株式会社社長のきもちは2021年9月2日、中小企業経営者を対象に実施した、「新型コロナウイルス感染症収束後の事業インパクトと資金繰り」に関する調査の結果を発表した。調査期間は2021年8月18日~19日で、従業員300人以下の中小企業経営者1,016人から回答を得た。これにより、中小企業の資金繰りの実態や、新型コロナウイルス感染症の感染収束後に予測される、事業へのインパクトなどが明らかとなった。
約半数の中小企業が受けている事業融資。資金繰りが不透明な企業にとって、コロナ禍収束後に懸念されることとは

約5割が新型コロナ関連の事業融資を受けていることが判明

新型コロナウイルス感染症拡大による企業活動への影響が長引く中、中小企業では資金調達をどのように行っているのだろうか。

はじめに、「新型コロナ関連の事業融資を受けているか」を尋ねた。すると、「はい」が51%、「いいえ」が49%という結果に。およそ2社に1社が、新型コロナ関連の事業融資を受けていることがわかった。

また、融資を受けている経営者に対し、「受けているのは、新型コロナ関連のどのような融資か」と尋ねた。すると、最も多かったのは、「日本政策金融公庫による融資」で53.5%だった。次いで、「各地方自治体の中小企業制度融資」が48.8%となった。この結果から、「日本政策金融公庫」や「自治体の企業制度融資」といった、「公的融資」を受けている企業が多いことがわかる。

それ以外には、「商工中金による危機対応融資」(13.5%)、「個人向け緊急小口資金等の特例(個人事業主・フリーランスを含む)」(9.3%)、「伴走支援型特別保証制度」(2.5%)などもあがった。
約半数の中小企業が受けている事業融資。資金繰りが不透明な企業にとって、コロナ禍収束後に懸念されることとは

長引くコロナ禍で、見通しが不透明となる企業も多数

続いて、「受けている事業融資について、返済の見通しは立っているか」と尋ねた。すると、「立っている」との回答が44%で最も多かったものの、「今のところ問題はないが、将来どうなるか分からない」という回答も43.4%と、ほぼ同じ割合であることがわかった。現在は返済の見通しが立っているものの、コロナ禍が長引くことで先行きを心配している企業も多くあるようだ。そのほか、「立っていない」が12.6%となった。
約半数の中小企業が受けている事業融資。資金繰りが不透明な企業にとって、コロナ禍収束後に懸念されることとは

新型コロナ収束後の懸念事項は「経済の回復状況」や「税金の引き上げ」など

そこで、「コロナ禍の収束に合わせて、事業への影響が懸念されるのはどのようなことか?」を、上位3つまで尋ねた。その結果、最も多かったのは「落ち込んだ経済が回復するか」の52.7%だった。以下、「法人税の引き上げ」が44.6%、「雇用保険料の引き上げ」が27.8%、「新型コロナ関連融資の回収」が26.2%などと続いた。現在の経済状況が回復するかどうかや、税金・保険料の引き上げに関して懸念が多いことがわかる。

さらに、「事業への影響が懸念されていることに対して、どのくらい準備ができているか」を尋ねた。すると、「準備できている」(「全て準備できている」と「ある程度準備できている」の回答数を合算)としたのが40.1%だったのに対し、「あまり準備できていない」が40.8%、「全く準備できていない」が19.1%となった。ある程度の備えができている企業は、約4割にとどまるようだ。
約半数の中小企業が受けている事業融資。資金繰りが不透明な企業にとって、コロナ禍収束後に懸念されることとは

資金調達方法は銀行系と政府系が上位に

また、「想定される事業インパクトに向けた、資金調達方法」を尋ねた。その結果、「銀行融資」が45.8%で最も多く、以下、「日本政策金融公庫の融資」(28.3%)、「助成金や補助金」(27.2%)、「信用保証協会の融資」(13.4%)などと続いた。

私募債や手形割引、ベンチャーキャピタル(VC)、流動資産担保融資(ABL)、新株予約権(エクイティファイナンス)等の資金調達方法もあるものの、やはり認知度の高い銀行系や政府系の融資が多いことがうかがえる。
約半数の中小企業が受けている事業融資。資金繰りが不透明な企業にとって、コロナ禍収束後に懸念されることとは
中小企業の中には、新型コロナ関連の融資を受けている場合も多く、中には返済計画が見通せない企業も相当数あることがわかった。不透明な状況が続いているが、適切な資金融資も受けながら事業運営を行っていくためには、もうしばらく試行錯誤の日々が続きそうだ。

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