労働保険、社会保険の仕組み(社会保険編)

健康保険は、労働者とその被扶養者の業務外の傷病のほか、死亡、出産に関する保険給付を行う制度です。原則として、全ての法人事業所、5人以上の従業員を使用する個人事業所は、健康保険の適用事業所という扱いとなり、この適用事業所に使用される者は被保険者とされ、健康保険へ加入しなければいけません。

社会保険は健康保険と厚生年金保険がセットになっている

 健康保険は、労働者とその被扶養者の業務外の傷病のほか、死亡、出産に関する保険給付を行う制度です。

 原則として、全ての法人事業所、5人以上の従業員を使用する個人事業所は、健康保険の適用事業所という扱いとなり、この適用事業所に使用される者は被保険者とされ、健康保険へ加入しなければいけません。
 なお、適用事業所が法人の場合、代表取締役を含む取締役は、法人に使用される者として被保険者になり、適用事業所が個人事業の場合は、個人事業主は使用される者に該当せず、市町村が運営する国民健康保険等に加入することになります。

 健康保険では、被保険者に扶養される者(被扶養者)も保険給付の対象になります。
 被扶養者は、被保険者によって生計を維持する親・祖父母・配偶者・子・孫・弟妹、被保険者によって生計を維持し、被保険者と同居する三親等内の親族などです。(健康保険法3条7項)。
 ただし、年間収入が130 万円(60 歳以上の者や一定の障害者は180 万円)以上ある場合は、被扶養者になれません(H5.3.5保険発15号)。

 ちなみに被扶養者の加入要件について、10月1日から従業員501人以上の企業で、週20時間以上働く方などにも対象が広がる事から、これまでの要件より範囲が拡大されます。

 健康保険制度での給付で身近なのは、医療機関での医療費の一部負担でしょう。
 他には、入院時の食事療養費用の給付、入院時の生活療養費、保険外診療の費用補助、訪問看護療養費、自己負担限度額を超えた場合の高額療養費、就労できず賃金が支払われない際の傷病手当金、出産時の出産手当金・出産育児一時金などがあります。
労働保険、社会保険の仕組み(社会保険編)
 厚生年金保険は、健康保険制度とセットになっていますので、健康保険への加入=厚生年金保険の加入となります。
 加入要件は健康保険制度と同じですが、納付する保険料は、将来支給される老齢年金の受給権を満たすためのものとなり、また障害年金や遺族年金の元となります。

 保険料は、保険料の計算元となる標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を乗じた額を労使が折半し負担します。健康保険の保険料率は都道府県ごとに設定され、厚生年金保険の保険料率は平成28年9月~平成29年8月まで18.182%となっています。

40歳以上は介護保険がある

 40歳未満の場合は、上述の健康保険と厚生年金保険がありますが、40歳以上の場合は、これに介護保険がプラスされます。

 介護保険は、身体上や精神上の障害により、入浴、排泄、食事等について要介護状態になったり、日常生活の基本動作について要支援状態になった場合に、本人ができる限り自立生活ができるように保健・医療・福祉サービスを提供することを目的とした社会保険制度で、平成12年4月より施行運用されています。

 各保険サービスの提供は市区町村が行っており、保険料の徴収は年齢により異なります。65歳以上は市区町村が所得に応じて定めた保険料を年金から天引きする形を原則とし、40歳以上65歳未満は加入している医療保険の保険料と併せて徴収します。

介護の給付サービスを受けるには認定が必要

 介護保険の保険給付サービスを受けるには、本人または家族が、市区町村による要介護や要支援の認定を受けなければならず(介護保険法19条、27条、32条)、認定を受けた場合は、要介護状態(要介護1~5)、もしくは要支援状態(要支援1~2)に応じて保険給付の内容が決められます。

 要介護状態と認定された者には「介護給付」が、要支援状態と認定された者には「予防給付」が支給されます。また、これら給付の他に、要介護状態または要支援状態の軽減、もしくは悪化の防止のために市区町村が独自に行う「市町村特別給付」もあります(介護保険法18条)。

 これら給付を受ける場合は、利用したサービス費用の9割が介護保険でまかなわれ、残りの1割を自己負担することになります。また、介護状態の認定の種類によってサービスの利用限度額が決まっているため、利用限度額を超える利用分は全額自己負担になります。

 介護保険は、会社側からすると保険料の徴収のみが目立ちますが、上記のような各種サービスを提供する元となっているのです。

 次回は、「職場の安全と使用者責任」についてお伝えします。


※本文中の法律についての記載は、平成28年10月7日現在の情報です。