「紅一点じゃ、足りない」のキーワードをご存知だろうか?これは、内閣府男女共同参画局が毎年発表している女性の活躍を推進するキャッチフレーズだ。13年前から毎年新しい標語が発表されているが、おそらくあまり知られていない。
女性の活躍・未・推進リスク

 しかし、「女性活用」「女性活用支援」「女性の管理職比率促進」など、もっと女性が活躍できる社会にしようという流れは、確実に行政、企業、学校などあらゆる組織で重点施策になってきている。このような潮流について経営者を始め、マネジメントチームや、そもそも女性が少ない組織の男性の本音はどこにあるのだろうか?

 多くの組織で女性が男性に比べ指導的な立場にいる率は少ないのが現実だが、決して今に始まったわけではなく、何年も前から言われていることである。そして一部の組織を除いて、現状は決して女性が活躍できるように大きな変化があったわけではない。
 しかし、これからは女性が活躍できない組織はリスクを抱えることになりそうだ。つまり、女性の活躍・未・推進リスクになるというわけである。そもそも、政府が女性活用に本格的に着手し始めたのは、さまざまな見方があるが、2009年に1つのポイントがある。この年、課長相当職の女性比率が、国際平均の11.9%に対して日本は6.9%という調査結果が出た。これを受けて、国連女子差別撤廃委員会が日本に対し、具体的な女性比率の目標を定め施策を進めるようポジティブアクション促進を勧告したのである。そして、2012年、自民党は「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする」という政党公約を掲げた。
 2013年4月の安倍首相の成長戦略のスピーチで、「待機児童解消加速化プラン」「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」「子育て後の再就職・企業支援」の3つを打ち出した。さらに同年6月、政府は日本再興戦略の中で、3年間の育児休業や短時間勤務推進、待機児童解消や、参議院選挙公約で女性活躍の支援を掲げるなど、続々と施策が打ち出されている。
 このように、政治の力によって、強力な女性活用支援が進められているが、これは日本だけのことではない。例えば、米国もニュージーランド、スウェーデン、ノルウェーなどに比べると女性の活躍が進んでいるわけではなく、オバマ政権になりポジティブアクションを強力に進めているのである。世界経済に大きな影響力がある、史上初のFRB女性議長としてジャネット・イエレン氏を就任させたのはその象徴とも考えられる。勿論、政治の世界だけが盛り上がっているわけではない。

 「なでしこ銘柄」という株の銘柄がある。これは2012年から経済産業省が東京証券取引所と共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を選定し、なでしこ銘柄として発表するようになった。これらの銘柄は、他の銘柄と比べ、株式評価においても優れていることが認められている。これは、安倍政権が「成長戦略の中核」とする「女性活躍推進」の取組の1つである。「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に対して、「女性活躍推進」に優れた上場企業を魅力ある銘柄として紹介することを通じて、そうした企業への投資を促進し、各社の取組を加速化していくことを狙いとしている。
 また、女性活躍を推進する企業のすそ野を広げるという点で、経済産業省が昨年度より進めている「ダイバーシティ経営企業100選」との相乗効果も期待されている。

 このような、政府の動き、グローバルの流れ、株主の影響など、女性の活躍を推進する動きは、企業環境をとりまく、ある種の外圧のようなものとなっている。つまり、女性の活躍推進は社会全体の潮流であり、この流れに逆らうわけには行かないと考えるべきだ。そして、この流れに仮に逆らえば、もしかするとその企業はリスクを負う可能性がある。
 そのリスクとして3つ考えられる。それは、
 1.株価の差別化
 2.ブランドの差別化
 3.採用の差別化
である。
 なでしこ銘柄のように、株価としても評価指標が発表され、女性の活躍ができているかどうかが株価で評価されるようになった。同業や業界単位では、最も女性の活躍を行っていることをアピールする企業も現れるはずである。そのため、ブランド価値として競合と差別化されることにもなるだろう。また、採用市場では女性から就職対象企業として注目されることになり、推進が出来ていない企業は遅れをとることになる。

 このように、外圧による女性の活躍推進の大潮流により、男性中心の社会構造は明らかに変わりつつある。この流れに乗れない企業は益々リスクを追うことになるだろう。


HR総合調査研究所 客員研究員 下山博志
(株式会社人財ラボ 代表取締役社長/ASTDグローバルネットワーク・ジャパン副会長)

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