人には感情がある。そのため、人が創る組織にも組織感情とも言うものがある。それを無視しては人も組織も動かない。「仕事に感情論を持ち込むな」と言うが、感情から目をそらしてはいけない。立場が上でも下でも悪いことをしたら、「悪かった」と謝る必要がある。それがけじめである。そのような『信頼』を大切にしようとしない社員が、チームや部署だけでなく、会社全体・組織全体を壊していく。いわゆる、ブラック社員化である。
勇気付け合う信頼関係が短所を改善する
ブラック社員がリーダーや管理職に就いたと仮定してみる。結果、裸の王様になるだろう。なぜなら、部下との信頼関係を築けないからである。部下は裸の王様としてのリーダーや管理職へ表面的には従うが、陰では不信感を募らせていく。会社に利益をもたらす有益社員ほどその気持ちは強いであろう。そのような不信感が積もり積もって離職となるのである。最悪の場合、パワハラによる労災認定を受け、会社へ多大な損害を与える。次に、ブラック社員が部下に就いたと仮定してみよう。ベースとしての『部下力』に乏しいため、育成しにくく、上司の生産性に大きな影響が出てくる。そこで、生産性を落とさないのが上司の務めというのは乱暴すぎる。上司も人間である。部下からの甘えや依存は一切通じない。
現行法下では、このような『信頼』を生み出そうとしない社員ですら、たやすく解雇ができないのだから、金銭による解雇制度の確立が必要と考えるのも仕方ないだろう。経営者としては、断固たる決意のもと会社を続けていかなくてはならないからである。
もちろん、チームリーダーや管理職の選定過程を見直し、登用基準を創り直すことも必要である。人は少しずつ成功体験を積み重ねて自信をつけ、プロフェッショナルとなっていく。短所に気付いてもらい、改善させ、勇気付ける厳しさも必要だ。その積み重ねが本人にとっても糧となるのである。しかし、どのような言葉が相手を勇気づけるのかという難しさがある。
その答えの一端は、全員がプロセスに関わることにある。なぜなら、過程に関わることから信頼関係が生まれるからである。そのような信頼を土台にして、大きな利益を生み出していくのが会社の存在意義であろう。
また、ブラック社員化を防ぐにはそもそもの入口である、採用において、だれが、どのように、何を基準・軸として、採用していくのか、という明確な基準があるかどうか、見直していく必要があるだろう。ほかにも、採用と育成はワンセットであるため、育成においても同様に、だれが、どのように、モチベーションを向上・維持させていくのか、という明確な役割や職責が必要である。
経験や勘も必要であるが、それだけだと、組織の置かれている現状が数値として把握できなくなり、ブラック社員化は防げないし、解消できない。
アーネスト・ハート
社会保険労務士 竹内 元宏
社会保険労務士 竹内 元宏