理系外国人の紹介を行う株式会社オリジネーターは2020年12月、「留学生の日本での就職志向」に関する調査結果を発表した。調査期間は2020年10月~11月で、同社が運営する外国人留学生就職情報サイト「リュウカツ」の登録者297名から回答を得た。これにより、コロナ禍以前と以降の理系外国人留学生の就活動向の変化について、2019年の調査結果を比較して探る。
外国人採用における日本企業の課題とは。理系外国人留学生のキャリア志向を調査

就職企業選びで重視するのは「高い給与水準」と「グローバルな仕事」

社会全体でダイバーシティやグローバル化が進むなか、外国人留学生は日本企業への就職をどのように考えているのだろうか。

はじめに、「就職企業を選ぶ際に重視する点」を尋ねた。すると、最も多かったのは「給与水準が高い」で39.7%、次いで「グローバルな仕事ができる」が39.1%だった。また、2019年の調査結果より数値が高くなったのは「職場環境や社風が合う」の34%(+5.9%)、「外国人社員の採用実績がある」の16.5%(+4.1%)、「残業が少ない」の12.5%(+4.7%)などで、外国人の受入れ体制が整った、働きやすい職場を重視する傾向が強まっていることがわかった。
「理系外国人留学生の日本での就職に関する調査」の図表1

日本での就職時の不安には「昇給・昇進できない」。一方で「1社で10年以上働きたい」が最多に

続いて「日本での就職にあたって不安なこと」を尋ねると、55.2%が「外国人だと昇給・昇進できない」と回答した。この不安を軽減するためには、外国人材の処遇や評価を可視化する制度や仕組みを取り入れ、活躍を後押しすることが必要となるだろう。
「理系外国人留学生の日本での就職に関する調査」の図表2
一方、「1社で何年働きたいか」については、「10年以上」が32.7%(+5.1%)で最多となり、中長期的な視点でキャリアを考える留学生が増加していることも判明した。
「理系外国人留学生の日本での就職に関する調査」の図表3

自身の強みは「グローバルな視野」と「母国と日本の文化・慣習を理解」

また、「外国人であることの強み」を尋ねると、「グローバルな視野を持っている」が71%(+12.9%)、「母国と日本それぞれの文化・慣習を理解している」が67.7%(+5%)と、どちらも去年の結果を超えて約7割にのぼる結果に。また、「母国と日本それぞれの国民性を理解している」(48.8%)も昨年比で+11%と、大幅に上昇したことがわかる。
「理系外国人留学生の日本での就職に関する調査」の図表4

5割以上が「新型コロナの影響で計画通り就職が進まなかった」

最後に、「新型コロナウイルス感染拡大を受け、就活で影響が大きかったこと」を尋ねた。その結果、「就活イベントや面接が中断・延期となり、計画通りに進まなかった」が52.5%と、半数を超える結果に。もともと日本での就活では、「採用情報不足」や「日本式の就活」に戸惑う留学生も多い。今年はさらに、新型コロナの影響で苦労が増加していることがうかがえる。
「理系外国人留学生の日本での就職に関する調査」の図表5
人材不足やデジタル化の遅れが深刻な日本企業において、IT人材の枯渇をどう補うのかは、各企業において課題となる。このような中、グローバルな視野を持ち、専門性の高い外国人材の獲得は今後ますます重要となるだろう。外国人材と日本人が共に働きやすい環境基盤を整備するところから、準備を進めておきたい。

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