去る11月、株式会社シルクロードテクノロジー共催『グローバル・タレントマネジメントフォーラム2012』を開催しました。
多くの人事担当者の方に当日の様子をご覧いただけるよう、講演内容の一部をレポートしました。また、講演資料のダウンロードもできるようにしました。ぜひ、ご活用ください。
≪レポート内容≫
【基調講演】「今、グローバル企業が世界で勝つためのタレントマネジメントとは」
【パネルディスカッション 1】グローバル人財一統合・融合・活用の肝
【パネルディスカッション 2】これからの人事マネジメント、グローバル人材育成
【ケースプレゼンテーション】オムロンにおけるグローバル人材マネジメントへの挑戦/
積水化学工業におけるグローバル人材の取組み
多くの人事担当者の方に当日の様子をご覧いただけるよう、講演内容の一部をレポートしました。また、講演資料のダウンロードもできるようにしました。ぜひ、ご活用ください。
≪レポート内容≫
【基調講演】「今、グローバル企業が世界で勝つためのタレントマネジメントとは」
【パネルディスカッション 1】グローバル人財一統合・融合・活用の肝
【パネルディスカッション 2】これからの人事マネジメント、グローバル人材育成
【ケースプレゼンテーション】オムロンにおけるグローバル人材マネジメントへの挑戦/
積水化学工業におけるグローバル人材の取組み
【基調講演】 今、グローバル企業が世界で勝つためのタレントマネジメントとは
講師:■株式会社シルクロードテクノロジー CEO アンドリュー・フリップ・フィリポスキー氏
◆会社と社員の関係づくりこそ、会社を成功に導くカギ私たち、シルクロードテクノロジーは、社員と会社の関係について構築している会社だ。ほとんどの会社の社長は、自分たちの会社の社員と会社の関係こそ、その会社を成功に導くか失敗に終わらせるかを左右するカギだと考えている。シルクロードテクノロジーは、会社にとって社員が一番大切な要素であるということを提唱した最初の会社の一つであるということを申し上げたい。
シルクロードテクノロジーは、私が1980年代に起業したプラチナムテクノロジーという会社が前身となっているが、このプラチナムテクノロジーは、かつて、社員が働きたい会社のNo.1としてIT業界で知られていた。私は、ゼロから立ち上げたこの会社を4年間で世界第8位のソフトウェア企業へ成長させることができたのだが、それよりも、最も誇りに思ったのは、IT業界で社員が働きたい会社のNo.1に選ばれたことであり、会社と社員一人ひとりの間に特別な絆があるということだった。
◆会社とエンゲージしたグローバル人財が競争優位性をもたらす
シルクロードテクノロジーの目的は、会社が社員と特別な関係をつくることを支援する人財管理ソフトウェアを、クラウドで提供することだ。私たちが開発した「the life suite」というセットの製品群には、会社が社員との特別な関係を築き、世界中でグローバル企業として成長していくために必要な、パフォーマンス管理やスタッフ育成といった各種の機能を持つツールが含まれている。クラウドでこのような製品群を提供するメリットは非常に大きい。従来型ソフトウェアとは違って、いろいろな製品の改善を短時間で実現することができる上、モバイル端末でさまざまな情報にアクセスすることも容易になる。世界中に拠点があっても、同じ製品を全社で瞬時に導入して使っていただくことも可能になる。
実際、私たちの製品群は、現在75+カ国で500万人にも及ぶユーザーの方々に日々使われている。各企業の経営者の方々は、私たちの製品群を活用することによって、その業界やビジネスにおける最良の人財を確保し、その人財を成長させ、それぞれのキャリアパスを明確化できる。そして、会社の中でソーシャルを活用した社員と会社の良い関係を築いていくことができる。その結果、社員が会社とエンゲージすることで、一般的な社員と会社という間柄を超え、社員一人ひとりに会社に対して「自分の会社」という意識を持っていただくことが可能になるのである。
企業がグローバルに勝ち抜いていくためには、他社と比較した競争優位性が必要だ。自分の会社にエンゲージしているグローバル人財を増やすことで、企業は他社が持たない強い力を得ることができる。そこで貢献できるのが私たちの製品群だと考えている。
【パネルディスカッション 1】 グローバル人財一統合・融合・活用の肝
モデレーター: ■株式会社ローランド・ベルガー パートナー 大野隆司氏/パネリスト: ■株式会社小松製作所 顧問 日置政克氏 ■株式会社シルクロードテクノロジー CEO アンドリュー・フリップ・フィリポスキー氏
◆海外でのM&Aやジョイントベンチャーで成功する難しさ冒頭、外資系経営戦略コンサルティング・ファームに籍を置く大野氏が、本格的に海外進出に乗り出したものの、課題を抱える日本企業が多い最近の事情について述べた。「成長の場を海外に求めてグローバルにM&Aを行う企業が我々のクライアントにも多い。しかし、最初の1、2年は買収による分の売上が増えても、3、4年たって、もう一段上の成長がなかなかできないと悩まれるケースが少なくない。『統合・融合・活用』というところが、非常に大きな課題になっている。今日はこのテーマでお二人からいろいろお聞きしたい」。
まず、「コマツは早くからグローバル化を進めて成功している企業として知られるが、これまで失敗はなかったのか」と大野氏に問われ、興味深いエピソードを紹介したのが日置氏。同社が本格的に海外に出始めたのは80年代のこと。「私自身も人事スタッフとして関与したが、イギリスで立ち上げた工場では完全な日本流を持ち込んで失敗した。オフィスと現場は一体だという考えからラジオ体操を全員で行ったり、待遇面の差もできるだけ縮めたりしたところ、ホワイトカラーが反発し、辞める人が相次いだ」。同社ではアメリカにも同じ時期に出て、ある会社とジョイントベンチャーを立ち上げたが、そこでも状況は同じで、マネージャーの定着率が悪かった。「日本流と現地流の良い部分を取り入れたやり方に変え、一緒にうまくやれるようになるまで5年かかった」と日置氏は述懐した。
現在、成功しているコマツといえども、過去には失敗を乗り越える経験をしている。その事実を受け、「M&Aを行って会社を本当に統合、融合させるのは非常に手間がかかり、簡単ではないが、コツなどはないか」と問う大野氏に答えたのがフリップ氏。これまで約200社の合併・統合に携わったが、その際に大事だと心がけてきたのは、「自分の今の会社の社員を信頼していると同時に、合併される側の会社の社員も信頼することだ」と述べた。そのことが大きな影響を持つ実例として、フリップ氏が挙げたのが有給休暇制度。それまで、合併先企業では年次有給休暇日数を定めていたが、「会社はみなさんを信頼しますので、必要に応じて休んでください」と制限を取り払うと、社員が休みを取る日数は逆に減った。社員の会社に対する貢献度、エンゲージメントを測り、基準に達しなければ会社を去ってもらった上でのことだが、「自律性を持って自分が休むべきとき、会社のために働くべきときというコントロールができる社員は、規則や規制がなくても自分たちでスケジュール管理ができるようになる」とフリップ氏は述べた。アメリカと日本では事情が大きく異なるが、示唆に富む指摘だった。
◆現地の人々と一緒にビジネスを成長させるために、何が必要か
日本企業が海外に進出し、異文化の中で現地の人々と一緒にビジネスを成長させていくために重要なことは何か。その一つは、統合・融合の拠り所として、それぞれの企業が進みたい方向性や大事にする文化といったものを現地に浸透させることだ。大野氏はそのように述べ、「とはいえ、実際に現地の人々にこれらを納得してもらうことは簡単ではない。ウェイやクレドといったものをつくっても、グローバルに展開し、定着化できている日本の企業が非常に少ないことは事実だ。そこは、どのようにすればいいのか」と問いかけた。「確かに、ソフトの部分でそういうものをシェアすることは非常に大事だと思う」と応じたのは日置氏。コマツでは2006年にバリュー、マインドセット、ビヘイビアからなるコマツウェイを定め、全世界の拠点で展開、浸透を図っている。「例えば、コマツウェイの一つに、トップマネジメントは会社の状況を社員に直接話しなさいというものがあるが、実際にこれを世界中のトップマネジメントが実行している。重要なのはトップが自ら信じて動くこと。それを見れば、下の人間は『これは本物だ』と思い、自分たちもやらないわけにいかなくなる」と、トップの本気度がカギを握ることを指摘した。
さらに、海外で現地の人々と一緒にやっていこうというとき、経験から一番大事だと日置氏が述べたのは、「どれだけオープンにして日本人と外国人の区別なくやれているか、同じ情報が日本人と外国人の間でどれだけ共有されているか」ということ。そのことが現地の有望・有能な人財の定着率を高めることにもつながると強調した。「実は、先ほど話したアメリカのジョイントベンチャーでは、今度、20数年勤めたアメリカ人社員が内部昇格して新しいトップに就任する。海外で成長するためには、信頼できる海外の社員を増やすことが不可欠だ」。
日置氏の発言を受け、ITの専門家としてコメントを述べたのはフリップ氏。日本人と外国人が同じ情報を共有できる仕組みづくりには、ソーシャルネットワークなどITツールの活用が有効だ。また、現地法人トップをはじめとする後継者育成においても、世界中の拠点のどこにどのような社員がおり、キャリアに関してどのような考えを持っているかを、そうした仕組みを活用して見える化することができる。フリップ氏は、「会社はそうしたソーシャルツールを使って、会社の目標と個人の目標がエンゲージしている、会社にとって最良の人財は誰かを認識し、昇進させていくことができる」と述べた。
日置氏も、「当社では人財育成はそれぞれの国に任せており、全社で人の動きを統合しようという動きはまだないが、グローバル全体のタレントマネジメントを考えると、今後、そういう方向に行く必要があることは確かだろう」と応じ、別の観点からのメリットも指摘した。「こういうものをつくれば、海外の人たちが受けるインパクトは大きい。自分たちの情報は東京の本社がよく知っている、チャンスがみんなにオープンになっているという部分に結び得る」。
多くの企業が抱える海外進出の課題に関して、さまざまな面から有益な示唆が得られたパネルディスカッションだった。
【パネルディスカッション 2】 これからの人事マネジメント、グローバル人材育成
モデレーター: ■中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授 楠田 祐氏/パネリスト:■ コニカミノルタホールディングス株式会社 執行役人事部長 若島 司氏 ■ 三井化学株式会社 執行役員人事部長 市村 彰浩氏 ■株式会社シルクロードテクノロジー 取締役 副社長 小野りちこ氏
◆全世界4万人に及ぶ人材の総合力アップを目指すコニカミノルタまず、コニカミノルタホールディングスの若島氏が、同社グループの進めるグローバル人材の育成と活用をテーマにプレゼンテーションを行った。持株会社・分社体制の下、グローバルに事業を展開する同社グループでは、売上高に占める海外比率が約7割、従業員数約4万人のうち海外社員比率は約3分の2を占める。「しかし、人事部門は長らく約3分の1の日本人社員を中心に施策を考えており、『これでグローバルに会社が成長していくのか』というのがトップの課題意識だった」と、若島氏は以前の状況を説明。同社グループは2011年度からの中期計画における基本方針として「真のグローバル企業への進化」を掲げ、ここから状況が変わった。
「トップから命題を与えられ、走りながらグローバル人事戦略の取り組みを進めてきた。ホールディングス中心に国内・日本人だけ見るのではなく、グループ全体で4万人の人材総合力のさらなるレベルアップを図り、グローバル競争において成長を続け、活気ある会社にしていきたいというのが、目指す姿だ。これを実現する手段として、ホールディングスだけでなくグローバルで共有する『人材育成と活用のためのプラットフォーム』の構築と展開を進めている」。
プラットフォームの内容は、バリュー(コンピテンシー)、人事データベース、評価、トレーニング、サクセッション、配置、ES調査と、体系的かつ多岐にわたる。グローバル共通の人事データベースは、部長以上の幹部約500人と管理職約5,000人が対象。気づきを狙いとする360度評価は、日本では全管理職が対象で、役員にも行っている。全社員4万人が対象のES調査は、データが全社HR部門の共通のものさしとなり、これに基づいて各社で施策を打つようにしたいとの狙いがある。
また、グローバル幹部人材の育成を急ぎ、23カ国53社から101人の経営幹部候補を選抜して、2010年より「グローバル・エグゼクティブ・プログラム(GEP)」を開始・実施継続中だ。研修は計6回実施、各回1週間のプログラムは全編英語。「トップが参加して自ら経営方針や戦略を伝えることが特色で、それを受けて参加者がディスカッションを行い、自分が何をするのかを最後にトップの前で発表している」と若島氏は説明した。
◆日本と海外関係会社の人事ローテーション拡大を図る三井化学
続いて、三井化学のグローバル化に向けた人材マネジメント戦略についてプレゼンテーションしたのが、同社の市村氏。世界の各地域に関係会社などの拠点を置き、「アジアを中心にグローバルに存在感のある化学会社」を目指す同社では、3年ほど前からグローバル経営戦略を一気に加速。人事部門では多様な人材を活かすグループ経営に向け、グローバル人事マネジメントの仕組みを急ピッチで整備してきた。「特に課題となっているのはグローバルリーダーの獲得・育成だ。『本社のグローバルマネジメント力強化』と、『海外現地法人のマネジメント力強化』、この2つの面からアプローチを行い、グローバルリーダー(経営人材)と次期グローバルリーダー(中堅・若手人材)の確保・育成に取り組んでいる」。
そう述べた市村氏は、続いて具体的な施策を紹介。三井化学本体社員については、グローバルな経験を持つ経営人材を育成するため、経営人材候補の海外関係会社トップへの配置を行うほか、若手・中堅の海外経験機会を増やすため、優秀人材を海外関係会社の部長・GM等の下に就かせている。一方、海外現地社員については、経営人材候補の三井化学本体経営ポジションへの登用や、若手・中堅人材の三井化学本体への育成配置および実務派遣研修を拡大している。また、採用の部分でも本体と海外関係会社が連携。海外大学からの直接採用チャネルを共有・拡大し、外国人採用の強化を行っている。「今後、本体と海外関係会社のナショナルスタッフとのローテーションはできるだけ増やしていきたい。双方の研修への派遣や研修の合同実施も積極的に進めたい」と市村氏は述べた。
同社が進めるグローバル人材育成の取り組み成果が表れているのは、海外GM(部長)・課長層の登用状況。課長層の現地社員率はすでに9割前後まで増えている。「GM(部長)層についても現在日本人が占めるポジションごとに、いつ現地社員に置きかえるか計画を立ててもらっており、13年度末までに50%に届く見込みだ。今後さらに現地のGM候補者を早く育成したい」と市村氏は力を込めた。
そのほかにも、このようなグローバル人材マネジメントを行うための基盤整備として、人材データベース、グローバル出向ポリシー、グローバルグレーディングなどの説明が市村氏から行われた。
◆本社やホールディングスと現地法人のHR部門がいかに連携できるか
両社のプレゼンテーションを受け、日本企業のこうした取り組みが海外でどう受け止められるかという視点からコメントしたのが、シルクロードテクノロジーの小野氏。顧客が世界中でビジネスを展開しており、日本企業の現地法人も数多く訪ねている小野氏は、「今、現地が日本の人事に抱いているのは、大きな期待ととまどいだと思う」と指摘した。「今まで、『現地みんなでそれぞれ頑張ってやってよ、お母さんはいませんよ』と任せていた状態から、突然『私がお母さんよね』とガバナンスをきかせてきたから、これは何かやってくれるんじゃないかと期待している。特にフェアネスへの期待が大きい。一方、とまどいは『自分たちにとってメリットは何?』ということだ」。
また、楠田氏は「こうした仕組みや制度を、現地法人の人事とどれくらい話し合ってつくってきたのか、それともつくったからやってくださいという感じだったのか」と問いかけた。両社の答えは、いずれも「最初は自分たち主導でつくったが、現在は変わってきた」というもの。三井化学の市村氏は「シンガポールにあるアジア統括会社のHRチームがかなりしっかりしたチームで、一緒に相当議論しながらつくり込んでいる。ほかの地域統括会社のHRマネージャーとも意見交換を頻繁に行っている」と述べた。コニカミノルタホールディングスの若島氏は「各地域の人事関係者とは膝詰めでいろいろ話している。アウトラインは私たちが出すが、細部は一緒に詰めていこうという形だ」と説明し、「ホールディングスがつくったものを一方的に受ける形だと、多分、何も伝わらない。現地キーパーソンを巻き込むことが大事だ」と強調した。
パネルディスカッションの最後にはオーディエンスと出席者の質疑応答も行われ、今、多くの企業が取り組むグローバル人材育成のリアルな課題と、それを乗り越える方向性が見えてくる有意義な時間となった。
【ケースプレゼンテーション】 オムロンにおけるグローバル人材マネジメントへの挑戦/積水化学工業におけるグローバル人材の取組み
講師:■オムロン株式会社 エレクトリック・メカニカル・コンポーネンツ・ビジネスカンパニー 人事総務部 部長 亀井 一郎氏 ■積水化学工業株式会社 CSR部 人事グループ長 佐藤 隆士氏
◆後継人材育成に経営陣が関与する、オムロンのグローバルコアポジション戦略
現在、「VG(Value Generation)人財戦略」の下、グローバル人材育成を推進しているオムロンの取り組みについて同社の亀井氏が紹介した。
「VG人財戦略」は、同社の10年間の長期ビジョン「VG2020」に沿い、この10年間における事業のグローバル成長を支えていく個人と集団をつくり上げる戦略。亀井氏によれば、ベースにある課題認識と方向性は次の3つだ。第1は、グローバル経営人材の圧倒的な不足を解消するため、グローバルで活躍できる人材を育て上げること。第2は、社内分社制の下で事業を展開する同社では分社やカンパニーの壁を越えた人材活用が滞っていたため、人材流動化の拡大・加速化を図ること。第3は、個人・集団としての「とがり・つなぎ(専門性・チームワーク)」をさらに強化することだ。
「VG人財戦略」は3つの戦略で構成されている。第1は、グローバルコアポジション戦略。経営陣の積極的な関与の下、ハイポテンシャル人材をグローバルで発掘・育成・配置し、オムロングループの重要ポジションを担う人材を供給し続けていく。第2は、個人と集団の風土形成。現場マネジメント変革を起点に、チャレンジし続けるグローバルなストロングチームをつくっていく。そして、第3のグローバルHRM-PF戦略により、第1と第2の戦略を実行する上で必要なプラットフォーム(制度・仕組み・仕掛け)を、最適配置、人材育成、評価の各カテゴリーで整備していく。
中でも、同社が力を入れる特徴的な取り組みがグローバルコアポジション戦略だ。亀井氏は、「国内108、海外59の全社167ポジションをコアポジションとして認定した。各ポジションで成果を出すための必要要件や、後継候補人材の発掘・指名・育成について、分社やカンパニーの枠を越えて全社の経営陣が議論し、認知し、見守っていくということを始めている」と説明した。さらに、全社最適視点で最適人材を最適ポジションに配置できるよう、管理職の資格給を廃止して役割給に一本化し、役割等級制度をグローバルで統一。「若手でも事業部長や分社の社長にできる制度を整えた」という同社では、ほかにも多様な面で変革を推進していることが紹介された。
◆現地駐在員を派遣し、海外エリア管理をスタートさせた積水化学工業
CSR経営を推進する中で、人事部門をCSR部内に置く組織変更を行った積水化学工業。同社の佐藤氏は「CSRとしての人材の考え方は、『社会からお預かりした貴重な財産』である従業員を育てることで社会貢献を果たそうというものだ」と述べた上で、現在、力を注いでいるグループ人材力向上に向けた取り組みを紹介した。「住宅」「環境・ライフライン」「高機能プラスチックス」の3カンパニー制を採り、グローバルに事業を展開する同社では、グループ全体で現場力を強化し、経営を支える人材の確保・育成を行っていくことを目指している。海外事業へのシフトを推進するため発足させたのが、グローバル人材づくりプロジェクト。ここで、グループビジョンの共有化、グローバルで必要な人材の見える化、必要な人材の確保・育成策について取りまとめ、採用、人材育成策、グループ内人材流動の活性化、グローバル社員の拡大、処遇体系の見直し、グループ人材の把握といった各施策を展開している。
人材育成策の一つとして2010年から実施しているのが「フロンティアリーダー200」。佐藤氏は、「グループ全体で200のポジションを主要ポストと決め、このポジションの後継人材づくりや登用については、カンパニー制だが全社で決めていこうというものだ」と説明した。
また、同社の新たな取り組みの中でも注目されたのが、コーポレート人事としての海外エリア管理。佐藤氏は、「事業については各カンパニーが縦割りで事業部門ごとに直轄するのが当然だが、人事などグループ経営やガバナンス統制に関しては、コーポレートが横串を刺して全社を統括していきたい。拠点を置く北米、欧州、中国、アセアンをエリア単位で管理する体制を整え始めている」と述べた。第1弾として、2011年、16社ほどがある北米に人事機能を設置。佐藤氏の部下が駐在員として現地に派遣され、各社アメリカ人経営トップ層およびマネージャー向け研修、北米エリア内での公募制度立ち上げ、各社人事部長会の定期開催などを行っている。今後、第2弾として予定しているのは、北米エリアでの人事制度づくりと、北米以外のエリアへの展開拡大だ。北米駐在員が現地で手探りしながら施策を進めてきたエピソードも紹介され、印象的だった。
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