イクメン推進企業 成功の秘訣とは~パネルディスカッション
シンポジウムの最後に、「イクメン推進企業 成功の秘訣とは」のテーマでパネルディスカッションが行われた。パネリストは以下の3名。・白河 桃子 氏(少子化ジャーナリスト/相模女子大学客員教授)
・大庭 薫 氏(ソニー株式会社 人事センターダイバーシティ開発部 統括部長)
〈「イクメン企業アワード2017」グランプリ受賞〉
・小林 元 氏(ヒューリック株式会社 取締役専務執行役員 総合企画部長)
〈「イクメン企業アワード2017」グランプリ受賞〉
・コーディネーター:羽生 祥子 氏(『日経DUAL』編集長)
まずグランプリ受賞企業2社から、企業の特徴や、男性の育児休業・育児参画を促進するための取組内容と労働時間削減・業務改善の取組内容、またそれぞれの効果について紹介があった。
●ソニー株式会社(東京都・製造業・16,659名 )
<企業の特徴・風土>
・従業員の約7割が男性エンジニアのため、若い男性が働きやすい職場風土づくりが重要課題
・1990年にフレックスホリデー制度(任意の時期に2週間の連続休暇が取得可能)を開始
これを機に、属人化していた業務を見直し仕組みづくりができたことで、現在の40代後半〜50代の管理職は「休暇を取ることは当たり前」という認識がある
・1959年から小学校へ上がる社員の子どもへの「ランドセル贈呈式」を実施
家族を大切にする企業文化が根付いている
<主な取組内容>
・育児休職と併用利用も可能な一律20日の有給休暇の付与
・啓発活動として、「Working Father’s Meeting」等セミナー・ワークショップを開催
・社内WEBサイトでのイクメンのロールモデル紹介
・単に労働時間を減らすだけでなく、イノベーションを起こし続けるためのソニーらしい働き方を実現させることを目的に、全社横断の働き方改革プロジェクト「じかんPJ」を実施
<主な効果>
・男性従業員の育児休業取得率51.1%(2016年度)
―取得者550名中85名が管理職、男性管理職で4回取得の実績もあり
・コア業務にかける時間が29%/月→46%/月に増加
・年平均残業時間を42.5%削減
●ヒューリック株式会社(東京都・不動産業・152名)
<企業の特徴・風土>
・中小企業のため、一人残らず活躍してもらうことが重要
・「ジェンダーレスな風土」を作ることに砕心しており、新卒採用は男女ほぼ同数の実績
仕事・家庭の両面での男女平等を重視
<主な取組内容>
・手厚い福利厚生制度((育児休業の最初の1か月を有給化、事業所内保育所、3人目は100万円給付となる出産祝い金制度など))
・「パパママ子育て支援ガイド」を子育て経験者の従業員(女性のみならず男性も)が作成
・会議の時短運営(事前に資料配布し、会議では質疑応答から開始する)
・全社員の出退勤時刻を10日ごとにチェックし、時間外労働を抑制
<主な効果>
・2016年度の男性従業員の育児休業は対象者8人中6人が取得(取得率75.0%)、管理職は対象者5人中4人が取得(取得率80.0%)
・平均時間外労働が年平均26時間で、ほぼ残業がない
・有給休暇取得率71.6%と高い水準を維持
働き方改革とイクメン推進の必要性。重要なのは評価と報酬の連動性
2社の取り組み紹介を受け、白河氏が働き方改革とイクメン推進の必要性について次のように述べた。「多くの企業が働き方改革の実施目的として挙げている「人材獲得」についても、女性の両立支援はすでに取り組んでいる企業が多いので「男性の両立支援」をすることで一歩抜きんでるのではないか。
時代の要請で、人口ボーナス期からオーナス期に移るにあたり、均質な人が長時間働くというやり方から、多様な人が多様な場所や時間で働くダイバーシティが起きている。家庭は「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ変化し、仕事は、男性が「ワンオペ稼ぎ」から解放され「チーム稼ぎ」へ変化していく。
働き方改革は経営課題、経営戦略であり、経営者の覚悟を問うものであると考えている。
制度から風土になるまで時間がかかるので、アクションチェンジを決めて始めることで、何をやっていいかわからない人もまず巻き込むことができる。IT投資などもすることになるので経営マターとなる。
働き方改革やイクメン推進の取り組みを形骸化させないためには、評価と報酬とを連動させることが重要。いきなり評価の改変が難しい場合は、表彰制度を取り入れるだけでも有効ではないか。
結局イクメン推進は「数」の追求より「何のためにやるのか」という目的が大切であると考える」