東芝の不正会計問題では、「コーポレートガバナンス・コード」への対応が焦点になっている。「コーポレートガバナンス・コード」は、どのような目的で制定されたのか、それがどのように経営に役立つものなのかを紐解いてみる。
見方を変えれば、自社の「稼ぐ力」を強める絶好の機会になる
東京証券取引所が6月1日から適用をスタートした「コーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)」は、持続的な収益力向上に向け、企業の自律的な取り組みを促す新たな制度。政府が「『日本再興戦略』改定2014」で、日本の「稼ぐ力」を取り戻すための施策の一つとして推進してきたものだ。そのコンセプトは、成長戦略の一環としての「攻めのガバナンス」。基本原則は「株主の権利・平等性の確保」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主との対話」という5つ。その下に30の原則と、さらに詳細説明として38の補充原則がある。
特に企業経営に影響が大きいと思われるのは、「取締役会等の責務」に関する部分。少なくとも2名以上の独立した社外取締役を選任することが原則となっている。
上場企業は遅くとも年内にコーポレートガバナンス報告書を提出しなければならない。求められている対応は「コンプライ・オア・エクスプレイン」。30の原則と38の補充原則の一つひとつについて、実施するか、実施しない場合は、なぜ実施しないかを説明する必要がある。
経営者にしてみれば、「本音を言えば面倒な作業だ」と感じてしまっても無理はないかもしれない。しかし、見方を変えれば、コーポレートガバナンスのあり方を見直すことは、不祥事を防ぐためだけではなく、自社の稼ぐ力を向上させる絶好の機会にもなるはずだ。