本調査は、2023年度新入社員が就業して1年が経過したタイミングで、どのようなエンゲージメント状態にあるのかを可視化し、今後の新人研修・育成計画・採用活動をより効果的なものにしていただくことを目的として実施した。本調査に参加した企業数は33社で、合計626名の新入社員に回答いただいた。
そこで本レポートでは、本調査の全体傾向についてHR総研で分析・考察した結果を以下に報告する。

本調査の回答者属性

調査に参加した回答者の属性として、所属する企業の従業員規模と業種の内訳について以下に示す。

【回答者の所属する企業の従業員規模 内訳】

HR総研:2023年度新入社員のエンゲージメント合同調査 結果レポート

【回答者の所属する企業の業種 内訳】

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最も高い規定要因は「信頼・互恵」、職場での信頼関係の構築ができている傾向

まず、エンゲージメントレベルに影響を与えうる9つの「規定要因」について、5段階評価の平均値を見てみる。なお、規定要因は、主に従業員体験の項目で構成されている。
本調査に参加した新入社員全員の平均値を見ると、9つの項目全てにおいてレベル3~4の間にあることが分かる。その中で、最も高い値となっているのが「信頼・互恵」で3.80、逆に最も低い値となっているのが「処遇」で3.34である(図表1-1)。入社して1年間で、職場の先輩や上司、同期社員との信頼関係を構築できていると感じている新入社員が多い傾向がうかがえる。
一方、入社1年目では査定のつかない企業も多い背景からか、自身の働きぶりに対して処遇が見合っていると感じていない新入社員も少なくない傾向が見られている。

【図表1-1】「規定要因」項目別スコアの平均値(5段階評価)

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従業員規模別に1,001名以上の大企業、301~1,000名の中堅企業、300名以下の中小企業の3区分に分け、規定要因項目別スコアの平均値を見てみる。平均値の上位3項目は大企業での「評価プロセス」と「信頼・互恵」がともに3.91、次いで「明確性」が3.79となっており、いずれも中堅・中小企業より高い値となっている。「信頼・互恵」については中堅・中小企業でも3.74、3.71と比較的高く、新入社員が職場メンバーとの信頼関係を築くことができていると推測される。「明確性」については任される業務内容や担当範囲などについて分かりやすく認識できているかを示しているが、大企業では中堅・中小企業より明確に分業され、指示も分かりやすく伝わっていることがうかがえる。「評価プロセス」については、上司が自分の仕事ぶりを正しく丁寧に見て評価し、その評価結果について自分に対して納得いく説明をしているかを評価する項目だが、これも大企業の方が中堅・中小企業より顕著に高い値となっている。大企業では特に、新入社員と上司の間の丁寧なコミュニケーションが取られていることで、信頼関係が構築できるとともに業務が明確に伝わり、評価に対しても納得度が高まるという好循環ができているようだ。
一方、平均値の下位3項目については、中堅企業の「フィードバック」が最低で3.19、次いで中小企業と中堅企業の「自律性」がそれぞれ3.20、3.28となっている。「フィードバック」は自分の仕事ぶりの出来栄えを把握できているかについて評価しているが、これが低い値であるということは、自分の日々の仕事の成果について、上司や会社はどのように評価しているのか、何が上手くできていて何を改善するべきなのかなど、今後の仕事のブラッシュアップにつながるポイントが理解できておらず、新入社員が不安な状況にあることが推測される。「自律性」については、仕事を自分の想定したプラン通りに進行できているか、自分の判断で進め方を変更できるなどの裁量権があるかなどを評価するものである。新入社員のうちは裁量権が大きくなくて当然でもあるため、この項目が高くなくても必ずしも大きな問題とはいえないと考えられる(図表1-2)。

【図表1-2】従業員規模別 「規定要因」項目別スコアの平均値(5段階評価)

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業種別に見てみると、最も高い値となっているのが「金融」の「明確性」で4.01と4を超えている。金融の業態の特性上、業務の役割が明確に分かれており、金融商品を扱うサービスであることからミスが許されない厳しさもあり、上司や先輩から業務を指示される際に留意事項などを特に明確にされている傾向があるのだろう。これに次いで、「金融」の「評価プロセス」が4.00、「メーカー」の「信頼・互恵」が3.97となっており、それぞれ最も低い「マスコミ・コンサル」と1以上の顕著な差異が出るほど高くなっている。ものづくりをする「メーカー」においてはチームワークを重視する組織風土が醸成されていることが「信頼・互恵」の評価の高さに繋がっていると推測される。
一方、最も低い値となっているのは「マスコミ・コンサル」の「処遇」「評価プロセス」「会社支援」で2.33となっている。ただし、回答数が3件で非常に少ないことによる偏りも懸念されるため、これらに次いで低い3項目を挙げると、「マスコミ・コンサル」の「信頼・互恵」が2.67、「金融」の「処遇」が3.09、「運輸・不動産・エネルギー」の「フィードバック」が3.18となっている。

【図表1-3】業種別 「規定要因」項目別スコアの平均値(5段階評価)

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全体的に「組織エンゲージメント」が比較的低く、メーカーの「職場エンゲージメント」が顕著に高い

次に、「エンゲージメント」3項目について5段階評価の平均値を確認する。
なお、エンゲージメントには、主に自身の仕事に対する愛着や熱意などを示す「職務エンゲージメント」、実際に仕事で関わる頻度の高い職場環境に対する愛着や貢献意識などを示す「職場エンゲージメント」、会社全体に対する愛着や貢献意識などを示す「組織エンゲージメント」の3項目がある。前述した規定要因の状態が、エンゲージメントの向上にどのように影響しているかを分析で把握し、エンゲージメント向上に効果的なポイントを抽出することができる。
全体の平均値では、「職務エンゲージメント」と「職場エンゲージメント」がともに3.50で、「組織エンゲージメント」は3.27と他2項目より0.23低い状態となっている(図表2-1)。自身が担当している職務や日頃関わりの多い職場メンバーへの愛着は高いものの、会社全体への愛着はあまり強く醸成されていないことがうかがえる。

【図表2-1】「エンゲージメント」項目別スコアの平均値(5段階評価)

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従業員規模別にみると、大企業の「職場エンゲージメント」が最も高く3.59で、一方、中小企業の「組織エンゲージメント」が最低で3.18となっている(図表2-2)。いずれの従業員規模でも「組織エンゲージメント」が他2項目より低い傾向は同じであるが、特に中小企業で低い状況には、入社した会社に対する誇りや企業理念・パーパス対する共感が十分に持たれていないことが背景にあると考えられる。大企業では会社自体や会社に入社できた自分に対する誇りを持ちやすい傾向にあるが、中小企業では会社の事業や理念などを十分に理解できるまでは誇りや共感を持ちづらいことも少なくない。今後、自社の経営理念やパーパスについて社員からの共感が得られるための働きかけを、積極的にしていくことが必要だろう。

【図表2-2】従業員規模別 「エンゲージメント」項目別スコアの平均値(5段階評価)

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業種別に見ると、「メーカー」の「職場エンゲージメント」が最も高く3.63で、規定要因において「メーカー」の「信頼・互恵」が最高となっていたことを踏まえると、職場メンバー間で強固な信頼関係が築かれていることで、職場に対する愛着も強く「職場エンゲージメント」として高く評価されていることが推測される。
一方、「マスコミ・コンサル」の「組織エンゲージメント」が最低で2.75となっている。また、下位3項目は全て「組織エンゲージメント」が入っており、いずれの業種でも課題のある項目であることが分かる(図表2-3)。

【図表2-3】業種別 「エンゲージメント」項目別スコアの平均値(5段階評価)

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】2023年度新入社員のエンゲージメント合同調査        
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2024年2月20日~3月15日
調査方法:参加申込した企業の新入社員が、各企業専用URLから『エンゲージメントコンパス』にアクセスして回答
調査対象:参加申込した企業に2023年4月より新卒入社された新入社員の方
参加社数:33社
有効回答数:626件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
  ・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
  ・引用元名称(調査レポートURL) と引用項目(図表No)
  ・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。

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