外国籍の方のアルバイト雇用編

今回は、外国籍の方をアルバイトで雇用する際の留意点についてご紹介します。外国籍の方をアルバイト雇用する理由の一つとして、社員雇用などで勤務させたくても就労VISAが取得できないことが挙げられます。原因は業務内容によるものがほとんどで、これまでにも何度かご案内しましたが、いわゆる単純労働に従事する目的で就労VISAを取得することができません。

 今回は、外国籍の方をアルバイトで雇用する際の留意点についてご紹介します。
 外国籍の方をアルバイト雇用する理由の一つとして、社員雇用などで勤務させたくても就労VISAが取得できないことが挙げられます。原因は業務内容によるものがほとんどで、これまでにも何度かご案内しましたが、いわゆる単純労働に従事する目的で就労VISAを取得することができません。
 工場の製造ライン作業員、建設現場の作業員、飲食店のホールスタッフ、清掃スタッフなどは単純労働とみなされる可能性が高く、これらの業務についてフルタイムで外国籍の方を雇用したいと考えても、就労VISAを取得することができません。
 単純労働に従事可能な就労VISAの新設については、本コラムを執筆している2016年11月段階でまだ具体的な法改正はなされておらず、現状では以下のいずれかの方法での雇用を検討することになります。

1. 居住系VISAを保有している外国籍の方の雇用

【業務内容についての留意点】
 前回まででもご紹介のとおり、永住者VISA、永住者の配偶者等VISA、日本人の配偶者等VISA、定住者VISAといった居住系VISAを保有している場合、合法的な限りどのような業務に従事することもできます。業務内容について基本的に注意点はありません。

【労働条件についての留意点】
 給与や労働時間等についても日本人と異なる制限はありません。
 労働基準法や最低賃金法等の範囲内で自由に決定することができます。

【注意点】
 こちらも前回もご案内しましたが、日本人の配偶者等VISAや永住者の配偶者等VISAをお持ちの方を雇用する場合、離婚や婚姻関係の破たんにより、VISAが取消対象となっていないか注意が必要です。
 形式上VISAの有効期限内でも離婚をした場合、長期間の別居など実質的に婚姻関係が破たんしているような場合、VISAが取り消される可能性があります。
 プライベートなことですが、可能な限りVISA更新等のタイミングでご本人にご家族状況の変更等がないか確認頂いた方が宜しいかと考えます。

2. 留学VISAや家族滞在VISAを保有している外国籍の方の雇用

 アルバイト雇用の中では、このケースが最も多いかと思います。
 留学VISAや家族滞在VISAを保有している方がアルバイトに従事するためには、事前に入国管理局に資格外活動許可申請を行い、許可を受ける必要があります。
 許可を受けると、在留カードの裏面最下部の「資格外活動許可欄」に許可を表すスタンプが押されます。
 留学VISAや家族滞在VISAをお持ちの方をアルバイトとして雇用する際は、許可スタンプがあるか在留カードを確認する必要があります。
 なお、日本の大学等を卒業して就職活動を行っている方には、就職活動VISA(特定活動VISA)が与えられ、就職活動VISAでも留学VISAと同様に資格外活動許可を取得してアルバイトに従事することができます。

【業務内容についての留意点】
 風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)に規定されている業務を行うことは出来ません。
 具体的には、性風俗サービスを提供する業務、クラブ等での接客業務(ホステス)などが挙げられます。

【労働条件についての留意点】
 資格外活動許可での就労は、1週間につき28時間以内に限られています。
 1週間につき28時間以上勤務してしまうと、不法就労(法律違反)となるため注意が必要です。
 なお、給与に関しては日本人と異なる制限はなく、労働基準法や最低賃金法等の範囲内で自由に決定することができます。

【注意点】
 資格外活動許可とは、在留資格(VISA)で認められている以外の活動を合わせて行うための許可です。そのため、資格外活動を行うためには在留資格(VISA)が維持されていることが前提となります。留学VISA保有者は、日本の学校に在学していることにより留学VISAが維持されます。また、主婦(夫)の家族滞在VISA保有者は、日本に居住する夫(妻)の扶養を受けている状態にあることで家族滞在VISAが維持されます。
 例えば留学生が学校を退学した場合、留学VISAの期限が残っていても、原則として退学から3ヶ月が経過すると留学VISAは取消対象となります。日本における在留資格(VISA)に基づく本来の活動である留学が終了した以上資格外活動も行えなくなります。
 家族滞在VISA保有者が離婚をした場合や実質的に婚姻関係が破たんした場合も同様です。
 また、扶養者(就労VISAを持って世帯の収入を支えている方)が日本での勤務を終え帰国する場合、家族滞在VISAの方だけがそのままVISAを維持して日本に残ることはできません。
 実務上ご相談を頂くのは、留学VISAや家族滞在VISAの更新許可申請(在留期間更新許可申請)の際の資格外活動許可の更新手続き漏れです。
 留学VISAや家族滞在VISAに対する更新許可申請の都度資格外活動許可申請も行わないと、更新後の留学VISA・家族滞在VISAには資格外活動許可がついていない状態となります。資格外活動許可なしでアルバイトをしてしまうと法的には不法就労となります。
 本人はVISAと一緒に資格外活動許可も自動的に更新されたと思い込んでいるケースも案外多いので、VISA更新をしたタイミングで念のため在留カードの裏面を確認頂くことをおすすめします。


 以上、業務内容の面から就労VISA取得が困難なケースで、アルバイト雇用する際の留意点をご紹介しました。
 一方、就労VISAを取得することが可能である場合であっても、諸事情からアルバイト雇用を検討する場合もあります。具体的には、就労VISAを保有していて他社で業務に従事している方をアルバイトで雇用するケースです。
 日本でも働き方の多様化が進みつつあり、副業を認める企業が増えてきました。外国籍の方も、勤務先からの許可があれば副業をすることが可能です。
 ただし、外国籍の方が副業を行う場合、VISAに関する注意点があります。具体的には、お持ちの就労VISAで副業を行うことが可能な場合と資格外活動許可を取得しなければならない場合とに分かれます。

保有している就労VISAで副業が可能なケース

 前回までにもご紹介のとおり、就労VISAのうち保有者が最も多いのは、技術・人文知識・国際業務VISAです。技術・人文知識・国際業務VISAは従事できる業務内容が幅広く、技術・人文知識・国際業務VISAをお持ちの方が副業を行う場合、ほとんどのケースでそのまま副業を開始することができます。例えば、日本企業で総合職として勤務している方が、アルバイトで他社の翻訳業務を行うといったようなケースです。

資格外活動許可の取得が必要となるケース

 技術・人文知識・国際業務VISA以外の就労VISAを保有している場合、資格外活動許可の取得が必要となるケースが多いです。また、技術・人文知識・国際業務VISAを保有している場合でも資格外活動許可の取得が必要となるケースもあります。
 例えば、以下のようなケースです。

【例1:教授VISA・教育VISA】
 教授VISAは大学等で教授・研究業務を行うことが認められている就労VISAです。また、教育VISAは高等学校・中学校など大学や大学院等以外の教育機関で教育を行うことが認められている就労VISAです。
 そのため、それぞれに認められた教育機関での業務以外に従事する場合、資格外活動許可の取得が必要となります。例えば教育VISAをお持ちの方が街の英会話塾で日本人に英会話を教えるアルバイトをする場合には資格外活動許可が必要です。
 逆に、日本企業で研究業務に従事していたり、経営コンサルタント等専門分野のエキスパートとして企業実務に従事している技術・人文知識・国際業務VISAをお持ちの方が、報酬を受け取って大学で講義を担当したり大学での研究活動に参加するような場合にも資格外活動許可を取得する必要があります。
 技術・人文知識・国際業務VISAは企業等での勤務が可能な就労VISAであり、大学等での教授・研究活動を行うことが認められていないためです。

【例2:企業内転勤VISA】
 企業内転勤VISAで従事可能な業務内容については、前回まででお伝えしたとおり、技術・人文知識・国際業務VISAとほぼ同様です。
 技術・人文知識・国際業務VISAとの大きな違いとしては、日本における勤務先が出向元海外法人と親子会社・関係会社など一定の人的資本的な関係を有することが要件とされている点です。
 そのため、企業内転勤VISAの方が出向元と人的資本的な関係性のない他の企業等でアルバイトを行う場合、資格外活動許可の取得が必要となります。

【例3:研究VISA】
 研究VISAは大学等以外の研究所などで研究業務に従事することが可能な就労VISAです。研究VISA保有者が大学等での研究業務を兼務する場合にも資格外活動許可が必要となります。
 逆に、大学等での研究業務に従事することが可能な就労VISAである教授VISAを保有している方が企業での研究業務を兼務する場合、資格外活動許可が必要となります。
 例1でご紹介のとおり、VISAにより就労先が限定されているためです。
 これまで幣所がご相談を頂きました事例をもとに、主だったものをご紹介しました。
 こちらに記載のないケースで判断に迷った場合、入国管理局か私達のようなVISA業務の専門家に念のためご相談頂くことをおすすめします。

 最後に、就労VISAをお持ちの方が副業に従事するため資格外活動許可を取得する場合の手続きについてご紹介します。
 手続き自体は、留学VISAや家族滞在VISAをお持ちの方が資格外活動許可申請を行う際と同様で、資格外活動許可申請書を作成し、入国管理局に申請を行います。
 留学VISAや家族滞在VISAの場合との違いは、副業の内容について説明した文書(契約書など)と本業の勤務先からの副業許可書などの書類の添付が必要となる点です。
 同じ資格外活動許可といっても、留学VISAや家族滞在VISA保有者が取得する資格外活動許可は「包括許可」となり、どこで副業するかが決まっていなくとも許可を得ることができます。週28時間以内の就労で風営法に規定されていない業務であれば、アルバイト勤務先などの情報を事前に入国管理局に届け出る必要はないということです。
 また、例えば月曜日はA社で飲食店スタッフのアルバイト、水曜日はB社で英語の家庭教師、土曜日はC社でイベント設営のアルバイトを行う場合でも、資格外活動許可は一つで対応できます。

 一方、就労VISA保有者の方が副業に従事するため資格外活動許可を取得する場合、個別許可となるため、副業ごとに資格外活動許可を取得する必要があります。
 本業の他にD社とE社で副業をするといった場合、合計2つの資格外活動許可を取得しなければなりません。

 幣所でも就労VISA保有者の方をアルバイトで雇用したいとお考えの法人様から資格外活動許可の申請必要性の有無及び申請必要書類についてご相談頂くことが時折あります。
 申請必要書類について、申請書以外は自由様式となっており、法務省ウェブサイト上にもサンプルフォームが掲載されていません。
 幣所では申請必要書類のドラフト提供も行っておりますので、就労VISA保有者の資格外活動許可申請でお困りの際は是非お気軽にお問合せ頂ければと存じます。

 さて、全6回で掲載させて頂きました【グローバル雇用…意外と知らないVISAのツボ】も今回で最終回となります。
 外国籍のエクスパット、採用内定者等の雇用・受入をご検討の法人様側のアドバイザーとして外国人雇用相談・就労VISA申請サービスを提供しております弊所の実務経験を踏まえて、エクスパットの方の受入、外国籍の方の新卒・中途採用・アルバイト雇用という頻出の場面におけるVISA申請上の注意点についてご紹介させて頂きました。

 日々実務を通じて感じていますが、VISA申請は雇用する外国籍の方の学歴・経歴、業務内容、労働条件、雇用・受入する側の法人の財務状況等により1件ごとに書類記載内容や準備すべき書類が異なります。
 スムーズに就労VISA等を取得するためには、申請前の準備が肝要です。
 全6回の連載の記載内容に限らず、ご不明な点等ございましたら、お気軽にお問合せ下さい。
 雇用・受入法人の皆様の事業拡大の一助となれれば誠に光栄です。

 幣所連載をお読み下さり誠に有難うございました。