第3回では、目指すべき4つの代表的モデルのうち、④ビルトインモデルについて事例を紹介しよう。ビルトインという言葉から連想される通り、ビルトインモデルとは取引先の中にガッチリ喰い込むことである。
第3回では、目指すべき4つの代表的モデル
①定期回収モデル
②一位連合モデル
③盤石財務モデル
④ビルトインモデル
のうち、④ビルトインモデルについて事例を紹介しよう。
ビルトインという言葉から連想される通り、ビルトインモデルとは取引先の中にガッチリ喰い込むことである。最初は小さな取引から始まって、徐々に仕事の領域を拡げ、最後には我社が無くなっては相手先が困る、仕事が止ってしまう、という状態まで入り込むことができれば経営は安定する。
岡山県にあるT社は、包装資材を販売しており大手の数社を始め190社近くと取引をしている。しかしながら商材に大きな差別化や特徴あるデザイン、意匠でもない限り、価格競争に陥ってしまうのはどの業界も同じで、T社も例外ではなかった。営業で回るうちに得意先の出荷部門で人手不足が慢性化し困っていることを聞きつけ、試行錯誤の結果、資材と人材派遣を一括で請け負う戦略に切り替えた。その結果、取引のパイプは太く深くなり、ライバルの資材売り込みは、当然なくなっていった。
物流会社で3PLパートナーになっている各社も同じ発想であり、取引先の物流部門、倉庫を買い取り、得意先のROA向上を実現させながら、ビジネスパートナーになっている企業さえある。
設計開発の分野で喰い込む、病院事務などの専門職スタッフの派遣、技能職人による定期修繕、保守が必要なコンピュータシステムなどみな同じだ。問題は、「ウチがなくなったら相手先が本当に困る」ところまで、取引先の事業の根幹に近いところまでシステムの中に組み込まれているかどうかである。社長がそこまで意識してビジネスをしているか、である。
ビルトインモデルで経営戦略を考えるには相手先の知識・ノウハウを遥かに凌駕するスキルを持ち続けないと、こちらが陳腐化してしまうし、同業ライバルの恰好の餌食になってしまう。
一つの狙い目は、相手先の担当者が、やりたくないこと、面倒な仕事を受けることだ。こちらにとってチャンスは広く、深くくさびを打ち込める機会も多く出てくる。次々に提案し、相手先の利益、不利益の防止の両面から、目で見て判るプレゼン、数字の検証を示すことができれば仕事量を増やすことができる。
ただし、大企業の担当者は新しい仕事、業務変更に対しては、極めて保守的であり失敗の責任を取りたくないので「総論賛成、各論やらない」ことがおきる。
そこで「アナログ経営」という、極めて人間臭い前近代的な手法が活きてくる。
中堅・中小企業の最大の特徴は良くも悪くも人が少ない。だから中小なのである。大手との最大の差は、人事の異動がほぼ無いことだ。一方で大手企業の担当窓口は3~5年で変わっていく。20年のつきあいをしていると、若かった係長主任、課長が出世して、ついには本社の役員・社長となる人が出てくるのだ。
大手の現場が動くには、いい仕事をしたいという極めてまっとうな動機があり、なおかつ組織の意思、上層部の価値判断という社内ルールが動いているのも事実である。そこを見極め、営業的に仕掛け動かすのは、10年、20年かけて積み上げてきた専務や社長との人脈、人間関係がものをいう。
ただ勘違いしてはいけないのは、人脈だけでは今日の大手組織は動かない。彼らに今、必要なものは「エビデンス」である。新たな行動、仕事の発注を裏付けるための証拠・根拠・数値データをデジタル的に集計し経営判断の材料を提供していかなければならない。
この両方が揃って初めて経営の安定が勝ち取れる。
デジタルは極めて有効だが、優劣が比較しやすいだけに、スイッチングコストの障害が低くなればすぐにでもブランドチェンジが起きてしまう。急成長、急ブレーキの経営になりがちである。
たとえば携帯電話業界でも3社競合の中で、新機種が出るたびに、比較優位を求めて若い人達はD社、A社、S社と切り替えていく。市場が大きく伸びている状況ならまだいいが、市場縮小、横ばいの中ではゼロサムゲームになるので、企業経営としてはリスクがでてくる。
そこに太い人間関係という要素が加われば、いきなりブランドスイッチとはならず、要望なり不平不満なりクレーム等の形でイエローカードが出てくる。
これが安定経営には重要な要素となり、日本を代表するような巨大企業でも、しっかりと強い経営を維持している会社は、極めて泥臭い人間関係重視の経営を長きにわたって推進している。
この領域は、社長の経営理念、哲学の領域であるために外からは見えづらい。IT企業などの急成長企業でも長くトップを走っている会社は、実はアナログ経営を志向している会社が多い。
ビジネスモデルとアナログが経営の両輪となって、車は真直ぐに走るのである。
①定期回収モデル
②一位連合モデル
③盤石財務モデル
④ビルトインモデル
のうち、④ビルトインモデルについて事例を紹介しよう。
ビルトインという言葉から連想される通り、ビルトインモデルとは取引先の中にガッチリ喰い込むことである。最初は小さな取引から始まって、徐々に仕事の領域を拡げ、最後には我社が無くなっては相手先が困る、仕事が止ってしまう、という状態まで入り込むことができれば経営は安定する。
岡山県にあるT社は、包装資材を販売しており大手の数社を始め190社近くと取引をしている。しかしながら商材に大きな差別化や特徴あるデザイン、意匠でもない限り、価格競争に陥ってしまうのはどの業界も同じで、T社も例外ではなかった。営業で回るうちに得意先の出荷部門で人手不足が慢性化し困っていることを聞きつけ、試行錯誤の結果、資材と人材派遣を一括で請け負う戦略に切り替えた。その結果、取引のパイプは太く深くなり、ライバルの資材売り込みは、当然なくなっていった。
物流会社で3PLパートナーになっている各社も同じ発想であり、取引先の物流部門、倉庫を買い取り、得意先のROA向上を実現させながら、ビジネスパートナーになっている企業さえある。
設計開発の分野で喰い込む、病院事務などの専門職スタッフの派遣、技能職人による定期修繕、保守が必要なコンピュータシステムなどみな同じだ。問題は、「ウチがなくなったら相手先が本当に困る」ところまで、取引先の事業の根幹に近いところまでシステムの中に組み込まれているかどうかである。社長がそこまで意識してビジネスをしているか、である。
ビルトインモデルで経営戦略を考えるには相手先の知識・ノウハウを遥かに凌駕するスキルを持ち続けないと、こちらが陳腐化してしまうし、同業ライバルの恰好の餌食になってしまう。
一つの狙い目は、相手先の担当者が、やりたくないこと、面倒な仕事を受けることだ。こちらにとってチャンスは広く、深くくさびを打ち込める機会も多く出てくる。次々に提案し、相手先の利益、不利益の防止の両面から、目で見て判るプレゼン、数字の検証を示すことができれば仕事量を増やすことができる。
ただし、大企業の担当者は新しい仕事、業務変更に対しては、極めて保守的であり失敗の責任を取りたくないので「総論賛成、各論やらない」ことがおきる。
そこで「アナログ経営」という、極めて人間臭い前近代的な手法が活きてくる。
中堅・中小企業の最大の特徴は良くも悪くも人が少ない。だから中小なのである。大手との最大の差は、人事の異動がほぼ無いことだ。一方で大手企業の担当窓口は3~5年で変わっていく。20年のつきあいをしていると、若かった係長主任、課長が出世して、ついには本社の役員・社長となる人が出てくるのだ。
大手の現場が動くには、いい仕事をしたいという極めてまっとうな動機があり、なおかつ組織の意思、上層部の価値判断という社内ルールが動いているのも事実である。そこを見極め、営業的に仕掛け動かすのは、10年、20年かけて積み上げてきた専務や社長との人脈、人間関係がものをいう。
ただ勘違いしてはいけないのは、人脈だけでは今日の大手組織は動かない。彼らに今、必要なものは「エビデンス」である。新たな行動、仕事の発注を裏付けるための証拠・根拠・数値データをデジタル的に集計し経営判断の材料を提供していかなければならない。
この両方が揃って初めて経営の安定が勝ち取れる。
デジタルは極めて有効だが、優劣が比較しやすいだけに、スイッチングコストの障害が低くなればすぐにでもブランドチェンジが起きてしまう。急成長、急ブレーキの経営になりがちである。
たとえば携帯電話業界でも3社競合の中で、新機種が出るたびに、比較優位を求めて若い人達はD社、A社、S社と切り替えていく。市場が大きく伸びている状況ならまだいいが、市場縮小、横ばいの中ではゼロサムゲームになるので、企業経営としてはリスクがでてくる。
そこに太い人間関係という要素が加われば、いきなりブランドスイッチとはならず、要望なり不平不満なりクレーム等の形でイエローカードが出てくる。
これが安定経営には重要な要素となり、日本を代表するような巨大企業でも、しっかりと強い経営を維持している会社は、極めて泥臭い人間関係重視の経営を長きにわたって推進している。
この領域は、社長の経営理念、哲学の領域であるために外からは見えづらい。IT企業などの急成長企業でも長くトップを走っている会社は、実はアナログ経営を志向している会社が多い。
ビジネスモデルとアナログが経営の両輪となって、車は真直ぐに走るのである。