ストレスチェック制度が義務付けられる。

平成27年12月1日より、労働安全衛生法の一部を改正する法律が施行され、その中で企業には従業員に対してストレスチェックの実施が義務付けられることとなった。この大きな法改正に対してQ&A形式で答えていく。
【経営者向け】ご存知でしたか? マイナンバーの次はストレスチェックです。Vol.2 

図 ストレスチェックの例

ストレスチェック改正法3つの疑問

Q1 そもそもストレスチェックって具体的に言うとどのようなものですか?

ストレスチェックの実施が義務化されましたと経営者の方にご説明するときに一番初めに出てくる質問は、「そもそもストレスチェックってなんですか?」というものである。確かにストレスチェックと聞いてもすぐにピンと来る人は少ないかもしれない。
 ストレスチェックとは、心理学の世界では「質問紙法」と呼ばれる、自記式のアンケートのようなものです。今の状態を4~5段階の状態に区分し(「そうだ」・「まあそうだ」・「ややちがう」・「ちがう」など)回答するものである。

 よく商業施設などで求められる、顧客満足アンケートをイメージするとわかりやすいかもしれない。アンケートのように、今のこころの状態について1問1問回答していくことにより、自身のストレスの状態を数値化することができるのである。

街のアンケートと違う点は、ストレスチェックは、標準化(数字の1点が全国的に同じ意味を持つこと)されており、統計学的に処理されているということである。案外人間にとって今の心の状態を客観的に把握することは難しいものだ。そのような時に、このストレスチェックを実施することで、例えば「今日は○点なぐらい落ち込んでいる」、「今日は気分がすぐれない気がしたけれども、ストレスチェックをしてみたら昨日よりは○点良いようだ」などという風にデジタルに日々把握することができる。実施方式は紙で実施するものとWebを用いたもの、スマートフォンを用いたもの等様々存在しており、当事務所では実施が容易な紙形式をおすすめしている。
Q2 50名以上は実施が義務付けられたと聞くのですが、そもそも50名はどの単位で数えますか?

 50人以上と一口に言っても、数える単位は法人単位ではなく、事業場単位となる。また、50人に含まれるのはアルバイト・パートも含む。一方義務化された事業所で、実際にストレスチェック義務化の対象となるのは、通常の労働者の3分の2以上勤務している人あるいは通常の労働者の2分の1以上勤務している人となる。わかりやすく言うと健康保険証を持っている人ということになる。したがって、理論上はストレスチェック義務化の事業場ではあるが、ストレスチェック義務化対象者は1名という事業場もあり得る。


Q3 50人未満の会社はストレスチェックをしなくてもよいですか?

 前項ではストレスチェック義務化の事業場が50名以上であることを解説した。総務省の調査によると、事業所ごとの従業員数は、
50から99名   1.8%
100から199名  0.7%
200から299名  0.2%
300名以上     0.2%
となっている。最も多いのは、実は50名未満の97%である。
では97%の49名あるいはもっと少ない事業所ではストレスチェックをしなくてもよいのであろうか? 答えは明確にNOであると筆者は考えている。なぜなら、今回50名未満の事業所も「努力」義務化されたからである。

行政(厚生労働省や、労働基準監督署)では、義務と努力義務は分けて考え指導も変わってくる。例えば49名の事業所でストレスチェックを実施していないからと言って労基署から是正勧告をされることはないであろう。しかしながら司法(裁判所)の判断は異なってくると筆者は考えている。いざ労働者がお亡くなりになり、遺族が裁判所へ訴えた場合、裁判所はどのくらい会社が安全配慮義務を果たしていたかを評価するだろう。そのような評価の際に、努力義務を果たしていないと、充分に安全配慮義務を果たしていたとはいいがたい、という評価を受けることが想定されるからである。
さらに、1000名を超えるような企業で1名がメンタルヘルス疾患でお休みあるいは退職するインパクトと、50名未満の会社でのインパクトでは、後者のほうがはるかに大きい。実はメンタルヘルス対策というのは、大企業だけのものではなく、中小企業ほど早急に対策すべき課題であるのだ。予防や早期発見につながるストレスチェックは、義務化されない97%の事業所でこそすべきである。
そのような意味で、中小企業ほど今回のストレスチェックは、実施しておいたほうがよいというのが現時点での筆者の考えである。

今回はストレスチェック制度についてQ&A形式でお伝えいたした。理解の一助になれば幸いである。


Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田健太

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