若手人材は昨今の採用市場において売り手市場である上、キャリア自律の意識が高まる中、若手社員のリテンションを課題とする企業が多くなっている。若手社員の早期離職を防止するために、人事はどのような対策をして、どのような取り組みに効果が出ているのだろうか。
HR総研では、若手人材の早期離職に関する状況や、離職率低下に向けた人事の取組みなどの実態を把握するアンケートを実施した。その調査結果について、フリーコメントも含めて以下に報告する。

大企業と中堅企業の4割で「若手人材の離職率が高い」と認識

まず、自社の若手人材の離職についてどのように認識しているかを確認したところ、「高い」は9%、「やや高い」が26%で、これらを合計した「高い/やや高い」(以下同じ)は35%と4割近くに上っている。一方、「低い」は14%、「やや低い」が13%で、これらを合計した「低い/やや低い」(以下同じ)は27%と3割近くとなっている。「高い/やや高い」と「低い/やや低い」の割合の差異は8ポイントで、若手人材の離職率が高いと感じる企業の方が多い状況となっている(図表1-1)。
企業規模別に見ると、「高い/やや高い」の割合は、従業員数1,001名以上の大企業では39%、301~1,000名の中堅企業では44%と4割前後に上っており、300名以下の中小企業では27%と3割未満となっている。「低い/やや低い」の割合も、大企業と中堅企業ではいずれも17~18%と2割未満なのに対して、中小企業では39%と2倍以上となっている(図表1-2)。したがって、大企業や中堅企業の方が中小企業より「若手人材の離職率が高い」と認識している企業が比較的多い傾向がうかがえる。

【図表1-1】若手人材の離職率に対する認識

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

【図表1-2】企業規模別 若手人材の離職率に対する認識

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

若手人材の離職率に対する課題感、中堅企業で8割

若手人材の離職率に対する課題感については、企業規模別に見ると、「課題感がある」と「やや課題感がある」を合計した「課題感がある派」(以下同じ)の割合が大企業では63%、中堅企業では81%にも上っており、「課題感がある派」が顕著な多数派となっている。一方、中小企業では「課題感がある派」は46%と半数を下回っており、大・中堅企業よりは割合が低い。大企業や中堅企業は毎年新卒採用を行っており、採用数自体も中小企業より多いため、早期離職者の課題も浮き彫りになりやすいという実情もあるだろう(図表2-1)。
課題感がある企業において、課題の内容を見てみると、「次世代リーダー育成の停滞」が最多で71%、次いで「採用・教育コストの損失」が64%、「既存社員の負担の増加」が61%などとなっている(図表2-2)。
「次世代リーダーの育成」については、人事戦略全体の最重要課題として挙げられることが多い中、その候補者として期待される若手人材の離職は、企業の将来にも関わる深刻な課題として受け止める企業も少なくないだろう。

【図表2-1】企業規模別 若手人材の離職率に対する課題感

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

【図表2-2】若手人材の離職率に対する課題感の内容

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

若手人材の離職の要因に「待遇」が最多、上司や同僚等との人間関係も

若手人材の離職の要因となっている要素として多く挙がっているものを見ると、「待遇(給与・福利厚生)」が最多で41%、次いで「上司との人間関係」が31%、「業務内容のミスマッチ」が29%などとなっている(図表3)。
待遇については会社の体力による部分が大きいため改善に限界があるが、職場の人間関係や職務のミスマッチなど職場環境に関する要素は、優先順位を付けながら改善を図ることが比較的可能といえる。まずは、若手人材が何を求めて何に不満を抱えているのかを可視化して適切に把握することで、離職防止に向けた優先課題をあぶり出す必要があるだろう。

【図表3】若手人材の離職の要因となっている要素

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

効果が出ている若手人材の離職防止策で「社内コミュニケーションの活性化」が最多で7割

離職の要因として上司や同僚との人間関係が上位に挙がる中、若手人材の離職防止策として最も多く挙がるのは「社内コミュニケーションの活性化」で46%と半数近くに上っている。これに次いで、「待遇改善」が34%、「職場環境の向上」が32%などとなっている。この他、育成制度や評価制度の強化・見直しや、上司と部下の対話機会にもなる「1on1の実施」などが上位に挙がっている(図表4-1)。

【図表4-1】若手人材の離職防止を意識して実施している取組み

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

実施している取組みとして上位10項目に挙がる項目のうち、効果が出ている取組みの割合を見てみると、実施率でもトップである「社内コミュニケーションの活性化」が最多で68%となり、実施した企業のうち7割近くが効果を感じていることが分かる。次いで「待遇改善」が62%、「1on1の実施」が57%などとなっており、上位5項目までは6割近くが効果を感じている(図表4-2)。
働き方の多様化によりテレワークで働く人も少なくない中、社内コミュニケーションの活性化や1on1などを意識的に実施することで、職場での人間関係の改善に繋がり、業務で生じるふとした疑問についても質問しやすくなり、個人の生産性向上にも繋がりやすくなるだろう。さらに、自身の業務レベルにまだ自信を持ちづらい若手人材にとって、仕事が上手くできるようになり自信が付くことで、職場での居心地が良くなり、離職リスクの抑制に繋がることも期待できるだろう。

【図表4-2】効果が出ている取組み(実施している取組み上位10項目中)

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

オンボーディングができている企業では「入社後ミスマッチ防止策」にも特徴あり

ここで、若手人材の早期離職に少なからず影響がある「新入社員のオンボーディング施策」と内定段階での「入社後ミスマッチ防止施策」の動向を見てみる。
まず、オンボーディング施策と入社後ミスマッチ防止施策の状況については、いずれも「どちらとも言えない」という良くも悪くもない状態の企業が多く半数程度を占める中、「上手く機能している」はそれぞれ5%、6%で、いずれもわずか1割未満にとどまっており、「やや上手く機能している」は24%と21%で2割程度となっている。これらを合計した「機能している派」は、それぞれ29%と27%で3割近くに上っている。「あまり機能していない」と「まったく機能してない」を合計した「機能していない派」の割合は、それぞれ24%、23%で、「機能している派」の割合の方がやや高い傾向にある(図表5-1)。

【図表5-1】オンボーディング施策と入社後ミスマッチ防止施策の状況

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

次に、オンボーディング施策が機能しているか否かの状況別に、オンボーディング施策としての取組み実施率を見てみる。
すべての取組みにおいて「オンボーディング施策が機能している」企業群の方が高い実施率となっており、上位に挙がる取組みの中でも実施率の差が顕著なのが、「入社後の定期的なフォロー研修」とオンボーディングしやすくするための「採用段階における入社後ミスマッチ防止施策」で、それぞれ22ポイント、21ポイントの差異が生じている(図表5-2)。機能状態の如何に関わらず「入社直後の導入研修」は多くの企業が実施するが、オンボーディング施策が機能していない企業群では「定期的なフォロー研修」が手薄になっており、新入社員が活躍しづらい環境となっている恐れがある。フォロー研修では業務スキルや知識を向上させるだけでなく、新入社員同士が交流し親交を深める貴重な機会としても有効であり、若手人材の離職防止策として効果が感じられている「社内コミュニケーションの活性化」の一環としての機能も期待できるだろう。

【図表5-2】オンボーディングの機能状況別 オンボーディング施策の取組み

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

オンボーディングしやすくするための「採用段階における入社後ミスマッチ防止施策」については、「オンボーディング施策が機能している」企業群で最も多く取り組まれているのが「内定者への定期的なアフターフォロー」で49%、次いで「入社前の現場社員との交流の設定」が48%などとなっている。これらを「オンボーディング施策が機能していない」企業群の実施率と比較するとそれぞれ17ポイント、22ポイントもの差異が生じており、入社前の取組みからオンボーディングが上手くいくかどうかに影響していることがうかがえる(図表5-3)。入社前の段階から、内定者の入社に対する不安要素を取り除けるよう丁寧にコミュニケーションを取り、会社と内定者の信頼関係を構築するとともに、入社後に先輩となる現場社員との交流機会を持つことで、内定者は入社後に職場で働くイメージを持ちやすくなることが期待できるだろう。そうすることで、内定辞退の防止とともに「こんなはずではなかった」という入社前後のイメージギャップを少なくし、会社に定着しやすい人材の獲得に繋げることができると推測される。

【図表5-3】オンボーディングの機能状況別 入社後ミスマッチ防止施策の取組み

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

「成長実感できる取組み」が最多で3割、早期離職の低減に効果的なポイントは?

新入社員の育成で重要とされる「成長実感」「貢献実感」「成長予測」の3項目に関する取組みの状況を確認してみた。
ここで、「成長予測」とは、若手人材本人より数年先輩の社員が活躍している姿が見られたり、数年先までに獲得することが期待されている能力・スキルが示されたりしているなど、数年後に若手人材本人がどのように成長できているかを予測できるような状態にあることを意味している。
これら3項目の中で最も取り組まれているのが「成長実感できる取組み」で、「取り組んでいる」が6%、「やや取り組んでいる」が26%で、これらを合計した「取り組んでいる派」の割合は32%と3割以上となっている。「貢献実感できる取組み」の「取り組んでいる派」の割合は29%、「成長予測できる取組み」の「取り組んでいる派」の割合は22%となっており、「成長予測できる取組み」が最も遅れていることがうかがえる(図表6-1)。

【図表6-1】新入社員の育成における3項目の取組み状況

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

入社後、会社の中でどのようにキャリアアップしていくことになるのかを示すキャリアパスやキャリアマップを活用して、若手人材のキャリア形成支援を行っている企業の割合を見てみると、「活用している」は3%、「やや活用している」は15%で、これらを合計した「活用している派」は18%で2割未満にとどまっている(図表6-2)。

【図表6-2】キャリアパス(キャリアマップ)の活用状況

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

「成長実感」「貢献実感」「成長予測」の3項目と「キャリアパスの活用」に、「1on1のルール設定」を加えた5項目が、若手人材の離職に対する課題感を低くすることに対してどのように影響しているかについて、重回帰分析で確認してみた。すると、5項目のうち「貢献実感の取組みがある」と「キャリアパスを活用している」の2つが、統計的にも有意な形で「若手人材の離職に対する課題感を低くすること」に対して良い影響を与えていることが確認できた(図表6-3)。
この結果を若手人材の育成で活用するなら、1on1などを活用して、若手人材が自分の業務が社会や社内に対してどのような形で貢献できているのか認識できるよう、日常的に丁寧に説明してあげるとともに、会社でどのようなキャリアパスが描かれていて、キャリアアップしていくことによりどのような活躍の場が広がっていくのかを分かりやすく見せるなど、今の会社で働き続けることに対して若手人材が不安を抱かず希望を持てるようにしてあげることで、若手人材の離職に対する課題低減に繋がることが期待される。

【図表6-3】若手人材の離職への課題感低減に効果がある育成の取組み

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

離職リスクの早期把握手法は「評価時の面談」「エンゲージメントサーベイ」「1on1」など

若手人材の離職への課題感低減に効果が期待される「貢献実感の取組み」と「キャリアパス活用」を行っている企業について、若手人材の離職リスクの早期把握手法に特徴があるのかを確認してみた。
まず、「貢献実感の取組み」の有無別に離職リスクの早期把握手法を見てみると、取組みの有無に関わらず「評価時の面談」が最多でそれぞれ57%、51%と過半数に上っている。「取り組んでいる派」では、次いで「エンゲージメントサーベイの実施」が51%で半数に上る一方、「取り組んでいない派」では31%と20ポイントもの差異がある。また、「評価面談以外の定期的な面談(1on1等)」も49%と29%で20ポイントもの差異が生じている(図表7-1)。
貢献実感の取組みをしている企業では、評価面談だけでなく、エンゲージメントサーベイによる数値での社員の状態把握や、1on1の機会も活用しながら離職リスクの早期把握に努めることでも、若手人材の離職に対する課題感の抑制に繋げているのだろう。

【図表7-1】「貢献実感の取組み」の有無別 離職リスクの早期把握手法

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

「キャリアパス活用」の有無別でも離職リスクの早期把握手法の状況を見てみると、貢献実感の取組みをしている企業と同様に、「活用している派」では「エンゲージメントサーベイの実施」(56%)と「評価面談以外の定期的な面談(1on1等)」(51%)が上位に並んでいる。やはり、長期的な視点でエンゲージメントサーベイを定期的に実施し、若手社員を含めた多くの社員が、今の職場でどのようなことに不安や不満を抱えており、それがエンゲージメントの高さにもどのように影響しているのかを把握し続けることで、小さな変化を事前に把握することが可能になるのだろう。

【図表7-2】「キャリアパス活用」の有無別 離職リスクの早期把握手法

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

課題の多くが「効果の分かりづらさ」、効果検証に活用しやすい指標とは?

「若手人材の離職防止への取組み」に関する課題についても見てみる。
最も多いのは「離職防止策の効果が分かりづらい」で35%、次いで「人的リソースが不足している」が33%、「若手社員のニーズが分からない」が27%などとなっている(図表8-1)。離職防止策を講じるものの、その効果検証がしづらい状況であることがうかがえる。
それでは、効果検証にはどのような指標を活用している企業が多いのだろうか。
最も多いのは「離職率」で40%、次いで「エンゲージメントサーベイ結果」が26%、「社員ヒアリング」が23%などとなっている(図表8-2)。
「離職率」は数値で明確に表されるため指標として活用しやすいように思えるものの、離職という結果として後から現れるものであるため、施策実施からのタイムラグが生じてしまい、効果検証指標としてやや使いづらい側面もあるだろう。これに対して、「エンゲージメントサーベイ結果」は定期的に行っていれば、施策実施前後で社員の意識の変化を拾いやすい側面があり、また、数値として経時変化も追えるため、効果検証や離職リスクの早期把握に活用しやすい指標となることが期待される。

【図表8-1】「若手人材の離職防止への取組み」に関する課題

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

【図表8-2】若手人材の離職防止策の効果検証として活用している指標

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

活用している効果検証指標別に「離職防止効果が分りづらい」とする企業の割合を見てみると、「社員ヒアリング」では最多で54%、次いで「平均勤続年数」で50%、「パルスサーベイ結果」で47%などとなっている。「社員ヒアリング」は社員に直接聞ける良さがあるものの、定性的であるため指標としての機能は果たされづらいだろう。一方、この中で最も低い割合であるのが「エンゲージメントサーベイ結果」の37%となっている。この結果からも、離職防止効果の検証指標として、「エンゲージメントサーベイ結果」は効果的に機能していることがうかがえる(図表8-3)。

【図表8-3】活用している効果検証指標別 「離職防止効果が分りづらい」とする企業の割合

HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告

若手人材の「成長実感」「貢献実感」「成長予測」の取組みに関する自由意見

若手人材の「成長実感」「貢献実感」「成長予測」の取組み内容について、フリーコメントで得られたものの中から主な意見を抜粋して、以下に紹介する(図表9-1,9-2,9-3)。

【図表9-1】若手人材の「成長実感」に関する取組みの内容(一部抜粋)

若手人材の「成長実感」に関する取組みの内容従業員規模業種
1年目、3年目に成果発表会を実施し自他共にどのような状況であるか把握させている部門がある1,001名以上メーカー
人事面談による定期的なヒアリングで若手の成長実感を確認している1,001名以上メーカー
目標に対し、現時点でどういう風に感じているかを会話する1on1を推奨している1,001名以上メーカー
顧客、工場、他部署などの訪問とコミュニケーションを図る機会を設けている1,001名以上メーカー
後輩などと一緒に作業させる機会を設けたり、上司から成長に関するフィードバックをしてもらったりしている1,001名以上情報・通信
研修などは積極的に受けられるように、学習することでの成長は促しているが、具体的結果が出ておらずもどかしい301~1,000名商社・流通
昇進試験があること、ならびに早い段階で副店長や店長も目指せるので、成長実感を得ることができるとは思う301~1,000名サービス
技術系人材について、1年後から数年後の目標を作り、それに向けて教育を実施し、現場で実践し、成長の実感をさせる301~1,000名メーカー
ルール化はしていないが、頻繁に目配りしてコミュニケーションを取ることにより、現在・未来・不満等々、雑談と共に対話をしている300名以下メーカー
チャレンジ制度を導入している300名以下メーカー
今後、自主参加型の研修プログラムの充実を図る300名以下サービス

【図表9-2】若手人材の「貢献実感」に関する取組みの内容(一部抜粋)

若手人材の「貢献実感」に関する取組みの内容従業員規模業種
チーム全体の数字として掲示するようなKPIを設けている1,001名以上情報・通信
エンゲージサーベイを実施してはいるがまだその結果を活かせてはいない1,001名以上情報・通信
人事面談による定期的なヒアリングで若手の貢献実感を確認している1,001名以上メーカー
フォロー研修、育成計画書1,001名以上メーカー
経営理念に基づく経営は時間をかけて浸透させている301~1,000名メーカー
確実に会社にも社会にも貢献できていて、それを上司からも伝える努力をしているし、制度としても表彰やちょっとした感謝賞的なことも行っている。しかし、それを本人が「貢献できてよかった」と感じ取れる余裕はなさそうだ301~1,000名商社・流通
キャリア研修の実施301~1,000名商社・流通
本人が認識している貢献度を周囲がどうみているか評価している300名以下サービス
若手に限らず、中堅・管理職含めて同じEngagement サーベイを実施し、仕事・会社への満足度を調査している300名以下メーカー
現場職のみだが、貢献度により表彰がある300名以下メーカー
ルール化はしていないが、頻繁に目配りしてコミュニケーションを取ることにより、現在・未来・不満等々、雑談と共に対話をしている300名以下メーカー

【図表9-3】若手人材の「成長予測」に関する取組みの内容(一部抜粋)

若手人材の「成長予測」に関する取組みの内容従業員規模業種
10年間のモデルロールを作成し、その上を歩かせている1,001名以上メーカー
中長期目標の作成と振り返り1,001名以上メーカー
研修を定期的に実施し、今後取り組んでもらいたい内容を提示している1,001名以上情報・通信
予測精度は人によりまちまちだが、1on1で会話している1,001名以上メーカー
技術系人材について、1年後から数年後のあるべき目標を作っている301~1,000名メーカー
キャリアパスの導入301~1,000名商社・流通
難易度の高い業務を渡すことをゴールとして計画を立てている300名以下メーカー
上司や先輩社員との定期的な面談300名以下メーカー
等級ごとの職能要件書が公開されており、求められる能力や資質を誰でも確認できる300名以下メーカー
焦らず見守ること300名以下サービス

【HR総研 客員研究員からの分析コメント】

【HR総研 客員研究員からの分析コメント】

  • 曽和 利光氏

    株式会社人材研究所 代表取締役社長/HR総研 客員研究員 曽和 利光氏

    待遇要望の最低限を満たさず動機付けしても「やりがい搾取」になる可能性
    2023年10月に厚生労働省から発表された最新の「新規学卒就職者の離職状況」によると、就職後3年以内の離職率は新規大卒就職者で32.3%と前年度比では0.8ポイント上昇している。ただ、この30年間において、35%を超える年も5年ほどあり、特に直近で大きく増加しているわけではない。

    それなのに、4割前後の大企業・中堅企業が「若手人材の離職率が高い」と感じ、6割の大企業、8割の中堅企業が「課題感がある派」であるのはなぜか。課題感の中身については、「次世代リーダー育成の停滞」が7割超でトップであることから考えると、離職者の率はそれほど変わらずとも、将来を嘱望している優秀な人材が離職しているのかもしれない。

    離職理由は本調査では「4割」の企業が待遇(給与・福利厚生)としているが、これを裏付ける調査もある。マイナビ「大学生意識調査」の最新版を見ると「企業選択のポイント」は「安定している」がダントツのトップで48.8%、そして2位「自分のやりたい仕事(職種)ができる」(30.5%)に続き、3位「給料の良い会社」(21.4%)が追い上げている。「安定」や「給与」は20年前には低位だったが、近年右肩上がりに増えている。

    ところが、対策としては、「待遇改善」は34%の企業しかしておらず、「社内コミュニケーションの活性化」(46%が実施)、「職場環境の向上」(32%)、「1on1の実施」(28%)など、待遇以外の手法でなんとかつなぎとめようとしているという、企業側の苦しい事情が透けて見える。有名なハーズバーグの2要因理論で言えば、「衛生要因」(ないと不満)である待遇が満たされていないのに、「動機付け要因」(あると意欲)、すなわち「やりがい」でなんとかしようということか。

    しかし、基本的な待遇面での不足を感じているのに、仕事の意欲だけを高めても離職率は減らないのではないか。まずは若手人材が求める最低限の待遇を整えた上で、動機付けをするのでなければ、結局は「やりがい搾取」と揶揄されるように、「やりがいを利用して自分は損をさせられている」となり、離職は止まらないのではないだろうか。そのために経営者は生産性を高めて高待遇ができる状況を作ることこそが肝要なのではないだろうか。


【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「若手人材の離職防止」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2023年10月25~11月1日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:222件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
  ・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
  ・引用元名称(調査レポートURL) と引用項目(図表No)
  ・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。

  • 1