自己を振り返ることが、成長を促す上で重要なポイント
リーダーシッププログラムの効果についても言及します。TKGのリーダーシッププログラムは、自らの判断力を育成するものと理解されます。プログラム未受講の学生は、上司との関係が良好だと成長につながる行動を起こしますが、良好でないと消極的になります。良くも悪くも周囲との関係性に左右されるのです。一方、プログラムを受けた学生は上司部下の関係に影響を受けません。自律的に判断しており、プログラムの効果がうかがえました。ここまでで、アルバイト先の良質な経験・環境は、成長につながる行動を誘発していることが明らかになりました。行動を起こす過程で、学生は経験学習を積んでいます。「なぜうまくいったのか、いかなかったのか」と内省し、同時に周りにいる同僚や先輩、上司の言動の観察も行っています。
この時、他者の視点の獲得も生じます。これまでは自分の側でしか見ていなかったことが、他者がどう見えているか気づけるようになる。すなわち、視点の多様性が生まれるのです。その上で学びを得て、次の段階として行動を起こす能動的実践に移行します。このような行動を繰り返して、二次的に社会人基礎力が養われていくことが、インタビューやアンケート調査を通じ、明確になりました。
【成長に繋がる行動、獲得している能力・スキル TKG学生と一般学生の比較(平均値)】

意図的にバイ・ザ・ジョブ・トレーニングを行う
以上を踏まえて、人材の成長を促すため、広く他のアルバイトや組織でも応用する方法を考察します。大切なのは、意識的に環境をデザインすることです。心理的安全性を前提に、ポジティブ・ネガティブ、両面でのフィードバック、外部との交流の機会を設けるなどします。この時、ぜひ覚えておいていただきたいのが「バイ・ザ・ジョブ・トレーニング」という概念です。オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)は仕事をしながら結果的に学びを得る意味合いがあります。バイ・ザ・ジョブ・トレーニングも仕事をしながら学ぶ点は同様ですが、意識的に学びの場を設ける点が異なります。内省して、あるいはリーダーシッププログラムのように一旦仕事の場を離れて、自身の経験を言語化して自己を肯定したり否定したりします。内省して得た学びを現場に持ち帰り、能動的実践につなげます。自己の経験を言語化できる環境があると、成長は促進されます。その意味で、TKGのリーダーシッププログラムは、講師の仕事と連動しており非常に効果的だと考えられます。現状の仕事から切り離されて実施される研修では、期待するほどの効果は得られないでしょう。