組織に大きな影響を与える 見えない「企業文化 」

   企業文化が経営において重要なファクターであることは、皆さんもご承知のことだろう。 
  
 いくつかの企業が合併して1社になったある企業の研修では、名簿に出身企業名がなくても誰がどの企業の出身かわかる。立ち居振る舞いやグループワークでの模造紙の使い方などが違うのだ。はっきり目に見える違いを生み出しているものが、実は目に見えない文化である。この文化は集団に大きな影響を与えている。そこで今回は「企業文化」に焦点をあてて考えてみたい。

業績の方程式:業績=戦略×能力×集団性格

見えない「企業文化」で競争優位を実現!
   外的要因を除いて業績に影響を与える3要素を方程式にすると、「業績=戦略×能力×集団性格」であると我々は考えている。業績を上げ続けるためには優れた戦略が必要だ。そして戦略に基づいたパフォーマンスをもった人材を育成しなければならない。さらに戦略の実現を後押しする企業文化・風土が重要だ。これらすべてがうまくかみ合っていなければ、業績を上げ続けることはできない。

 企業の優位性は、一般的には戦略にある。しかし戦略には落とし穴がある。戦略は未来に向かう。一方、人が集まると集団は知らず知らずのうちに保守に走りたがる。さらに集団は異質をはじくという性質がある。未来を実現するための新たな戦略は、昔のやり方を守ろうとする保守的な人にとって、正に異質なものであり、無意識のうちに抵抗するのだ。

 会議の場では新たな戦略を否定する発言は出なくても、飲みの席では「あれは何だ。上は現場が見えているのか?」といった抵抗の言葉が多く聞かれる。新たな戦略で新しい市場を創造するのだと言っても、ついつい今までやり慣れた方法、行き慣れた市場や顧客に行ってしまう。結果として、戦略が狙おうとする優位性を実現できないということが起きてしまうのだ。

 なぜこうなるのか。そこには集団力学が働いている。一人ひとりではそうでなくても、不安・喜び・敵意といった感情・衝動が集団を支配しているからである。

企業文化とは何か? 日本という組織で考える

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   企業文化についての学者の見解はさまざまある。定義を解釈する前に、「日本という組織」文化を例に、体験的に考えてみたい。

 日本は外国人から、安心・安全、清潔、技術が発達している、生活水準が高い、などと言われる。拾った財布を届けることや、ホテルのバスルームで蛇口からお湯がでるのは日本では当たり前と考える人が多い。しかし世界には、ホテルのバスルームでお湯が出たらラッキー、電話はつながらない、クレームを言っても詫びない、という所もある。これらは実際、私が経験したことだ。

 お湯がでる・電話がつながるといったモノの質、もし不具合があった場合は「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と詫びる行動パターン、そして前提として不具合は無いのが当たり前という価値観が日本にはある。これが日本という組織の文化なのだ。

企業文化の正体は疑うことすらしない「当たり前」

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   こうした事例から考えると、企業文化の正体とは『疑うことすらしない「当たり前」のこと』である。定義にすれば『組織の大多数のメンバーが共有している価値観と、それに基づく行動様式』となる。

 では企業文化はどのようにできるのか。単純に言えば、企業文化は日々のマネジメントの積み重ねのなかで、組織の人達にだんだんと根付いていくものだ。特定の人達で立ち上げられた組織では、組織の価値観は特定の人のなかにしかない。ところが日々のマネジメントのなかで、こういうことをしたら褒められた、こういったことをしたらきつく叱られた、ということが積み重なり、その価値観の遺伝子が第2世代、第3世代と広がって集団に根付いていく。どうしてもその遺伝子が身に付かない人や馴染まない人は、集団に入らないか出ていく構造になっている。これが採用にも影響する。採用側の価値観から著しく反する者ははじかれるだろう。

 こうした企業文化は遺伝子のように一人ひとりのなかに根付いて行って、気づかないうちに潜在していく。もちろん、組織に属する大多数の人に根付いている当たり前の価値観が、戦略が狙う優位性を実現し、実行するために好ましい価値観ならば問題はない。ところが、そうでない場合は戦略が行動化されないのだ。

永続する企業が持つ遺伝子は挑戦・協働・貢献

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