帝国データバンクは2021年1月14日、新型コロナウイルス感染症による業績影響についての調査結果を発表した。調査期間は2020年12月16日~2021年1月5日で、全国の1万1,479社から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症拡大が企業に与えた影響などが明らかとなった。
新型コロナ「第3波」の影響が顕著になった2020年末の業績調査、2割の企業が業態転換も視野に

約8割が「業績へのマイナス影響がある」と答える深刻な状況

本調査は、2020年11月中旬頃から「第3波」が到来したと言われ、新型コロナ感染拡大による影響が顕著となる中で行われたものだ。この結果から、再拡大がもたらした企業の業績への影響について探る。

はじめに、「新型コロナウイルス感染症による業績への影響」を尋ねた。すると、「既にマイナスの影響がある」と「今後マイナスの影響がある」の合計が79.9%、前月比+0.1ポイントという結果で、2ヵ月連続で8割の水準で推移している。

それに対し、「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」とした企業の合計は4.2%(同-0.1ポイント)で、前月とほぼ同水準となった。なお、「影響はない」は12%だった。
新型コロナ「第3波」の影響が顕著になった2020年末の業績調査、2割の企業が業態転換も視野に

最もマイナス影響を受けたのは「旅館・ホテル業」、プラスの影響はスーパーマーケットなどの「小売業」

先述の結果を業種別にみると、「マイナスの影響がある」とした企業のトップは、「旅館・ホテル」で94.3%。以下、「飲食店」が91.9%、「パルプ・紙・紙加工品製造」が91.7%と続いた。また、「プラスの影響がある」と見込む企業で最も多かったのは、スーパーマーケットを含む「各種商品小売」で39.6%だった。以下、「放送」の17.6%、「飲食料品小売」の15.4%までが上位3位となった。

また、「プレミアム商品券の印刷受注で売上が増加した(印刷、東京)」といった声もあり、売上が減少している分野においても、新型コロナの影響による「新たな需要」で売上が増えた企業も一部あったようだ。
新型コロナ「第3波」の影響が顕著になった2020年末の業績調査、2割の企業が業態転換も視野に

およそ2割の企業で「事業の業態転換の予定あり」

続いて、「新型コロナの感染拡大を契機として、事業の業態転換を行う予定または可能性があるか」を尋ねた。すると、「業態転換の予定がある」(「すでに転換」、「転換を検討中」、「今後転換する可能性がある」の合計)とした企業は20.3%にのぼり、5社に1社は何らかの対応を進めている様子がうかがえた。

また、この中でも「経営戦略として、すでに転換」は2.1%となり、市場の動向を受け、柔軟に対応した企業もあったようだ。企業のフリーコメントからは「GIGAスクール関連の事業拡大によるプラスの影響がある(ソフト受託開発、群馬県)」という声も。他にも、「クリーンブース設置工事に関する仕事が大幅増(配管工事用付属品製造、愛知県)」など、「(期せずして)すでに転換している」も2.3%となった。

一方、業態転換を「予定していない」という回答は72.2%で7割以上だった。企業からは「転換は考えていないが、業務見直しと強い体質への改善に向け、努力を重ねていく(警備、静岡県)」といった前向きな声も聞かれたが、「業態転換する資金やノウハウがない。計画も立てられない(各種機械・同部分品製造修理、愛媛県)」という声も寄せられた。
新型コロナ「第3波」の影響が顕著になった2020年末の業績調査、2割の企業が業態転換も視野に
今回の調査では、コロナ禍の生活やニーズの変化に注目し、業態転換の実施もしくは模索している企業の様子がうかがえた。例えば東京都では、中小企業振興公社の「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業」などの助成金支援も行われている。新たなビジネスチャンスを発見する一歩として、現在のビジネスと親和性の高い分野に目を向けてみても良いのかもしれない。

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