新卒の売り手市場へのシフト、選考時期の規制廃止、人材不足等、採用をめぐり、様々な問題に対し解決策が模索される中、旧来型の採用手法に留まらない、新たな手法やテクノロジーが注目されています。そこで最新の採用手法を導入する意義について株式会社人材研究所 代表取締役社長の曽和利光氏に伺い、最新手法の一つである動画面接について株式会社ブルーエージェンシー 執行役員の熊本康孝よりご紹介させていただきました。

講師

  • 曽和 利光氏

    曽和 利光氏

    株式会社人材研究所 代表取締役社長

    京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート、ライフネット生命、オープンハウスの人事採用責任者を経て現在、企業の採用や人事に関するコンサルティングに従事。主に自社の採用ブランドに頼らない採用を行うためのサポートを行っている。 著書に「ネットワーク採用とは何か」(労務行政)等



  • 熊本 康孝氏

    熊本 康孝氏

    株式会社ブルーエージェンシー 執行役員

    大学卒業後、株式会社リクルートに入社。 主にホットペッパーグルメの法人企画・営業に7年間従事する。 その後、経験を生かし2015年5月から現職。 現在では事業責任者としてインタビューメーカーの普及に努める。 クライアントの人事・採用の課題解決の提案、 またWEB・スマホ面接の新たな価値を世の中に創出している。



  • 寺澤 康介

    寺澤 康介

    ProFuture株式会社 代表取締役社長 / HR総研所長

    1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。約6 万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。 約25年間、大企業から中堅中小企業まで幅広く採用、人事関連のコンサルティングを行う。週刊東洋経済、労政時報、企業と人材、NHK、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、アエラ、文春などに執筆、出演、取材記事掲載多数。企業、大学等での講演を年間数十回行っている。


最先端の採用手法の実態とは。その効果的な利用法を考える ~進化する多様な採用手法。自社に適したものをどう選べばよいか~
寺澤 HR総研では毎年、新卒採用のさまざまな調査を行っており、HRテクノロジーを活用した新しい採用手法の実施状況を把握しています。実際、選考時期の規制が緩和されている中で、多様な採用手法が生まれています。2021年には採用時期の規制を廃止するかもしれないという話が経団連から出ています。これは今年の秋から冬にかけて方向性が見えてくるものと思います。おそらくどういう結論になっても、時期の規制が相当緩むか、自由競争になっていくだろうと思います。これまでのような就職ナビに頼ったやり方や旧来型の面接をそのまま行うのでは、勝つことはできないでしょう。一方で新しい採用手法に関しては、企業側でもリテラシーが追いついていない側面があり、使い方を間違えると逆効果になりかねません。

 今日は新しい採用手法のトレンドについて、人材研究所の曽和さんに効果的な使い方を伺います。また、ブルーエージェンシーでは動画面接を提供しており、非常な勢いで広まっています。動画面接はブラックボックスになっている面接を科学的に分析できるということも含め、非常に注目されています。そこで動画面接の使い方や必要なリテラシーについて、話を伺っていきます。では曽和さんからまずお願いします。
最先端の採用手法の実態とは。その効果的な利用法を考える ~進化する多様な採用手法。自社に適したものをどう選べばよいか~

まだまだ浸透していない動画面接などの新たな採用手法

株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光氏

 リクルート就職みらい研究所のデータから、現在使われている採用手法の状況を見てみると、内定者や転職者からの紹介による「リファラル採用」を取り入れている企業は1割未満です。ただ調査項目ではリクルーターという項目が別にあり、これが2割くらいあったので、合算すると3割くらいになりますが、まだまだ導入している企業は限定的です。

 次の「スカウトメディア」は、新卒ではOfferBox、中途ではビズリーチといった逆求人採用です。応募者側が自分のPR情報を各サイトに示し、それを企業側が検索して、スカウトメールを打ちます。しかもOfferBoxではメールを1通ずつしか打てないという規則があり、企業が応募者にエントリーするような形です。かなり使われているように思っていましたが、リクルートのデータでは1割未満です。

 「動画説明会」は最近の特筆すべき例でサイバーエージェント社の「サイブラリー」のようなオンラインでの会社説明会です。リアルな説明会をするよりも、エントリー数や地方出身者へのリーチ等、採用に関するあらゆる数字が高まったという成果が出ています。しかしネット時代にも関わらず、動画説明会を行っている企業は1割未満です。にわかに信じがたいのですが、確かに他の企業ではあまり聞きません。「リモート面接」はSkypeなどを使って、遠隔地とリアルタイムで面接するものです。これが約4%です。そして1%未満と一番少ないのが「動画面接」です。これは録画面接と言ってもいいと思いますが、質問も返答も録画で行います。率にすると0.7%で、まだ全然使われていません。

 この結果を見ると、まだあまり使われていないのは、効果が実証されていないからだと思う方もおられるでしょうし、今ここで導入すれば、採用の差別化となり競争優位性に結びつくと考える方もおられるでしょう。よく言われるのが、昔、アフリカに行った商社マンが、現地の人たちが靴を履いていないのを見て、靴のマーケットがないと思う人と、これからのマーケットがあると思う人の2通りの考え方があるという例えですが、それと似ているようにも思います。
最先端の採用手法の実態とは。その効果的な利用法を考える ~進化する多様な採用手法。自社に適したものをどう選べばよいか~

目的は「志望度の低い人」を呼び込むこと

これらの新しい手法はすべて一つの問題を解決するためにあると私は考えています。それは「志望度の低い人も呼び込む」ことです。
 実は学生の就職活動量は徐々に減っています。同じくリクルート就職みらい研究所のデータですが、学生一人当たりのリアルな説明会の参加社数は約11社、ES(エントリーシート)の提出社数も約12社、適性検査を受ける社数は約8社、リアルな面接を受けるのも約7社です。売り手市場の昨今、数年前に比べると、かなり減っているのがこれらの数字からわかります。
 このように考えると、リファラル採用やスカウトメディアは企業からのアプローチですし、動画説明会や動画面接、リモート面接は、時間や空間を超えた採用活動ができます。これらすべて、学生や応募者のハードルを下げることができ、志望度の低い人も呼び込むことが可能です。
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