株式会社ヒップスターゲートは2021年10月12日、中小企業経営者を対象として実施した、「従業員の教育制度と課題」に関する調査の結果を発表した。調査日は2021年9月17日で、従業員数300人以下の企業の経営者1,020人から回答を得た。これにより、中小企業における従業員の教育体制の実態や、人材育成に向けた課題などが明らかとなった。
直近3年間の人材採用に不満を持つ企業が半数に。採用基準を緩和する企業も
新型コロナウイルス感染症の影響や少子高齢化など、企業における人材を巡る課題は山積している。その中で、中小企業経営者は、自社の教育制度にどのような課題や問題を抱えているのだろうか。はじめに、「直近3年間の採用活動において、満足のいく人材の採用ができたか」と尋ねた。すると、「とても満足のいく人材採用ができた」は18%、「ある程度満足のいく人材採用ができた」は31.1%で、合わせて49.1%に。一方、「あまり満足のいく人材採用ができなかった」は20.7%、「全く満足のいく人材採用ができなかった」が30.2%で、合わせて50.9%となった。この結果から、約半数の企業が、採用活動において満足のいく人材を採用できていないことが判明した。
また、「人材を確保するために採用基準レベルを変えたか」と尋ねると、「変えていない」が61.9%で最多となった。他方、「かなり甘くした」が9.3%、「やや甘くした」が16.4%となり、合わせて25.7%の人が「採用基準レベルを甘くした」と回答した。人材確保のために、採用基準を従来よりも甘くせざるを得なかった企業も少なくないようだ。
社内の教育制度の内容は「社内勉強会」が最多。オンライン研修も増加傾向か
続いて、「会社で取り入れている教育制度」について尋ねた。その結果、最も多かったのは、「社内勉強会」で37.8%だった。以下は、「集合研修」と「自己啓発」が共に26.1%、「OJT」が21.7%などと続いた。また、新型コロナの流行を背景に、「オンライン研修」も19.6%と2割に迫った。社内勉強会の目的は、「ビジネススキル」や「チーム力」の向上が多い結果に
次に、「社内勉強会を実施している」とした回答者に、「その目的」を尋ねた。すると、「ビジネススキル(営業力・リーダーシップ・マネジメント力など)の向上」が58.8%で最多に。以下、「チーム力・組織力の強化」が54.2%、「社内の横の繋がり(リレーションシップ)」が42.5%、「企業理念・ビジョンの浸透」が39.9%などと続いた。社内勉強会を通じて、個々のビジネススキルや、チーム力・組織力の強化に取り組む企業が多いようだ。また、「現状の社内勉強会でそれらの目的や狙いは十分に達成できているか」と尋ねた。すると、「十分に達成できている」が12.7%、「ある程度達成できている」が54.7%と、合わせて67.4%が「達成できている」と回答した。一方、「あまり達成できていない」が27.7%、「全く達成できていない」が4.9%で合計32.6%となり、達成できていない企業も3割以上あることが判明した。
社内勉強会を取り入れていない理由は、「準備時間」や「実施時間」の不足が多数
他方で、「社内勉強会を実施している」と回答しなかった人に、「社内勉強会を取り入れていない理由」を尋ねた。その結果、最も多かったのは、「準備する時間が取れない」で29.2%、次いで、「実施する時間が取れない」が26.8%となった。その他、「教える人材がいない」(24.3%)、「費用を割けない」(21%)などの回答も見られた。これらの回答から、社内勉強会の実施に否定的ではない一方で、日々の業務に追われて準備や実施の時間を取れなかったり、教える側の人材が不足していたりといった状況であることがうかがえる。「Withコロナ」の時代を生き残るには「人材の育成が重要」との認識も
最後に、「会社の生き残りのために、既存の従業員教育や育成が重要だと思うか」と尋ねた。すると、「とてもそう思う」が33.9%、「ややそう思う」が42.1%と、合わせて76%が「そう思う」と回答した。既存の従業員のスキルを上げていくことが、不確実で先の見通せない「Withコロナ」時代の企業成長において、必要不可欠と言えそうだ。
人材不足が懸念されるこれからの時代において、既に在籍している人材のスキルの強化を図っていくことが、今後ますます重要となるだろう。社員の教育機会を設けることが難しい企業も多いが、「Withコロナ」時代の企業成長に不可欠な従業員スキルの向上を図るためにも、工夫して取り組んでみてはいかがだろうか。