そこでHR総研では、2025年と2026年新卒採用の実態についてアンケートを実施した。内定充足率の高い企業の特徴なども含め、調査結果を以下に報告する。
内定充足率「90%以上」は大企業で7割近く、中堅・中小企業では4割未満
まず、2025年新卒採用(25卒採用、以下同じ)の振り返り結果から、今後の新卒採用に活かせるポイントを探っていく。
2024年12月時点での2025年4月入社の採用計画に対する内定者充足率について見てみると、従業員数1,001名以上の大企業では「100%以上」が最多で36%、次いで「90~100%未満」が32%で、これらを合計した「90%以上」(以下同じ)の割合は68%と7割近くに上る。301~1,000名の中堅企業では「90~100%未満」が最多で22%、「90%以上」は36%で大企業より32ポイントも低い状態となっている。一方、「50%未満」(「0%」~「30~50%未満」の合計、以下同じ)は27%と3割近くに上る。300名以下の中小企業では「90%以上」は31%で大企業より37ポイント低く、中堅企業よりも5ポイント低い。中小企業で最も多いのは内定充足率「0%」で23%、「50%未満」は31%と3割に上る(図表1-1)。
大企業の方が内定出しのタイミングが早い傾向ではあるものの、25卒学生の入社まで4ヶ月を切る12月時点で内定充足率が5割に満たない状況に、焦りを募らせている中堅・中小企業の人事担当者も少なくないことがうかがえる。
【図表1-1】企業規模別 2025年4月入社の採用計画に対する内定者充足率(2024年12月時点)

内定者が1名以上いる企業において、内定者のうち当初設定していたターゲット層の占める割合を見てみると、大企業では「80~100%未満」が圧倒的に多く52%と半数を超えている。次いで「50~80%未満」が30%などとなっている。大企業では内定数も多いこともあるためか「100%」は11%と1割にとどまっており、「80%以上」(「80~100%未満」と「100%」の合計、以下同じ)の割合は63%と6割に上っている。中堅企業を見てみると、「50~80%未満」が最多で29%と3割に上る一方、「100%」と「80~100%未満」がともに26%、したがって「80%以上」の割合は52%で、半数程度の企業が内定者のうち8割以上はターゲット層の学生を獲得できている。ただ、残りの半数程度の企業ではターゲット層ではない内定者が2割以上含まれており、中堅企業で新卒採用に苦戦していることが分かる。中小企業の状況については、「80~100%未満」が最多で32%、次いで「100%」が29%、したがって大企業と同様に6割程度の企業が内定者のうちターゲット層の学生が8割以上含まれており、内定者自体は少ないものの、ターゲット層獲得の精度は高く採用できている傾向にあることがうかがえる(図表1-2)。
【図表1-2】企業規模別 内定者のうち当初設定していたターゲット層の占める割合

大企業の半数は「入社後に配属先通知」、内定充足率が高い企業の「入社後キャリアイメージの説明機会」は?
自身のキャリアプランを考えながら就職活動を行っている学生にとっては、新入社員として入社した後、どの部署に配属されるのか気になるところだろう。採用活動をする企業としては、どのタイミングで学生に対して入社後の配属先(予定先)を伝えるのかを確認してみると、いずれの企業規模においても「選考途上(内々定前)」が最多で、大企業から順に30%、19%、36%となっている。ただし、大企業では「入社式以降」(「入社式当日」~「新入社員研修終了時」の合計)の割合が52%と過半数に上り、入社してみるまでは配属先がわからないケースが少なくないことがうかがえる。一方、中堅企業では「入社式以降」は39%と4割で、入社前までに配属先が伝えられている企業の方が多数派であることが分かる。中小企業は「入社式以降」は34%と3割程度で、中堅企業と同様に入社前までに伝える企業の方が多数派となっている(図表2-1)。大企業では内定者数も配属候補先も多く、様々な条件によりギリギリまで決定しづらい状況にあることも、配属先通知のタイミングが遅くなる要因の一つだろう。このような状況の中、できるだけ職種や配属先が明確になった採用をしてもらいやすいジョブ型採用は、キャリアプランが明確な学生にとって安心感が高く魅力的な採用手法なのだろう。
【図表2-1】企業規模別 入社後の配属先(予定先)を伝えるタイミング

25卒採用活動として、入社後の育成やキャリアマップのイメージに関する説明の機会をどのタイミングで設けたかについては、内定充足率別に3つの企業群に分けて、違いを見てみる。
まず「内定充足率90%以上」の企業では、「セミナー・会社説明会で説明している」が最多(56%)でありつつ、それ以外に「採用HPに記載している」(38%)、「インターンシップで説明している」(27%)など、採用選考への応募前から学生が情報を入手しやすい多様な形で発信していることがうかがえる。「内定充足率70~90%未満」の企業の傾向も「内定充足率90%以上」の企業と似ているが、「インターンシップで説明している」の割合の差が顕著で、「内定充足率90%以上」の企業より17ポイントも低い10%にとどまっている。一方、「内定充足率50%未満」の企業では、「セミナー・会社説明会で説明している」(46%)と「採用選考面接で説明している」(34%)の割合が多く、採用選考への応募者もしくは応募意思が強い学生にのみ届ける形で発信する傾向にある。
これらの結果から、自社の仕事に対して興味を持った学生が集まっているインターンシップなどを活用して、潜在的な応募者に向けて入社後のキャリアイメージ(成長イメージ)を積極的に発信することで、自社への関心を高め応募数を増やし、内定充足率を高めることにも繋がるといえるだろう。そのためには、積極的に発信できるだけの自社内でのキャリアマップやキャリアパス、育成体系等を構築しておく必要もあるだろう(図表2-2)。
【図表2-2】25卒採用の内定充足率別 入社後の育成やキャリアマップのイメージに関する説明の機会

採用計画数に対する内定数、大企業では「1.2倍程度」が最多
ここからは、2026年新卒採用(26卒採用、以下同じ)の動向について見てみる。
2026年4月入社の大卒(大学院含む)採用計画数については、いずれの企業規模でも「前年並み」が最多で、大企業では69%で7割、中堅企業では52%で半数程度、中小企業では34%で3割程度となっている。「増やす」と「減らす/採用なし」の割合を比較すると、大企業では8ポイント差で「増やす」が高く19%、中堅企業ではともに19%、中小企業では「採用なし」が30%で顕著に高くなっている(図表3-1)。
【図表3-1】企業規模別 2026年4月入社の大卒(大学院含む)採用計画数

内定を受けた学生から辞退される可能性を考慮して、採用計画数よりどの程度多く内定を出すこととしているかについては、大企業では「1.2倍程度」が最多で39%、次いで「1.0倍」が29%で、これらを合計した「1.2倍以内」が68%と7割近くとなっている。中堅企業では「1.5倍程度」が最多で39%、「1.2倍以内」の割合は50%とちょうど半数となっている。中小企業では「1.0倍」が56%で圧倒的で、「1.2倍以内」は64%となっている。大企業と中堅企業では少なくとも採用計画数より多く内定を出す企業が7割以上で、とはいえ大企業では2割増し程度に抑える企業が多数派で、中堅企業では5割増し以上の企業が半数に上るという違いが見られている(図表3-2)。この結果からも、中堅企業では内定者が大企業に流れてしまうことも想定しながらより多くの内定を出す必要があるなど、苦戦が強いられている状況が推測される。
【図表3-2】内定辞退の考慮による、採用計画数に対する内定数の増加幅

この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】2025年&2026年新卒採用動向調査(12月)
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2024年11月29日~12月6日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:2025年卒採用活動を実施された企業の人事責任者、新卒採用担当者様
有効回答:161件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
・引用元名称(調査レポートURL) と引用項目(図表No)
・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。
- 1