株式会社リンクアンドモチベーションは2022年12月6日、「優れた経営層の特徴」に関する研究結果を発表した。調査期間は2015年1月~2021年12月で、同社が提供するエグゼクティブサーベイを実施した、累計84社1,587名から回答を得た。調査から、部下から高評価・低評価を受ける経営層の特徴や、優れた経営層に至るまでの段階などが明らかとなった。
“優れた経営層”は「理念の浸透・実現」に着手か。低評価の経営層は「ルール遵守」を求めるものの組織づくりが不十分な実状

部下からみた経営層への「期待度」、「満足度」のスコアを“偏差値”として算出

人的資本経営や多様な働き方の推進など、企業を取り巻く環境が変化している近年、優れた経営者の特徴とはどのようなものなのだろうか。リンクアンドモチベーションの研究機関であるモチベーションエンジニアリング研究所は、「優れた経営者の特徴」を探るべく、経営者のマネジメント状態を診断するためのエグゼクティブサーベイを実施した。

同サーベイの質問項目は、部下から見た経営層の全体的な満足度を示す5項目の「総合満足度」(専門性・魅了性・返報性・一貫性・厳格性)と、マネージャーに求められる「4機能」(Encourage・Evaluation・Economics・Education)から構成されるものだ。サーベイでは全40の質問項目に対し、部下の経営層に対する「期待度(何をどの程度期待しているか)」、「満足度(何にどの程度満足しているか)」を尋ねている。また、その回答を「非常に期待(満足)している:5」から「全く期待(満足)していない:1」までの5段階で数値化。すべての項目の期待度・満足度のスコアを基に、経営層の“偏差値”として総合スコアを算出している。
“優れた経営層”は「理念の浸透・実現」に着手か。低評価の経営層は「ルール遵守」を求めるものの組織づくりが不十分な実状

評価が高い経営層ほど「理念の浸透や実現」に着手できている傾向

同サーベイの結果に基づき、同研究所は、総合スコアが上位5%、上位5%~20%、上位20~50%、下位20~50%、下位5~20%、下位5%である6群に分類し分析を行った。また、各群内のマネジメントサーベイの40の質問項目の平均値から、母集団として各項目の偏差値を算出し、得られた偏差値をランキング化している。さらに、上位5項目を抽出し「優れた経営層」の特徴の分析を試みている。

まず同社は、上位の3群の結果を分析している。すると、総合スコアが上位5%に位置する経営層において偏差値が高かった5項目を抽出すると、「潜在的脅威への対策」、「理念の浸透方法の工夫」、「ナレッジの共有」、「リスクに対する予防策」、「理念と評価の接続」となった。

また、総合スコアが上位5%~20%に位置する経営層において高偏差値が得られた5項目は、「理念の浸透方法の工夫」、「言行の一致」、「評価基準の明示」、「理念と評価の接続」、「環境変化への対応」があがった。

総合スコアが上位20~50%に位置する経営層では、「一体感の醸成」、「効率的な組織体制」、「ビジネスプロセスの改善」、「潜在的脅威への対策」、「事業課題の把握」が上位5項目となった。

同研究所は、理念を掲げるだけでなく、実際の評価・制度にまで接続できることなど、「長期かつ広い視野での脅威やリスクへの対応を行っていること」や「環境変化をとらえて組織を柔軟に変化させていること」などが高評価につながっていると考察している。
“優れた経営層”は「理念の浸透・実現」に着手か。低評価の経営層は「ルール遵守」を求めるものの組織づくりが不十分な実状

低評価の経営層は「要望に伴った事業づくり・組織づくり」ができていない可能性も

一方で同社は、下位3群における「経営者の特徴」の読み解きも試みている。すると、総合スコアが下位50%に位置する経営層において、偏差値の高い5項目を抽出すると、「社内連携の活用」、「オープンな風土づくり」、「社外のネットワークの活用」、「事業に関する法令順守」、「葛藤の解消」があがった。

また、下位5%~20%に位置する経営層では、「労働時間管理の徹底」、「社内ルールの遵守」、「信賞必罰の徹底」、「社外ネットワークの活用」、「標準化の推進」があがった。

総合スコアが下位5%に位置する経営層では、「高い要望の提示」、「事業に関する法令順守」、「社外ネットワークの活用」、「社内ルールの遵守」、「利益意識の徹底」があがった。

これらの結果を踏まえ同社は、総合スコアの低い経営層では、ルールの遵守や効率性に対する厳しい姿勢、および利益創出に対しての高い要望を出すものの、事業づくりや組織づくりができていない可能性があると考察している。あわせて、「部下から評価される経営層」は、以下の1~6の段階を踏んでいると分析している。

1.ルール遵守や利益創出への高い要望の提示
2.ルール遵守や効率性への厳しい姿勢の明示
3.社内外のコミュニケーションのハブ機能の発揮
4.課題や潜在的脅威を踏まえた、事業成果の創出に向けたプロセス・体制づくり
5.理念の評価・制度への接続と環境変化への対応
6.理念の評価・制度への接続と長期・広い視野での脅威やリスクへの対応

本調査から、高評価を得ている経営層は、理念の浸透および実現に着手している傾向が明らかとなった。一方で、これらを実施できている経営層は上位20%程度だったこともわかった。「理念の浸透・実現」に至るまでには、ルールの遵守や事業成果の創出などから段階的に取り組む必要があるようだ。

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