経済産業省(以下、経産省)は2022年5月9日、同省内の特許庁が取りまとめた「企業価値向上に資する知的財産活用事例集」を公開した。同事例集は、企業価値向上に取り組む国内企業に対して行った実践事例の聞き取り調査から、“経営層と知財部門のコミュニケーション”に着目して実際の事例を取りまとめた内容だ。同省は、知財・無形資産活用を通した企業価値向上を目指す経営層や、知財部門・経営企画部門・IR部門・広報部門などに従事する人に向け、同事例集の活用を呼びかけている。
経産省が「知的財産・無形資産」の経営活用を後押しする事例集を公開。国内20社の取り組み事例を掲載

知的財産の経営活用で、企業価値向上を目指す企業にヒントを与える内容に

特許庁によると、海外企業に比べ、日本企業の知財・無形資産への投資・活用は思うように進んでいないのが現状だという。こうした中、知財・無形資産への投資や活用を通じて企業価値を向上させ、資金獲得につなげる循環を実現させることが、日本企業における喫緊の課題となっている。

経産省はこれまで、企業の知財経営の実践において、「経営層と知財部門のコミュニケーション」や「経営層が成長戦略における知的財産の役割について理解不足であること」などを課題としてきた。また同省は、これらの課題解決のためには、“経営層が知的財産部門を頼り、知財部門が経営層へ働きかけられる”関係性の構築が重要だとしている。

さらには、先に改定されたコーポレートガバナンス・コードに対応した知的財産の取り組みについて、情報開示の必要性も高まっていることなどから、知財経営への意識向上を行うべく、知的財産を活用した経営実践事例の取りまとめに至ったという。

事例集では、国内企業20社の取り組みを、「経営上の課題/中長期的な事業の方向性」、「成長戦略の事例」、「成長戦略の事例における知財戦略」、「経営層と知財部門のコミュニケーション」、「知財戦略のステークホルダーへの開示について」の5項目に整理している。また、一部を除いて、各事例に上記の各項目をまとめた事例の全体像を示す概念図も掲載している。
経産省が「知的財産・無形資産」の経営活用を後押しする事例集を公開。国内20社の取り組み事例を掲載
加えて、巻頭に掲載事例全体の内容を整理した「エグゼクティブサマリー」を設けており、目的に応じて事例を探索することを可能にした。

経産省では、企業で以下のような役割を持つ人を、事例集の想定読者に置いている。

●知財・無形資産の活用を通じて、企業価値向上を目指したい経営層
●「経営層が自分たちの業務を理解していない」、「経営層がどのような情報を欲しているのかわからない」、「社内における発言力が低い」などの悩みを抱えている知財部門の担当者
●将来における価値創造のための知財・無形資産の活用について、中長期戦略等を企画・立案する経営企画担当者
●知財・無形資産と将来の企業価値を結びつけて開示および説明することに悩みを持つIR部門・広報部門


なお、同事例集は特許庁のウェブサイトからダウンロードできる。


組織基盤の強化や経営課題解決に資する知財戦略の知識を得ることで、「イノベーション創出」や「競争力の強化」を実現して企業価値向上を目指すべく、本事例集を活用してみてはいかがだろうか。

この記事にリアクションをお願いします!