「ルール」なら守れば良いだけなのだからむしろ簡単。コーポレートガバナンス・コード対応の難しさは、それが「ルール」ではなく「プリンシプル」だという点にある。しかも、初年度の今年は参考にできる「ひな形」などもない。上場企業は遅くとも年末までにコーポレートガバナンス報告書の提出を求められているが、どのように対応すればいいのだろうか。
ルールではなくプリンシプルであるという意味
コーポレートガバナンス・コード対応の一つの「難しさ」ともいえるのは、このコードが「ルール」、つまり、細かく定められた規則ではなく、「プリンシプル」、言ってみれば、大づかみな原則だということ。コードで定められた各原則をどう適用するかは、それぞれの企業が自社の置かれた状況に応じて工夫するべきものだとされている。企業ごとに業種も規模も事業特性なども違い、望ましいガバナンスのあり方は一つではないからだ。
企業に任されている部分が大きいわけだが、これには、「だからこそ手間がかかる」面があることも事実。たとえば、この原則について自社ではこういう理由があるから実施しないというとき、この程度の説明をすればいいという基準があるわけではないから、「これなら株主や投資家に十分理解してもらえるだろう」と思われる説明を自分たちで練り上げなければならない。
特に今年は初年度だけに、コーポレートガバナンス報告書を提出した企業はまだどこにもない。参考にできる「ひな型」もない。コーポレートガバナンス・コード対応のサポートを行っている支援サービス会社もあるが、基本的には「自分たちのガバナンスは自分たちで考える」という覚悟を持つことが、まず最初に必要なステップだといえるかもしれない。
トップが先頭に立ち、自社のガバナンスのあり方を考える
実効が上がるコーポレートガバナンス・コード対応のカギになるのは、当たり前のようだが、一つひとつの原則について自分たちで考え、議論し、自分たちの言葉で説明することに地道に取り組むという姿勢だ。「同業他社と同じようにやればいいんじゃないの?」といった日本企業にありがちな横並びの対応は通用しないし、そういう発想で取り組むと、結局、「ガバナンスの体制は整っていたが、形だけで中身が伴っていなかった」という結果を招きやすいのではないだろうか。
また、もちろん、経営トップの姿勢はとても大事だ。新しい制度が始まったからしかたなく対応するというのではなく、これを機会に自社のガバナンスを見直し、稼ぐ力を強める「攻めのガバナンス」に転換していこうとトップが方針を打ち出し、自ら積極的にかかわっていく。そういう企業は、コーポレートガバナンス・コード対応をきっかけとして、自社の成長戦略の強化や再構築につなげていける可能性が高いだろう。