2015年11月24日に厚生労働省は、厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムを無償公開した。当初は秋ごろ公開と言われていたが、11月中旬公開と法施行の直前ギリギリになったようだ。ではこの厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムを利用して、ストレスチェックが可能だろうか?
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムが公開

そのサービスは「ストレスチェック制度」に本当に対応していますか?

答えとしては、ストレスチェック単体は導入可能だ。しかしながら今回義務化されたのはストレスチェック“制度”であることに注意が必要である。ストレスチェック制度では、医師等による関与が必須となっている。ストレスチェックは、紙もしくはwebによるアンケートのようなものを指すが、ストレスチェック制度となると、衛生委員会での調査審議、社内規程の整備、相談窓口の整備、労基署への報告等一連の作業全体のことを指すのだ。

もし、ストレスチェック制度に理解があって本ソフトの操作もやってくれる産業医がいれば、厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムを利用してストレスチェック制度義務化に対応することが可能と思われる。しかしながら、実際にはそのような産業医が少ないというのが現状だ。また、医師等の実施者としてのかかわりはもちろん、面接指導する医師、労基署に報告する産業医と今回義務化されたストレスチェック制度では、3種類の医師が必要となるのだ。医師をきちんと確保できるかがストレスチェック制度の導入の成否を分けると思われる。

さらに、ストレスチェック前後の工程で、衛生委員会のマネジメントしかり、実施後の職場改善活動、研修の実施など場合によっては社外の専門家が関わらないといけない部分が多分にある。システム業者が提供するストレスチェックサービスでは、ストレスチェックはできるが、ストレスチェック制度の義務化対応はできないのである。

真に制度を機能させるために

企業は、医師の確保や、ストレスチェック前後のマネジメントまで考えないといけない。ストレスチェック単体を実施しても従業員のメンタルヘルスが向上するわけではないのだ。例えば社外相談窓口の設置や管理職研修、セルフケア研修の実施を同時にすることによってはじめて機能する制度であると言える。

その意味では、今回公開されたソフトを上手く使いながらストレスチェック制度義務化に対応していく、場合によっては社外の専門家に相談するというのも手かもしれない。社外の専門家に相談する際は、ストレスチェックの導入をしてくれるのか、それともストレスチェック制度の導入をしてくれるのかをよく確認したほうがその後のトラブルが少なくなるだろう。当然予算に余裕があればストレスチェック制度の導入支援をしてくれる方を選ぶことをお勧めする。当事務所でもストレスチェック制度の導入を通じて、頑張る人がより頑張れる環境作りの手伝いをしている。


Office CPSR臨床心理士・社会保険労務士事務所 代表 
一般社団法人ウエルフルジャパン 理事
産業能率大学兼任講師
植田健太

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