部下の価値観を尊重し、受け入れることを学ぶ!

「戦略的OJTプログラム」の大きな特徴は、上司と部下がペアになり、課題を決め、部下がそれに取り組み、上司はサポートするという点だ。つまり、実際にOJTをやりながら、上司は育成のためのスキルやマインドを身に付けていくのである。そこで、今回、「戦略的OJTプログラム」に参加した二組のペアに、どのようなものだったのか、どのような点が成長したのかなどを訊いた。

岩本 俊介 日産化学工業株式会社 物質科学研究所 医薬研究部 主任研究員

林 圭史 日産化学工業株式会社 物質科学研究所 医薬研究部

今回、戦略的OJTプログラムに上司、部下として参加された岩本さんと林さんにお話を伺います。このプログラムを通して何に取り組むのか──課題設定に時間をかけたようですね。

 「キックオフ」のなかで話し合い、成長課題を設定することになったのですが、正直時間が足りませんでした。一応、その場では一致した感じはあったものの、部署に帰って話をしてみると考えが違うことに気付きました。

 私もそうです。あの場で納得感を形成するには短かったですね。

もう少し時間が欲しいと思いながらキックオフミーティングが終わり、その後、どのような風に納得していったのですか。

とことん話し合いました。時間はかかりましたね。毎週金曜の午後いっぱいを話し合いに当てたのですが、ほとんどは考え方や価値観が違うということを確認し合うための時間でした。

 最終的に成長課題は「部下育成」ということになったのですが、私には最初、それが重要とは思えませんでした。私が研究者ということもあるのでしょうが、人は自己鍛練によって成長していくもので、他の人に何か言われて成長していくものではないと考えていたからです。

 育成は必要ということを繰り返し言ったのですが、林さんの話に同じ研究者として納得する部分もあり、そこが難しいところでした。また、育成が大事だと林さんが考えるようになってからは、林さんの後輩との接し方が自分とは異なり、この後、どのようにフォローすればいいのか悩むようにもなりました。

課題が決まるまで、どのような話をされたのですか。

 いろいろと話しました。仕事のやり方、考え方、ひいては生まれ育った環境の違いといったことも話し合い、最終的に部下育成のスキルやマインドを上げることが必要であるのではないかということになったわけです。

 正直、最初は自分の価値観に従わせようという気持ちが強かったですね。それが、お互いの生い立ちを語れるくらいに話し合い、次第に林さんの価値観を認めようという考えに変化しました。
重要なのは考え方よりも、どうしてそう考えるのかという背景ですよね。お互いに、これまでのことをいろいろと振り返り、話し合って、どうしてそういう考え方なのかを理解し合う作業を繰り返しました。

 その結果、無理に歩み寄る必要はないし、お互いの価値観を大事にしながら、林さんは林さんらしく部下を育成すれば良いと考えるようになりました。あの過程を振り返ると、育成についてどう考えるかは、林さんの課題であると同時に私の課題でもあったように思います。

プログラム全体で、他に印象に残っていることはありますか。

 「人材育成ゼミ」で、他の参加者から「もう一人の岩本を作りたいのか」と言われたことが印象に残っています。
参加者には、それぞれ部下を成長させたいという気持ちがあり、目的は同じでしたから、少々厳しいことを言われても不思議と不快には感じませんでした。
自分では、そのようなことをしているつもりはなかったのですが、知らず知らずのうちに、自分の価値観を林さんに押し付けようとしていたんですね。考えさせられました。

 私が印象に残っているのは、中間発表の時に部下だけで集まった分科会ですね。それぞれの課題や状況を確認し合い、意見交換をしたのですが、「部下育成」という課題には大変プラスになりましたね。

全体を振り返って、どのような点が良かったですか。

 繰り返しになりますが、人には多様な価値観があり、それを変えさせる必要がないことに気付いたことですね。それと、林さんの育成に対する考え方が変わり、実際に下の者に対する育成を行い、成果が上げられたという点です。

 年齢的にも研究一本でいく年齢ではなく、悩む時期にさしかかっているところでしたので、人を育てる重要性に気付かせてもらえたことを感謝しています。このプログラムを通して、相手の想いを受け止めないと自分の想いは伝わらないことを痛感しました。

戦略的OJTプログラムを実施したことにより、組織全体が変わるとか、新しいものが生み出せるとか、そんな期待感はありますか。

 すごく期待しています。今回、参加した上司同士なら人材育成について同じ目線で語り合える。これが広がっていけば、様々な場面で変化が起こるのではないかと思います。

 普段の業務のなかでは、気付けないことに気付けたわけですから、こういう研修が定期的にあればいいと思います。今度は上司の立場でこのプログラムを受講したいですね。

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