永続する企業が持つ遺伝子は挑戦・協働・貢献

見えない「企業文化」で競争優位を実現!
   創業200年以上の会社は、世界中で5586社、そのうち日本の会社が3164社、そのなかで社員数300名以下の会社が2829社だ。日本は社歴が長い会社が多い国で、様々な研究がされている。私も100年企業研究会に所属して研究している。永続する企業の社員にどういうことが根付いているのかを調べたところ、挑戦と革新、先義後利、人を育てる、ネットワーク・絆といった言葉が浮かび上がった。これらが標榜されているだけでなく、遺伝子として大多数まで根付いているのである。

 ジェックではこれらの永続する企業がもつ遺伝子を3つのキーワードで表現した。

 第1はChallenge:挑戦の価値観。第2はCooperation:協働、協調の価値観。第3はContribute:貢献の価値観。これらの挑戦的創造的(3C )企業文化を醸成し、革新戦略への共感共鳴度を高めることにより、戦略が狙う優位性づくりに加速をつけることが可能になる。

企業文化革新の打ち手はマネジメント改善

見えない「企業文化」で競争優位を実現!
   私事だが、先般血圧が高くて医師の診断を受けた。西洋医学的アプローチによる血圧降下には、
1)拍出を抑える薬・オペ 2)体内水分量をコントロールする薬 3)血管を柔らかくする薬 の3つの処方があるそうだ。しかし一番良いのは体質改善で、そのためには生活習慣を変えなければならない。朝食を食べる、適切な睡眠をとるといったことだ。それをしないで薬に頼っても、あくまで対処療法であり、やがて薬が効かなくなってまた血圧が上がり、もっと強い薬が必要になってしまう。

 挑戦・協調・貢献の価値観を醸成する打ち手を考える時も、西洋医学的なアプローチでそれぞれにダイレクトな対策を考えてしまいがちだ。しかし一番良いのは体質改善であり、そのために良いのは生活習慣の改善である。企業文化の遺伝子は、日頃の声かけなどのマネジメントで集団に広がるとご説明したとおり、根本的な打ち手はマネジメント改善なのである。

 企業文化を診断するときに一般的に課題となるのは、フェノタイプ(現象による分類)は特定できても、ゲノタイプ(原因による分類)が特定できないことだ。その結果、企業文化の革新とはいいながら根本要因に手が打てず、企業文化が根本からは変わらないことである。

 そこでジェックでは、慶應義塾大学大学院SDM研究科高野研究室のお力をお借りして、様々なアンケート、分析、インタビュー、解析、フィードバックを通して研究をしてきた。たとえば2700件のサンプルデータを抽出し、業界・業種別、企業規模別など様々な角度から統計的な分析・解析をした。また私共のクライアント様にソリューションとしてご提供してきたアンケートの結果も研究してきた。

 89問のアンケートに対して、チーム別、年代別で分析し、結果は好ましい数字が青、好ましくない数字が赤で表示される。組織別に縦で見ると非常に青が多いチームもあるし、反対に赤が多いチームもある。それぞれの組織、チームに根付いている当たり前が見えてきて、3つの価値観でどれが高く、どれが低いのかが見えてくる。3つの価値観は、業績との正の相関がありそうである。またそれぞれの因果関係も見え始めた。基本的なインフラを整えたうえで、協調・貢献の価値観を高めていくと業績の上昇傾向がうまれ、そうなってはじめて挑戦の価値観が高まってくる、という関係性だ。こうしたことが見えてくると、どこにどのような手を打っていくべきかが具体的に見えてくる。

企業文化革新の手順の事例

   3つの価値観:挑戦・協調・貢献の価値観をもった企業文化を醸成し、共感・共鳴度を高め、戦略が狙う優位性づくりを加速させる例として、一つの手順をお伝えしたい。

 まずは、3Cの価値観を宣言・明文化させる。それを個人の想い、組織の想いへ共鳴を進めていく。このとき縦の統制=リーダーからメンバーへのマネジメント、横の統制=仲間同士、という力学を使っていく。

 たとえば、挑戦の価値観をできるだけシンプルに明文化しようとしたあるクライアントは、「前向きな失敗は成功だ」というスローガンを作った。本当の失敗とは、失敗から学ばないこと。前のめりな失敗はウェルカム、ということだ。この企業は、個人と組織の間で価値観を共鳴させていくアクションをしっかりとっている。社長、副社長が支社長会議で月に1回、必ず営業マネージャーに触れているので、マネージャーも自分のメンバーに対して説明していく頻度が増えるわけだ。

 これらの手順は企業様によって異なってくるが、一例として参考にしていただきたい。
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