近年、従業員の副業を条件付き、又は無条件に認める企業が増え始めている。その多くは、ヤフー・Google・サイボウズなどのIT業界であるが、その流れは他の業界にも広がっている。
今年始めには、ロート製薬が副業を推奨するとの方針を打ち出し、話題になったのは記憶に新しい。
 日本の労務管理においては、終身雇用に伴い会社に対する忠誠心を軸に考えられており、自社以外での副業は禁止の対象とされてきた。いまだに就業規則で禁止する企業も多いし、顧問先でも大概は禁止条項がある。
このような中、副業を推奨する企業が現れたのはなぜだろうか。
副業、解禁!?

副業禁止の根拠

そもそも、就業規則により副業を禁止することは可能なのだろうか。
従業員が拘束を受けるのは、就業時間のみであり、就業時間以外の時間をどのように過ごすかは従業員の自由に委ねられているのが原則である。

とすると、就業時間外に副業を禁止することは難しいと考えられる。
但し、労務の提供に支障を来たすおそれがあると考えられる場合には、禁止することは可能であろう。
企業は、長時間の労働による疲労により本業に支障を来す可能性、秘密情報の漏えい防止等を理由に副業を禁止してきたという背景がある。

副業のメリット

【人材の確保】
   近年、労働人口の減少により、採用に要するコストが増加している。採用活動にあっては、他社との違いを明確に打ち出さなければ必要とする人材を確保することが難しくなってきており、副業が可能であることが、求職者のメリットとして受け取られる。また、副業を認めることにより、多様な働き方を従業員に提供することにより、社員満足度を高め、離職者の減少を図ることが可能となり、人材確保につながる。

【多様な経験の集積】

 副業を認めることにより、企業の枠にとらわれない多様な経験・知識を得ることができ、あらたなサービス・商品の開発や業務の改善等につながる可能性が高い。また、会社生活とは異なる人脈が生まれ、新たなビジネスが生まれる可能性もある。

副業というと、就業時間後、他の会社にてアルバイトを行うようなイメージが強い。しかし、インターネットの普及により、そのイメージは崩れ、誰もが、時間や場所を選ばず副業を行うことが可能となってきている。
そのような状況では、副業の範囲があいまいになり、これまでのように、就業規則により、一律に禁止するのは難しくなるだろう。

前述のように副業を認めることによるメリットもある。どこかの知事もおっしゃっていたが、日本人はやらない・できない理由を探すのには長けている。今後は、副業を届出制・許可制にする等、リスクを最小限にしつつも、多様な人材が集まり、イノベーションが起こるような企業風土にする一助として、副業を推奨してもいいのではないか。

社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭

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