私は、就活生にアンケートをした就職人気企業ランキングにはあまり意味がないと思っている。あれはすでに就職したビジネスマンが「自分の会社は何位だろう?」「ライバル会社はどうだろう」などとおもしろがるには意味がある。違う会社に就職した学生時代の友人と、酒の席で話題にするのにはいいかもしれない。しかし、それ以上の意味があるだろうか。そもそも企業について知らない学生が投票しているのだから、企業の実力を反映したものにならないのは当たり前だ。
就職人気ランキングではなく転職人気ランキングを参考にしよう!

 しかし、就活生は人気ランキング上位の企業ほどいい企業だと思いこんでいる。「大学入試の偏差値ランキングとは違う」と言ってもなかなか理解してくれない。また、子どもが人気企業に就職することを望む母親は少なくないようだ。それは、母親同士が集まった時に自慢できるからだ。内容はいいが無名のBtoB企業よりも○○銀行と言えた方が、鼻が高い。

 文化放送キャリアパートナーズと東洋経済新報社が共同で調査した「2015就職ブランドランキング300」(週刊東洋経済2014年3月1日号に掲載)では、ランキング1位が三菱東京UFJ銀行。前年の調査でも1位だった。上位10社のうち5社が金融で、外資系企業は1社もない。メーカーは明治グループの1社のみ。
 日本企業は物づくりが強かったのではないのか。日本の金融はそれほど世界で強かったのか。ランキングは突っ込みどころだらけだ。

 一方で、転職人気ランキングは学生が企業を選ぶ際の参考になると思う。ビジネスパーソンというビジネスの玄人が評価する会社ならば、優良企業といえると思う。
 私はインテリジェンスが6月に発表する転職人気ランキングを毎年チェックしている。まだ6月までは時間がある、と思っていたら、2月下旬にマイナビが「転職経験者が選ぶ!もう一度転職するなら転職したい企業ランキング」を発表していることを知った。
 早速見てみると、こちらのランキングでは1位がトヨタ自動車。世界トップの自動車メーカーで、2014年3月期の営業利益は前期比82%増の2兆4000億円となる見込み。技術力でもダントツに優れている。トヨタ自動車が1位というのは簡単に納得できた。
 上位10社を見ると、メーカー、しかも自動車の人気が高い(4位本田技研工業、7位日産自動車)。学生ランキングでは自動車は上位に入らない。外資系ではグーグルが3位にランクイン。上位10社に金融は1社も入っていない。

 ここまで書いて、就職人気ランキング上位の常連だった日本航空が、2010年1月に会社更生法の適用を申請したことを思い出した。就活生には就活仲間の評価ではなく、ビジネスマンの評価を参考に企業選びをしてほしい。


東洋経済HRオンライン編集長 田宮 寛之

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