「経営計画と連動したスキルマネジメント」
さらに、360度診断を資質診断と組み合わせると、より面白いものが見える。ここでいう資質診断はSPIのような心理テストの一種だと思っていただけばいい。これによってマネジメント適性を診断したうえで、ビジネス行動の傾向を見るため、資質診断で見る行動項目と同じ項目(リーダーシップやマネジメントなどの各分野で40項目ほど)で360度診断を行う。そして、横軸で見れば資質的な強みと弱みが、縦軸で見れば360度評価による行動発揮度がわかる形で、全体および各人別にいろいろな行動項目をプロッティングした分布図を作る。この分布図を4象限に分けると、「ポテンシャルが高く、できている項目」「ポテンシャルが高いが、できていない項目」「ポテンシャルが低く、できていない項目」「ポテンシャルが低いが、できている項目」は何かがわかる。この分析結果から、「ポテンシャルが高いが、できていない項目」と「ポテンシャルが低く、できていない項目」をできるようにするには、育成のやり方を変えなければいけない、というように考えていくわけだ。

「スキルギャップアナリシス」の考え方と方法とは

もう少し汎用的かつ全社的な分析を行うためのツールとしては、当社がご提供している「スキルギャップアナリシス」というものもある。初めに共通のものさしとなる「標準評価項目」のリストとスキルレベルの基準を決めたうえで、部長・課長といった階層別、あるいは営業部門の課長・生産部門の課長といったポジション別に、会社として求めるスキル(項目とレベル)を定義する。そして実際にそのポジションに就いている方々のスキルレベルを評価し、ギャップ分析を行い、ギャップを解消するための教育施策を立案するというのが、基本的なプロセスだ。
「経営計画と連動したスキルマネジメント」
スキルギャップアナリシスでできることは、まず、全社のスキルギャップ総量の把握だ。現在の経営計画を実現するために求められている必要スキル量(100%)に対し、全社および部長層・課長層といった階層別に「不足・適正・超過スキル量」がそれぞれ何%となっているかがわかる。階層別、年齢別、男女別、採用区分別、組織別などのスキルギャップ状況も詳しく見ていける。なお、育成の観点からは不足スキルにフォーカスするが、このアナリシスは、超過スキルを見ることで適正配置上の問題がないか考えていけることも特長だ。
 さて、分析結果からどのように育成施策に展開していくか。たとえば、「リスクマネジメント」「指導・育成」「経営意識」など20程度の評価項目をスキル不足順に並べると、「部長層ではこのスキルが不足しているから、早急に手を打つ必要がある」といったことがわかる。また、横軸を「一人あたりのスキル不足量が多い/少ない」、縦軸を「スキル不足人数が多い/少ない」とした分布図にこれらの評価項目をプロッティングし、4象限に分類すると、それぞれの項目に対して必要な施策の具体的な方向性が示される。「不足している人数が多く、一人あたりの不足量も多い」項目には集合研修を、「不足している人数が少ないが、一人あたりの不足量が多い」項目にはコーチングなどの個別指導を、「不足している人数は多いが、一人あたりの不足量は少ない」項目なら自己啓発支援を、といった具合だ。
 冒頭に申し上げた経営からの人材開発ニーズに対し、スキルギャップの分析・把握から、実践性の高い教育の実施や個別育成につなげていくこのアプローチは、きわめて有効だと考えている。ご参考にしていただければ幸いだ。
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