HR総研では、ウェルビーイングや健康経営の実態を把握するアンケートを実施した。その調査結果レポートを2回に分け、今回は「ウェルビーイング編」についてフリーコメントも含めて以下に報告する。
「ウェルビーイング」の認知度は9割、前年より微増傾向
まず、「ウェルビーイング」の認知度について前回(2022年)調査の結果と比較して見てみる。
「以前から意味も知っている」の割合は、今回調査では59%で前回調査の56%より3ポイント増加と微増傾向が見られる。「以前から言葉だけは知っている」の割合は前回調査時から31%で変化がない(図表1)。「意味も知っている/言葉だけは知っている」の割合を認知度とすると、今回調査における認知度は90%で極めて高く、既に大多数の企業で認知されていることが分かる。
【図表1】「ウェルビーイング」の認知度(前回調査との比較)
ウェルビーイング推進の取組み実施率は微増傾向で6割近く
ウェルビーイング推進の取組み実施率については、「実施している」の割合が今回調査では25%で、前回調査の21%より4ポイント増加と認知度と同様に微増傾向となっている。また、「実施に向けて準備中/検討中」(32%)と合わせると、「前向きに対応中」の企業の割合は58%と6割近くにも上っている(図表2-1)。
これを企業規模別に見ると、「前向きに対応中」の割合については、従業員数1,001名以上の大企業では71%と7割にも上り、301~1,000名の中堅企業では58%と6割近く、300名以下の中小企業では48%と半数近くで、企業規模が大きいほど実施率が高い傾向が顕著に見られる(図表2-2)。
【図表2-1】ウェルビーイング推進の取組み実施率(前回調査との比較)
【図表2-2】企業規模別 ウェルビーイング推進の取組み実施率
従業員エンゲージメントが高い企業でウェルビーイング推進率8割近く
これからウェルビーイングを推進していく企業も少なくない中、企業の経営方針としてウェルビーイング推進を重視している企業はどの程度あるのだろうか。
まず、ウェルビーイング推進の重視度について全体傾向を見てみると、「重視している」は18%、「やや重視している」は22%で、これらを合計した「重視している派」は40%となっている。一方、「重視していない」(14%)と「あまり重視していない」(17%)を合計した「重視していない派」は32%で、「重視している派」の企業群の方がやや多い傾向であることがうかがえる(図表3-1)。
【図表3-1】ウェルビーイング推進の重視度
ここで、回答企業の従業員エンゲージメントの高さの状況を確認したところ、「どちらとも言えない」が最も多く47%で、「高い状態」(6%)と「やや高い状態」(27%)を合計した「高い・やや高い状態」(以下同じ)の割合は33%となっている。一方、「低い・やや低い状態」(「低い状態」と「やや低い状態」の合計)は20%となっており、「高い・やや高い状態」の企業群の方が13ポイント高い状態となっている(図表3-2)。
【図表3-2】従業員エンゲージメントの高さの状況
このような従業員エンゲージメントの高さ別に、ウェルビーイング推進の重視度を比較してみると、「高い・やや高い状態」の企業群では「重視している派」は76%と8割近くに上り、「重視していない派」(11%)より圧倒的に多くなっている。一方、「低い・やや低い状態」と「どちらとも言えない」の企業群を合わせた「高くない状態」(以下同じ)の企業群では、「重視している派」は49%とほぼ半数で、従業員エンゲージメントの高い企業の方が顕著にウェルビーイング推進を重視している傾向であることが分かる(図表3-3)。
【図表3-3】従業員エンゲージメントの高さ別 ウェルビーイング推進の重視度
効果には「モチベーション向上」が最多、「幸福度向上」目的の有無による違いも
従業員エンゲージメントが高い企業ほどウェルビーイング推進を重視している傾向が見られる中、企業はどのような目的でウェルビーイングを推進し、また、どのような効果が得られているのだろうか。
ウェルビーイング推進の目的については、「社員のモチベーションの向上」が最多で65%、次いで「社員の幸福感の向上」が64%、「社員のエンゲージメントの向上」が63%などと、上位3項目を6割以上の企業が挙げている(図表4-1)。
ウェルビーイングの特徴ともいえる「幸福感の向上」を目的として意識する企業が多いことが、しばしば比較される「健康経営」との大きな違いだろう。
【図表4-1】ウェルビーイング推進の目的
得られている効果については、「社員のエンゲージメント向上」と「社員のモチベーション向上」がともに最多で48%と半数近く、次いで「社員の幸福感の向上」も43%と4割を超えている。目的として挙がる上位3項目と得られている効果の上位3項目が一致しており、概ね目的に合った効果が得られていることがうかがえる。また、4位以下に「企業価値の向上」や「企業全体の生産性の向上」が挙がっており、社員個人の幸福感やエンゲージメントの向上の先に、企業全体に効果が広がっていくことがうかがえる(図表4-2)。
【図表4-2】ウェルビーイング推進により得られている効果
ウェルビーイング推進における特徴ともいえる「幸福感の向上」を目標に据える企業とそうでない企業で、得られている効果の傾向を比較すると、「幸福度向上の目的あり」の企業群では「社員のモチベーションの向上」が最多で59%、次いで「社員の幸福感の向上」が56%と6割近くに上る。上位2項目について、「幸福度向上の目的なし」の企業群ではそれぞれ24%、12%と2割程度以下にとどまり、幸福度向上を目的にする企業群の方が顕著に高い割合で効果を得られていることが分かる(図表4-3)。
社員が仕事に対してモチベーション高く、またエンゲージメント高く臨めることだけでなく、社員の幸福感向上をも追求することは、推進の難易度がより高くなることが想像に難くないが、社員に実施内容だけでなくその方針も伝わることで、社員の仕事へのモチベーション向上に繋がりやすくなるという相乗効果も得られているではないかと推測される。
【図表4-3】「幸福感の向上」の目的有無別 ウェルビーイング推進により得られている効果
従業員エンゲージメントの高さ別に得られている効果を見てみると、従業員エンゲージメントが「高い・やや高い状態」の企業群では「社員のエンゲージメント向上」が最多で70%、次いで「社員のモチベーションの向上」と「企業全体の生産性の向上」がともに50%、「社員の幸福感の向上」が45%などとなっている。これらを「高くない状態」の企業群と比較すると、「社員のモチベーションの向上」は37ポイント差と圧倒的で、ウェルビーイングの推進でエンゲージメントが向上していることが顕著であるとともに、「企業全体の生産性の向上」は35ポイント差、「社員の幸福感の向上」は12ポイント差で高いなど、ほとんどの項目で顕著に高い割合で効果が得られている(図表4-4)。
このような結果から、ウェルビーイング推進により従業員エンゲージメントが高い状態にある企業では、社員のモチベーションや幸福感の向上など個人に関する効果だけでなく、企業全体での生産性向上など組織の業績にも良い影響をもたらすことが期待される。
【図表4-4】従業員エンゲージメントの高さ別 ウェルビーイング推進により得られている効果
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【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】「ウェルビーイングと健康経営」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2023年10月2~10日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・ウェルビーイングまたは健康経営担当者・人事担当者様
有効回答:229件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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Eメール:souken@hrpro.co.jp
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。
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