経済産業省は2022年5月17日、「令和3年度大学発ベンチャー実態等調査」の結果を発表した。調査は、「設立状況調査」、「実態等調査」、「ヒアリング調査」の3段階により、2021年11月~2022年2月にかけて行なわれた。調査対象機関は、大学、高等専門学校、専門職大学院、TLO(大学の研究者の研究成果を特許化し企業へ技術移転する法人)、都道府県、インキュベーション施設だ。同省は本調査結果を分析し、今後の政策展開に活用していくという。
増加傾向にある「大学発ベンチャー」の実態とは。経産省が2022年度の実態調査結果を発表、政策推進に役立てる意向

「大学発ベンチャー数」は企業数・増加数ともに過去最高を記録

大学発ベンチャーは、大学等における研究成果を基に、社会・経済におけるイノベーション創出の担い手として期待が高まっているという。こうした中で、経産省は毎年、大学発ベンチャーの設立状況を定点観測し、事業環境・ニーズ等を探ることを目的として調査を実施している。

まず、経産省は「大学発ベンチャー数の推移」を取りまとめている。それによると、2020年度の同調査で確認された大学発ベンチャー数が2,905社であったのに対し、2021年度は3,306社となり、1年間で401社増加したことが明らかとなった。これにより、企業数・増加数ともに過去最高を記録したという。
増加傾向にある「大学発ベンチャー」の実態とは。経産省が2022年度の実態調査結果を発表、政策推進に役立てる意向

多くの大学でベンチャー企業数が増加傾向に

「大学別のベンチャー企業数」をみると、東京大学が最も多く、次いで京都大学、以下、大阪大学、筑波大学などが続いた。第5位の慶応義塾大学など、上位3大学以外の大学の伸びも目立ち、多くの大学がベンチャー創出へ注力していることがうかがえる結果となっている。

表における企業数は当該年度時点で把握した数。前年度との差分は必ずしも新規設立数ではない。
増加傾向にある「大学発ベンチャー」の実態とは。経産省が2022年度の実態調査結果を発表、政策推進に役立てる意向

コロナ禍でマイナス面の影響が多かったのは「施設利用・他社連携」や「事業計画」など

また、同省が、大学発ベンチャーにおける「昨年と比較した、新型コロナウイルス感染症の影響」について、「投資」、「融資」、「人材採用」、「事業計画」、「施設利用・他社連携」の5項目に分けて尋ねたところ、すべての項目で「変化なし」との回答が最も多かった。他方で、「マイナス面の影響が増大した」との回答が多かった項目は、「施設利用・他社連携」が30%、「事業計画」が28%、「投資」が23%などとなったという。
増加傾向にある「大学発ベンチャー」の実態とは。経産省が2022年度の実態調査結果を発表、政策推進に役立てる意向

博士人材を積極的に活用する大学発ベンチャーも

経産省は最後に、大学発ベンチャー企業の「従業員総数における博士人材の割合」を、「研究成果ベンチャー」、「共同研究ベンチャー」、「技術移転ベンチャー」、「学生ベンチャー」、「関連ベンチャー」の定義別で分析し、「一般企業研究職」と比較した結果を取りまとめている。すると、博士人材の比率は、特に「研究成果ベンチャー」や「技術移転ベンチャー」において高くなった。同省は、「大学発ベンチャーでは積極的に博士人材を活用していることがうかがえる」としている。
増加傾向にある「大学発ベンチャー」の実態とは。経産省が2022年度の実態調査結果を発表、政策推進に役立てる意向
本調査から、大学発ベンチャーの企業数および増加数は伸びている傾向にあることがわかった。大学別のベンチャー企業数の増加を見ても、各大学のベンチャー創出への注力がうかがえる。日本の社会・経済にイノベーションをもたらす担い手として、今後も国内での大学発ベンチャーの活躍に期待したい。

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