第1回 AI時代の採用はどうなるのか

採用とフォローアップの課題を解決するテクノロジー

民岡 守島先生からご覧になって、いまの日本企業の採用はどんなことが問題でしょうか?

守島 特に新卒採用に関しては採用活動の膨大な事務処理などに時間がかかりすぎ、その学生が本当に自分たちの会社に向いているのかという多面的なディスカッションが不足していることです。結果として、企業側の少数の人間とか一人、二人の面接担当者の主観で決まっている場合が多すぎる気がします。インターンシップがいいのは、いろいろな人が学生を見る機会があって、多面的な評価が得られるところなのです。

民岡 インターンシップは非常に有効だと思います。そしてOB・OG訪問も重要だと思います。

守島 OB・OG訪問がなぜ重要かと言えば、最終的には「会社」ではなく人が人を採用するからです。人に関する情報収集の手段として、人の目はとても有効です。ただ現在見ていると一部の会社では、OB・OG個人に負わされる責任が重すぎるように思います。ですからOB・OG採用もチームでやったらいい。学生に会うのは個人ですが、情報をチームで共有し、得たものを突き合わせて、あの学生はこうだねとか、私はこう見たという議論ができるといいと思います。そういう意味でもツールがあると便利でしょうね。
第1回 AI時代の採用はどうなるのか
民岡  IBM Kenexaの「Talent Acquisition Suite」という採用管理の製品には、「On Boarding(オンボーディング)」という機能があります。これは候補者や内定者に確実に必要書類を提出してもらうためのプロセス管理に加え、内定者同士のコミュニティをつくって情報交換する場を提供したり、企業側が候補者や内定者をフォローするという目的に使用することができます。このコミュニティを例えば大学ごとにつくることもできます。これにより、社内の人事担当者やリクルーターなど複数の人が、一人の候補者や内定者を見ることができ、結果的に多面的な評価につなげていくことができると思います。

守島 新卒採用について、もう一つ問題だと思うのは、採用後のフォローがされていないことです。現場に行ってから、3年目、6年目のフォローアップというのでは時間が空き過ぎです。もう少し丁寧に、本人からの申告と、会社側が情報を集める2WAYのフォローが必要です。新卒は入社して3年で3割が辞めると言われていますが、そこに至るプロセスで、本人が迷ったときに会社がフォローしてくれているかどうかが鍵です。それをやるためには、上司の観察だけに頼っていたのでは難しい。そこでテクノロジーの力を借りて、部下の誰かに危険信号が見えたらシステム上でフラグが立って、その情報をもとに上司が部下と話しにいくといった仕組みが、これからの人事には必要になってくると思います。

民岡 確かに危険信号を察知してすぐに対応する体制が必要かと思います。具体的な話は次回「従業員エンゲージメント」に譲りましょう。では、中途採用についての課題はどうでしょうか?

守島 多くの企業の中途採用は、言い方は失礼かもしれませんがいい加減だと思いますね。選考の基準は前述の通り「フィーリング・価値観の一致」と「スキル・能力」の2つがありますが、中途採用は後者にフォーカスして選ぶので、本当にその人の価値観などが企業と合っているのかといった部分を見るのが疎かになっています。そのため、せっかく採用した人材が辞めている。逆に、新卒の場合は価値観などを見ることはできても、経験やスキルについては社会人経験がないためあまり有効な基準にはならない。中途採用については両方の情報があるのだから多面的なマッチングをしていくべきです。両方の基準を実現していく努力をもっとしていかなくてはいけないですね。

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