グローバルな人事評価とは?
グローバルな人材を採用した後は、フェアな人事評価をする必要があります。そのためには、一定期間の数値目標を設定すること。通常は1年ですが、更にそれを四半期ごとに区切って目標を設定することもあるでしょう。重要なのは、無理やりにでも目標を数値化するということです。人事評価の公平性を担保するには、数値化できないような事柄まで含めて無理にでも数値化することです。目標設定の仕方ですが、360度評価につながる、360度目標設定にすることが通常行われます。これは、私が在籍したグーグルをはじめ米国系企業が採用している人事評価の方法です。360度目標設定では、例えばAさんの目標を設定するとき、まず組織図の中でAさんを中心にして円を描きます。円は360度ですから、そこに上司、部下、同じ部門の同僚、それから一緒に仕事をする可能性のある近接部門の同役で職位が同じぐらいの人と言った四種類の人達が、円の中に入ってきます。その四種類の人達の合議のうえで目標を設定していきます。日本では、外資系の会社は無理な目標設定をして、最後には解雇するという伝説がまだあるようです。しかし、そんなことはありません。というのも、会社が達成する目標があり、それを達成するために各部門がやらなければいけないことがあるわけで、そのためにAさんがやらなければならないことが、ある程度ブレイクダウンの結果として出てくるわけです。もし、できもしない目標をAさんに押し付けるようであれば、Aさんだけでなく、いたるところで目標を達成できないという現象が起き、最終的に会社の目標も達成できないということになります。
ですから、たいていはリーチャブルゴール(達成可能な目標)というものを設定します。これは、8割のエネルギーで達成できるというところでゴールを設定しましょうという考え方です。この数値目標が達成できない場合は、解雇になる、と確かに規定されています。しかしこれも、単純な話ではありません。まずは四半期をやってみる。残念ながら何人かは四半期目標を達成できないことがあります。そうすると、先ほどAさんと一緒に目標を作った四種類の人たちが集まって、Aさんと一緒にリカバリープランを設定するのを手伝います。四半期目標を達成できなかった原因をみんなで考え、次のクオーターの目標を達成するためにどうしたら良いのか、これをやったらいいのではないかということを相談して立案していくのが、リカバリープランです。
それでも、次のクオーターも達成できなかったということが起こるかもしれません。そのときには、人事部が登場してきます。どんな話をするかというと、2期連続して達成できなかったのですから、Aさんのできることリストと、今のポジションが要求していることのリストとの間にミスマッチがあるのではないかという話です。そして、社内の他のポジションであればマッチングしませんかという相談をします。さらには、もしかすると社外のポジションだったらマッチングするかもしれませんね、という相談もします。その結果、3つめのクオーターの中頃で、Aさんご本人から辞表が提出されてきます。そのプロセスについても、人事部がリファレンスを含めて一生懸命お手伝いをします。こうしたプロセスを「解雇する」という言葉で表現しているわけです。
しかし、皆さん方には、やっぱり少しやりきれないという気持ちがあると思います。ただ気をつけるべきなのは、温情でそういう人を抱え込むと、仕事ができる人から会社を辞め始めます。なぜなら、会社という“お神輿”は重く、それを懸命に担いでいる人たちがいるんです。ただ神輿にぶら下がっているだけの人を切れない会社では、担いでいる人たちが「やってられない。ぶら下がっている人間の重みまで、自分たちが担ぐのか」という話になります。担いでいる人たちは、できることリストもしっかりしていますし、職務経歴書も見事です。切るべき人を温情で抱え込んでいると、仕事のできる人材を失っていくことになるわけです。