全6回にわたり、日本企業が今後労働市場から求められる「働きやすさ」をどのように「見える化」し、持続的な企業価値向上につなげていくべきかを考察・提案する連載コラムの第6回目。

ついに最終回の本稿では、健康経営を支える外部リソースとして、助成金・税優遇・低利融資その他各種の支援サービスに焦点をあてて解説していく。
働きやすさの「見える化」(6)健康経営で社員も会社も元気になる!

国・自治体や民間団体の支援策を有効活用~健康経営の総仕上げ~

*前回記事はこちら

前回までの記事において、健康経営が求められる背景やその概要、具体的な業種や職種にあわせた実践例、対策にあたり特に高度な専門性を要するメンタルヘルスケアと感染症予防、といったトピックについて解説してきた。

これらをふまえ、健康課題の抽出・分析、経営計画・方針への位置づけ(マネジメント層の理解と関与)、産業医をはじめとした産業保健スタッフ等による社内の体制づくり、そしてそれらの評価・反省・情報発信といったPDCAサイクルを循環させていくことが、健康経営の一般的なフローである。

しかしながら、連載当初でふれたようにあくまで健康経営は【健康+経営】もしくは【健康×経営】すなわち、健康への取り組みが経営に資する、相乗効果を生む、といった経営的な視点が欠かせない。

そのうえで、大企業に比べ相対的に経営資源が限られがちな中小企業にとって、必ずしも社内リソースだけですべての取り組みを賄えるとは限らない。
また、せっかく健康課題を抽出・分析し、解決のための計画を立案したとしても、いざ実行するための人的・金銭的コストが壁となり、健康経営そのものの広がりが阻害されてしまうケースも想定される。

そこで最終回の本稿では、視点を社内から社外へと移し、そうした人的・金銭的コストを軽減、もしくは健康経営の取り組みを客観的に評価する仕組みについて解説していく。

まずは厚生労働省、都道府県労働局所管の助成金のうち、健康経営に資するものを例示する(詳しい受給要件は当局へ要照会のこと)。

1)職場意識改善助成金
いくつかのコースに分かれており、労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、または最近注目されている勤務間インターバルやテレワークの導入等に要した経費について助成するもの。上限額は個々のコースごとに異なるが、いずれも所要経費の最大3/4が助成される。

2)職場定着支援助成金
雇用管理制度助成コースにおいて、法定外検診または法定外検診項目の受診の制度化について助成するもの。制度化にあたっては10万円、さらに離職率や生産性の改善につき一定の要件を満たせば72万円が助成される。

3)キャリアアップ助成金
健康診断制度コースにおいて、有期契約労働者等法定対象外の労働者への健康診断の制度化・適用について助成するもの。制度化・適用にあたっては38万円、さらに生産性の改善につき一定の要件を満たせば10万円が助成される。

また、健康経営に取り組む法人向けに、金融機関や信用保証協会による低利融資や保証料の優遇等のインセンティブが日本各地に広がりを見せているほか、自治体においてもその取り組みの水準を認定・顕彰する動きが活発になっている(下表参照)。
働きやすさの「見える化」(6)健康経営で社員も会社も元気になる!

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