投資対効果がデータでわかれば採用もリスクに賭けられる
守島 あともう一つ重要なのは、顕在化した経験はわかっても、人材の潜在能力を見ることが出来ていない点です。例えば、今の学生は「クラブのサブマネージャーをしていた」のが流行りらしいですが、そこで何を学んだのかが把握できていない。採用でも育成でも、人材マネジメントというのは、最終的には「賭け」だと思うのです。ポテンシャルのある人材に賭けるということです。賭けの勝率を上げていくのが人事の重要な課題です。それをやるためにテクノロジーを取り入れたらいいと思います。
民岡 リスクの大きさを知るために、相関関係を示すデータのようなものがあれば、よりリスクに賭けやすくなると思います。
守島 リスクの大きさを記録に残すと共に、例えば採用した人が入社後、どのようなキャリアを歩んでいったのか、どのような成果を出したのか、フォローした結果をデータとして見られるようになれば、リスクをとる採用ができるようになると思います。ひいては、それがバラエティに富んだ人材につながるのですが、今はそれが出来ていません。むしろリスクをどんどん減らそうという方向に動いており、結果として同質な人材が増えています。
民岡 人事システムなどにデータそのものは溜まっているのですが、その取り出し方法がわからなかったり、自分たちで分析しようとすると人手が足りなくて、てんやわんやになってしまうのが現状かと思います。
守島 財務の世界では、それがある程度、公式化されています。このプロジェクトにどれだけ投資すると、どれくらいのリターンが得られるのかが、確率的にある程度わかっているので、賭けていいかどうか意思決定ができる。本来は人事でも同じことができるはずです。
民岡 採用の世界では、いま「Recruiting is Marketing」が流行り言葉になっています。マーケティングでは、商品を売るためにどれくらいのキャンペーンを打ったらどれくらいのリターンがあるかデータを取れるわけです。ツールが発達してきたので、採用でも同じことが可能になってきました。上手くやっていけば相関関係がわかり、ハイリスクを取りにいける素地ができると思っています。
リクルーティングにおけるマーケティング・サイエンスというのは意外と進んでいないのです。マーケティングの世界では商品を売り込むためにどこをアピールポイントにすべきか、かなり精緻にやっているはずですが、採用の局面ではそれをやっていないのです。
民岡 IBM Kenexaの「Talent Acqu isition Suite」という採用管理の製品には、「Lead Manager」というオプション機能を備えています。それを使うと採用活動にマーケティング・サイエンスを取り込むことができるのですが、詳しいことはまた別の場でご説明したいと思います。
本日のお話しで、人事は「サイエンス」の視点を持って様々な変革を行い、チャレンジすべき時が訪れていると改めて感じました。どうもありがとうございました。