。上司の評価でできていないという項目には、何でできていないのか、姿勢なのか、能力なのか、経験なのか、といったことにチェックを入れていきます。それを集計すると、管理職の共通する行動上の問題が見えてきますし、個別の問題も出てくるので、これに対して手を打つことができます。これも行動課題を明確にするということでは取り組みやすい分析方法です。
4つ目は、もっと汎用的に使える、定量的なスキル分析ツールとして作ったものです。考え方はやはりシンプルで、ポストや階層といったジョブの側と、人材の側とに分けて、同じ物差しで図っていくためのものです。例えば、部長に必要なスキルが何かを物差しとして決め、その決めた項目で部長職を評価してスキルギャップを見るというものです。