実は、「思う」「思わない」の比率以上に、「思わない」方の意見の書き込みが圧倒的に多くありました。
●「思わない」:就職活動が大学での勉学の妨げになることは間違いないので、できるだけ短い活動期間になる方法を考える必要はあるとは思うが、選考時期を後ろにすることとは全く関係が無いから。時期をずらしても水面下で動く企業は必ずあるので、本当にヨーイドンにしたいのなら、フライングした企業を罰して公表しないと無理。学生の就職環境を良くしたいのならば、就職活動にフォーカスして頑張らせるのではなく、学生の能力を上げるにはどうしたら良いかを考えるべき。優秀な人材を増やせば自然に採用も増える。優秀な人材が企業に入れば活性化に繋がる。さらに採用数も増える。国も元気になる。優秀ではない学生を無理やり企業にねじこんだところで、日本の産業は良くならない。(その他サービス)
全くの正論です。根本的な解決にはこれしかないでしょう。ただそれでも、すぐには大きく状況を変えられないこともあり、少しでも状況を改善させるために就職活動のフレームをどう変えるかの議論も必要だと思います。
●「思わない」:自分(理系:自然科学系)の経験からすると、学部4年の夏以降や修士2年の夏以降はまさに卒論や修論の山場であったと記憶をしています。いかに就職活動に真剣に取り組むと言っても、最終学年の夏以降に就職活動を行うとなると到底立ちいかなかったのではないかと思います。このことは論文提出が必須の文系学生の皆様でも同じような状況になるのではないでしょうか。夏の早い段階で内定をもらえるようであればなんとかなるのかもしれませんが、年度末ギリギリまで選考を受け続けた場合、論文の質が落ちてしまう(そういうことが続けば結果として学生の質も落ちていきかねないのではないでしょうか)か、せっかく内定が出ても審査に耐えうる論文にならず結果として卒業・修了できずに就職できないということが発生してしまうのではないでしょうか。また、採用選考時期自体が夏以降になったとしてもそのことが就職内定率の増加に寄与するという理屈がわかりません。(その他サービス)
私も同意見です。学業を本当に優先するのであれば卒業してから就職活動をするというところまで行かないといけないでしょうが、そうすると就職率の大幅低下は免れないでしょう。アメリカでは、2009年度新卒の就職率は19%だったそうですから。
●「思わない」:選考時期を夏以降にすれば、就職先の選択肢が減り、就職環境が幾分改善するかもしれない。しかしながら現在の学生の企業選びのポイントが大手企業・有名企業に目が向けられている以上、環境はあまり良くならない。時期の問題だけで片付ければ、逆に就職先が決められずに卒業後無就業が増える気がする。学生の意識を変えなければこの問題は解決できないと思います。(フードサービス)
学生の強い大手志向に問題があると私も思います。ただ、学生の大手志向は昔からそうだったので、今問題なのは、それがなぜ環境悪化に結びついているかですね。大学が増え学業の偏差値の低い大学生が大量に増えたにも関わらず、就職ナビなどで誰もが大手企業に手軽にエントリーできる就職環境に大きな問題があると、私は思っています。
●「思わない」:採用選考時期の問題ではなく、大学生が増えすぎたことおよび学力低下はなはだしいことに就職環境の悪化は起因していると考える。(化学)
先の「思う」の意見で「学生の就職環境を良くしたいのならば、就職活動にフォーカスして頑張らせるのではなく、学生の能力を上げるにはどうしたら良いかを考えるべき」とありましたが、まさに同じ問題意識ですね。
●「思わない」:仮に7月~翌年3月までの短期間に集中させたところで、根本的な解決にはならない。逆に就職先が見つからないまま、卒業する学生が増える。(中略)メリットを享受できるのは、大企業や人気企業のみであろう。学生側も視野が狭くなってしまう危険性がある。就職活動はいろいろな会社を知る機会でもあるのに、集中化することでその機会さえも学生から奪ってしまいかねないということだ。(運輸・倉庫・輸送)
就職活動を短期化することのリスクを明確に述べられています。確かに、学生が就職活動を経て成長する現場は私も少なからず目にします。
その他、紹介しきれないほどたくさんの意見を頂戴ましたが、すべて出すことはできず、いくつか下記に列挙いたします。また、別途資料として、すべてのコメントを掲載したものをダウンロードできるようにする予定ですので、少々お待ちください。
●「思わない」:就職環境が良いという言葉の指すところが曖昧ではあるが、仮に就職環境が良い=内定を得やすいという意味であればまったく関連性はないと思う。(化学)
●「思わない」:採用の長期化につながります。大企業を除いて、ほとんどの会社が影響をうけます。(機械)
●「思わない」:一部の人気企業にとってはいいかもしれないが、それ以外の企業や選考に落ちてしまった学生のリスタートを考慮すると就職環境はむしろ悪くなるのではないかと思います。
就職活動で学業がおろそかになるという意見があっての対応と思われるが、現時点でも勉強している人はしているし、してない人はしていないので、時期が遅くなったからと言って変わるものではないと思う。(機械)
●「思わない」:採用時期を統一する云々ではなく、そもそもの問題は、日本の教育事情(ゆとり教育、大学全入時代等)にあると思う。政策的に日本の教育を変えていかないと新卒学生の就職問題は解決しない。(紙・パルプ)
●「思わない」:春が夏へ数ヶ月後寄りになったところで、採用枠が増えるわけではない。むしろ、従来3年の10月から就活してても決まらずに卒業を迎える人が、4年夏以降のわずか半年少々で内定を獲ることが本当にできるのか?それに10~12月は、学生にとっても卒論の追い込み時期である場合が多いのではないか?そんな時期に短期集中型になった熾烈な就活と平行してできようはずもない。(商社/専門)
●「どちらかというと思わない」:選考時期を後ろにずらしても、内定を取れる学生、取れない学生は変わらない。内定を取れない学生の就職活動の終了時期が後ろ倒しになるだけだと思う。就職環境と、採用活動の時期にはそこまでの関係性は無い様な気が・・。今とは全体的な環境が異なるが、自分も2000年の就職氷河期と言われた時代に就職活動を経験した者として、選考時期が学生の内定の可否に与える影響は大した事は無いと感じる。(商社/専門)
●「どちらかというと思わない」:おそらく、インターンシップなど「選考」と言わない説明会等は3年次の夏頃に実施されることは変わらないと感じるため。結局学生を就職活動として拘束する時期は長くなるように感じる。大手商社などの企業からすると夏に実施しても良いと思うが、中小企業など大手企業に内定者を取られてしまう企業からすると、夏以降に内定辞退されると、それ以降に欠員募集する形では4月に間に合わない恐れもある。(情報サービス・インターネット関連)
最後に、「どちらとも言えない」意見をいくつか紹介します。これらを見ると、決してどっちつかずということではなく、問題意識のレベルは先に紹介した意見と同じところにあると思います。
●「どちらとも言えない」:あるべき論としては選考時期は遅らせるべきたと思いますが、企業全体の足並みが揃うとは思いにくいため、どちらとも言えません。学生にとっての競争相手が日本人学生だけではなくなりつつあることを考えると、現在の選考時期のままでも良いのではないでしょうか。学生にとっても早めに社会の厳しさを知ることで進路の変更が物理的に可能になるかと思います。(医薬品)
●「どちらとも言えない」:確かに今の就職活動は大学3年の10月から始まり、長い期間をかけてしまうことで、大学本来の学業に影響を与えていると思う。ただ、夏にしたら環境は良くなるかというと、そうとも思えず、就職氷河期と言われている今は、学生からすると夏から秋にかけての活動はかなりのプレッシャーになるのではと思います。今は業界によって採用時期が多少ずれていることもありますが、これを夏からにすると学生の選択の幅がなくなる恐れもあるのではないでしょうか。このような状況下で、夏からは学生の混乱を招くようなもので、企業、大学がしっかり連携していかないと時期を変えても環境が良くなるとは思えません。新卒の雇用に関しては政府も政策を打ってますが、このままだと働きたくても働けない若者が増えてしまいます。まずは雇用の確保こそが一番の環境になるのですが。(医療機器)
●「どちらとも言えない」:現在の状況は、学生にとって学生生活が3年生の秋から中断されてしまい、本来しなければならないことが出来なくなるため、選考が遅くなるのは賛成するが、反面、選考等の時期が集中してしまい、学生、企業の双方にとって企業研究の機会が減ってしまう。というリスクも発生する。(情報処理・ソフトウェア)
●「どちらとも言えない」:学生によって良くなったり悪くなったりすると思います。良くなる学生=優秀かつ志望先が明確な学生。短期間で内定を得られるため。悪くなる学生=秀でるものが少なく、志望先がまだ漠然としている学生。なかなか内定を得られないため、活動期間が長引く可能性が高く、卒業課題(論文や研究)にかける時間が現在より大幅に減ってしまうため。最悪の場合、卒業できなくなる。(食品)
皆さん、たくさんのご意見本当にありがとうございました。
いただいたご意見を見ていると、問題点が明確になってきたように思います。
次回は問題点を整理したうえで、選考時期問題に関する最終的な提言をまとめたいと思います。
(2010.12.06掲載)
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